トンガは、1900年以来の英国との保護領関係を解消し、1970年6月4日、国王トゥポウ四世を元首とする立憲君主国家として歩み出した。国王の下に、内閣、議会、司法と三権分立は確保されているが、首相を含む閣僚任命権は国王が有しており、国王が大きな権力を行使している。近年は、民主化の動きが見られ、2003年10月には首都ヌクアロファにて言論の自由を制限する憲法改正に反対して数千人規模の市民デモが発生した。
外交面では、地理的に近接している他の太平洋島嶼国、オーストラリア、ニュージーランドの他、旧宗主国である英国との結びつきが強く良好な関係を有している。1998年11月にそれまで国交を有してきた台湾と国交を断絶し中国と国交を樹立した。1999年に国連加盟を果たして以降、国連専門機関等へオブザーバーを派遣する等、多国間外交を展開している。
我が国との関係はきわめて良好であり、その背景として種々の経済協力や青年招聘、国費留学生の招聘等の文化交流に加え、両国が共に王室又は皇室を有することによる親近感が挙げられる。特に技術協力分野では、1973年以来、青年海外協力隊を多岐にわたる分野に派遣しているが、このことは両国の草の根レベルでの交流の促進にも資するものとなっている。
経済面では、伝統的な食糧作物生産及びカボチャ、バナナ、ココナツ等の輸出作物生産に依存しており、他の島嶼国と同様、恒常的な貿易赤字が続いている。最近では、水産資源として海藻(もずく)、農産品ではスイカ等が新たな輸出産品として検討されている。トンガは、世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)加盟交渉の最終局面を迎えており、WTO加盟後の国内経済安定化のため構造改革が喫緊の課題となっている。開発については、先進国、国際機関からの援助に大きく依存しているため、公共事業民営化などをはじめとして、民間企業の育成が急務である。一方、最近では、外貨獲得手段の一つとして、観光業振興及びそのための新航空路開設、飛行場整備等のインフラ開発・整備に力を入れている。
(1) トンガに対するODAの意義
我が国は、トンガに対する主要援助国の一つであり、同国の経済・社会基盤整備に大きく貢献してきた。このことは両国皇室・王室の友好的な関係と相まって、トンガは南太平洋の中の最も親日的な国の一つとなっている。
(2) トンガに対するODAの基本方針
2003年5月の第3回太平洋・島サミットで採択された「沖縄イニシアティブ:より豊かで安全な太平洋のための地域開発戦略及び共同行動計画」において、我が国は、安全保障、環境、教育、保健、経済成長の5つを太平洋島嶼国地域における重点政策目標として表明した。
(3) 重点分野
第3回太平洋・島サミットの重点政策目標を踏まえ、以下の5点を重点分野としてトンガに対する支援を実施している。
(イ) 人的資源開発
職業訓練、IT教育、教員養成と教員の資質向上訓練などを行っている。
(ロ) 地域の保健向上及び国民の健康増進
生活スタイルの改善、運動の振興、栄養改善のほか感染症(フィラリア)予防体制構築支援などを行っている。
(ハ) 公共サービス合理化改善
公共サービスの改善、社会経済インフラの管理・運営の向上を行っている。
(ニ) 資源の持続的利用と環境保全
限られた資源の持続的利用のほか固形廃棄物処理システムの改善を目指している。
(ホ) 経済成長支援
農産物の多様化と品質向上支援を目指している。
なお、トンガについては、人材流出が顕著(全トンガ国民の3分の1近くが海外に居住)であり、海外居住者からの送金や物資送付に依存する経済構造をもっていることから、国内の社会サービス改善に必要な人材と経済発展に貢献できる人材の育成を目指した協力が必要であり、特に、教育分野の支援には力を入れている。
(1) 総論
2003年度のトンガに対する無償資金協力は0.80億円(交換公文ベース)、技術協力は3.96億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力111.22億円(交換公文ベース)、技術協力75.27億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
2003年度は、14件の草の根・人間の安全保障無償資金協力により、小学校や高校、専門学校を整備し、教育分野での協力を行った。
(3) 技術協力
独立後の1972年に青年海外協力隊派遣取極を締結して青年海外協力隊の派遣を開始したほか、若年層が人口のかなりの部分を占めていることから、研修員受入、専門家・ボランティア派遣などにより、教育・訓練など人材育成分野や近年主要産業となりつつある水産分野を中心に協力を実施している。
我が国は、現地ODAタスクフォースにより、トンガにおける政府・援助国会合等の場を利用して、主要援助国であるオーストラリア、ニュージーランド、EU、中国等と積極的に意見交換を行い、必要な調整や効率的な援助の実施に努めている。