[31]ホンジュラス

1.ホンジュラスの概要と開発課題

 ホンジュラスは、1982年の民政移管以後、6回にわたり大統領を民主的選挙で選出している。その間、軍の民主化プロセスを完遂した。1998年のハリケーン・ミッチ災害以後、我が国を含む国際社会の支援を得つつ復興と経済構造の改革に尽力した。2002年1月に発足した国民党のマドゥーロ政権は、治安、地方分権、教育、保健衛生、経済発展(特に農業生産の回復)、政治改革、国際社会との関係強化等を重視し、積極的に改革に取り組んできている。
 外交面においては、外交関係の多角化に取り組んでおり、2002年1月にはキューバと国交を回復し、エルサルバドルとの国境問題も2003年12月に一応の決着をみた。2003年3月のイラク攻撃の際はいち早く米の政策を支持、その後のイラク復興支援においても約370名からなる部隊を派遣した。また2004年より国連人権委員会のメンバー国(2006年まで)で、北朝鮮人権決議を支持している。
 経済状況については、1998年のハリケーン災害からの復興が着実に進捗し回復の兆しが見えているが、従来のコーヒー、バナナ、エビ等農水産業などの伝統産業への依存度はいまだ高く、これから脱却するためにも新規産業の育成を図っている。現在注目されている産業としては、観光業及びマキーラ(保税加工区)における製造業(特に繊維)がある。
 他方、ホンジュラスは、拡大重債務貧困国(HIPC)イニシアティブの適用国として認定されており、2001年10月には、貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)が世界銀行・国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)によって支持された。その後、政府は、様々な財政構造調整を行い、債務削減が実施されることが期待されている。
 我が国とホンジュラスの関係は伝統的に良好である。我が国は、ホンジュラスにおける民主化の進展及び復興への取り組みを高く評価し、1994年以来、ホンジュラスに対する主要ODA供与国として協力してきた1998年のハリケーン災害の際、史上初の自衛隊による国際緊急援助隊がホンジュラスに派遣され、被災地における医療・防疫活動に従事したことは、その他の復興開発支援とともに、ホンジュラス官民から高く評価された。こうした我が国の援助に対する謝意表明として、同国では2度にわたり我が国のODAを図案とする切手が発行されている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.ホンジュラスに対するODAの考え方

(1) ホンジュラスに対するODAの意義
 ホンジュラスは、中米でも最も開発の遅れた国の一つであり、そのために多様な開発ニーズがある。ホンジュラスへの支援は、同国の安定と発展に寄与すると共に、中米地域の安定のと発展に資すると考えられる。
 近年、米・中米自由貿易協定(CAFTA:Central American Free Trade Agreement)署名等により、中米地域の統合が加速している。中米統合は、中米地域のポテンシャルを高めると同時に、地域の安定と発展に寄与するとの観点から、メキシコ南部から中米諸国の開発計画であるプエブラ・パナマ・プラン(PPP:Puebla Panama Plan)の推進等、広域的な支援を実施していくことは重要である。
(2) ホンジュラスに対するODAの基本方針
 ホンジュラスは拡大HIPCイニシアティブの適用国であることから、当分の間、新規円借款の供与は困難であるため、同国への支援は無償資金協力及び技術協力に限られており、両スキームを連携させ、効果的・効率的な支援を実施していく必要がある。
(3) 重点分野
 我が国はハリケーン・ミッチ直後の1999年2月、同国に政策協議調査団を派遣し、インフラ(道路、橋梁等)、保健医療、農業・水産、教育の4分野を援助重点分野にすることを確認した。また、ハリケーン災害から6年近くが経過した現在、同国は復興の段階から改革の段階に移行してきているが、保健医療、教育、貧困削減と経済成長に結びつくインフラ整備の分野は依然として我が国の同国に対するODAの重点分野となっている。現地ODAタスクフォースではセクタープログラムと整合した我が国援助戦略を検討している。
(イ) インフラ(道路、橋梁等)の整備
 地方道路の修復等の支援を実施。
(ロ) 基幹産業振興(農業・水産業)
 比較優位産業の育成、持続的地域開発の観点から支援を実施。
(ハ) 生活基盤整備(保健・衛生)
 保健医療サービスへのアクセスの向上の観点から、母子病棟、救急クリニックへの支援を実施。
(ニ) 人材育成(教育・職業訓練)
 基礎教育の充実、経済自立支援を目指した貧困層の能力開発の観点から、 算数科指導力向上プロジェクトなど、基礎教育に主眼をおいた支援を実施。

3.ホンジュラスに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のホンジュラスに対する無償資金協力は25.57億円(交換公文ベース)、技術協力は12.23億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款は347.74億円、無償資金協力は610.45億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は314.71億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 無償資金協力実績では、おもに地方の貧困削減、医療の分野で支援を実施している。また、ハリケーン災害関連では、緊急援助を実施した。
(3) 技術協力
 技術協力分野では青年海外協力隊員の派遣実績が累積で848名(2004年3月末現在)と中南米諸国で第1位となっている。また、「算数教育指導力向上プロジェクト」等技術協力プロジェクトや、各種の専門家が派遣されており、何れも高い評価を得ている。

4.ホンジュラスに於ける援助協調の現状と我が国の関与

 同国における援助協調は、1999年6月、ストックホルムにおいて中米の復興支援に係る支援国会合が開催され、「ストックホルム宣言」が採択された後、フォローアップ・グループ(G-5)が結成されたことを契機に本格的に開始された。当初5カ国で開始した同グループは、現在では11か国6国際機関よりなるG-17として同国の復興・改革、PRSPの効果的・効率的な実施に向けた政策面及び援助実施面での協調を活発に行ってきている。なお、我が国は2002年4月から12月までの9か月間、同グループの議長国を務め、同国の復興・改革及び援助協調の推進に大きく貢献し、同国政府及び関係各国・機関より高い評価を得た。
 我が国の対ホンジュラス債権については、ホンジュラスがIMFとの合意事項をこのまま順調に履行すれば、2005年3月頃に我が国はホンジュラスとの間で500億円以上に上る対ホンンジュラスODA債権放棄に係る二国間合意交渉を開始する予定となっている。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ホンジュラス経済協力実績

表-6 諸外国の対ホンジュラス経済協力実績

表-7 国際機関の対ホンジュラス経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件



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