[3]サモア

1.サモアの概要と開発課題

(1) 概要
 サモアは、ニュージーランドを施政国とする国連信託統治領を経て、1962年、太平洋島嶼国の中で初の独立国となった。現在マリエトア・タヌマフィリ二世を元首とする立憲君主国家である。国内政治はここ数年極めて安定的に推移しており、また政治的混乱をもたらすような要因も見あたらないことから、今後も安定した政治情勢が続くものと見られる。2002年2月に「Opportunities for All」をスローガンに発表された国家開発計画は、公共部門の透明性、説明責任の向上、経済の活性化等サモアの改革に対する取組を示すものとなっている。経済面では農業・沿岸漁業等の第一次産業を基幹産業としており、第一次産業は国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)の約4割を占めている。2000年のGDP成長率は、前年に開始されたパイプライン開発による建設業の成長、水産物を中心とする輸出の増加、観光収入等により6.8%と高い伸びを示した。2002年に一旦落ち込んだものの、運輸・通信部門を中心に再び回復基調に入る等、太平洋島嶼国の中でも最も経済が好調に推移している国の一つとなっている。
 外交基本方針は、穏健・現実的な政策を旨として、太平洋における域内協力及び英連邦諸国との友好関係を中心として、平和友好的な対外政策をとっている。最近では2004年1月初旬、超大型サイクロン「ヘタ」により壊滅的な打撃を受けたニウエに代わり、その年の太平洋諸島フォーラム(PIF:Pacific Islands Forum)総会をサモアで開催し、2005年のPIF総会までの一年間、PIF議長国を務めている。また安全保障、経済開発の観点から世界各国との関係強化が不可欠との認識に基づき、国連外交を中心に世界の動きにも敏感に対処している。
(2) 国家開発計画(2002-2004)
 2002年2月に発表された国家開発計画では、経済を活性化させるために、次の9分野を優先分野として掲げている。
(イ) 安定したマクロ経済の枠組み:経常経費の獲得、効率的予算管理、関税管理の改善など
(ロ) 教育水準の向上:教師の質、カリキュラム及び教材、教育施設、教育スポーツ文化省の管理能力など
(ハ) 医療水準の向上:基礎医療及び保健促進サービス、地域サービス、医療施設など
(ニ) 農水産業の振興:農水産業ビジネスの改善・多様化、村/生活レベル農水産業の改善など
(ホ) 民間部門の開発及び雇用創出:就業機会の創造、実施可能な環境整備、投資促進など
(ヘ) 社会構造の強化:マタイ(伝統的首長)制度の役割、女性の役割、若者の社会参加の機会など
(ト) 社会基盤整備:水の供給・分配、電力供給及び配電、IT・輸送・船舶・航空サービス、環境保護など
(チ) 持続可能な観光開発:観光産業の計画・開発・管理、社会基盤の促進、人的資源開発など
(リ) 公共部門の効率性の向上:政府の効率性及び効果、財政管理、透明性及び説明責任など

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.サモアに対するODAの考え方

(1) サモアに対するODAの意義
 サモアは、国連安保理非常任理事国選挙、アジア開発銀行(ADB:Asian Development Bank)総裁選挙、ユネスコ事務局長選挙などの国際場裡において、我が国の立場に対し極めて好意的である。この背景には我が国がサモアに対し積み重ねてきた経済協力が反映されているものと思われる。
(2) サモアに対するODAの基本方針
 サモアの置かれた地理的条件や経済・社会構造を踏まえ、以下の重点分野を中心に無償資金協力と技術協力を連携させつつ効果的に実施していく。
(3) 重点分野
 2002年1月のサモアとの二国間政策協議で、以下の重点分野について合意した。
(イ) 人的資源開発:職業訓練学校、国立大学等高等教育機関の強化、初中等教育の充実
(ロ) 環境保全:廃棄物処理改善に係る政策立案支援及び施設改善支援並びに広域支援、自然環境保全支援
(ハ) 経済インフラ整備:港湾、船舶、空港、電力、通信等各事業の整備
(ニ) 保健医療の向上:地域医療施設、基礎保健サービスの充実、疾病予防の促進
(ホ) 農水産業の振興:食糧生産技術の普及促進、畜産業技術向上支援、海洋資源管理の改善(漁港整備を含む水産業振興)(本分野は就業機会の創造、所得の向上を視野にいれたもの)


3.サモアに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のサモアに対する無償資金協力は4.39億円(交換公文ベース)、技術協力は4.86億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力202.77億円(交換公文ベース)、技術協力86.82億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 2003年度は、2000年より継続している「第二次アピア港拡張計画」を実施し、同国唯一の外国貿易港であるアピア港の拡張・改修を行っている。また、7件の草の根・人間の安全保障無償資金協力を実施し、小中学校の整備を行った。
(3) 技術協力
 研修員受入事業とボランティア派遣を中心に協力を実施している。1971年に青年海外協力隊派遣取極が締結されて以来、同国に対する青年海外協力隊の派遣数は着実に伸びてきており、2003年度までの青年海外協力隊派遣累計実績は370名となっている。環境保全分野では首都アピアにある南太平洋地域環境計画(SPREP:South Pacific Regional Environment Programme)に廃棄物処理の広域専門家派遣、地域特設研修を実施している。また、教育分野ではサモア国立大学への支援を中心に専門家・ボランティア派遣などを実施している。

4.サモアにおける援助協調の現状と我が国の関与

 サモアにおける援助国としては、我が国の他、サモアと密接な関係をもつニュージーランド及びオーストラリアに加え、中国、EUや、国連開発計画(UNDP:United Nations Development Programme)、ADB等国際機関が存在している。2003年5月の第3回太平洋・島サミットの際に発表された「太平洋地域における開発援助についてのオーストラリア、日本、ニュージーランド3国間の協力に関する共同宣言」に基づき、今後は意見交換を含め援助協調が必要な分野については、現地ODAタスクフォースを中心に協調を進めていく。

5.留意点

 サモアの伝統・文化を損なうことなく、経済発展と両立しうる協力を念頭に置き、当国の社会的文化的特徴(マタイによる各村の統治システムが強く機能している)を十分認識する必要がある。またサモアを含め太平洋地域は小島嶼国の集合体であり、その民族的文化的類似性、更に地域に共通する課題を抱えていることに留意した広域的アプローチは有効である。しかし同時に、各国の歴史的統治形態、社会構造、経済発展の差異は明確であるため、開発課題に対する発展段階の共通性を見定め、その効果を十分検討した上で実施する必要がある。また、資金協力と技術協力の緊密な連携、人材流出についての中長期的視点からの人的資源開発、地域・国際機関ネットワークの有効活用が肝要である。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対サモア経済協力実績

表-6 諸外国の対サモア経済協力実績

表-7 国際機関の対サモア経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図


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