[32]メキシコ

1.メキシコの概要と開発課題

 2000年12月、71年振りに政権政党が交代(制度的革命党(PRI:Partido Revolucionario Institucional)から国民行動党(PAN:Partido Accion Nacional)へ)し、フォックス政権が発足した(任期6年)。同政権は、保健、教育、起業融資、住宅建設計画等の充実に力点を置いている。一方、同政権は少数与党政権であることもあり、電力・エネルギー産業改革、労働法改革、財政改革等、経済成長及び投資誘致の基盤を整えることを目指す構造改革は、野党の抵抗、労働組合の反発等のために顕著な進捗がみられていない。
 外交面では1992年に米国、カナダとの間で北米自由貿易協定(NAFTA:North American Free Trade Agreement)に署名、1993年にはアジア太平洋経済協力会議(APEC:Asia Pacific Economic Cooperation)に、1994年には経済協力開発機構(OECD:Organization for Economic Cooperation and Development)に加盟するなど、経済開放に伴う外交関係多角化を推進してきた。フォックス政権は、これまで以上に国際政治の舞台において積極的な役割を果たす姿勢を見せており、国連安保理非常任理事国を務めると共に(任期2002-2003年)、国連開発資金会議(2002年)、APEC諸会合(2002年)、第5回WTO閣僚会合(2003年)等の国際会議の開催国となり、世界第10位の経済規模に見合う役割を国際場裏で担う意欲を見せている。
 経済面では、1982年の債務危機以降、経済自由化政策に一貫して取り組んできており、財政赤字削減に示される規律ある財政政策、インフレ抑制に重点を置いた慎重な金融政策等を中心とした安定的なマクロ経済運営を行ってきている。現政権でもその基本路線は引き継がれており、さらに雇用創出、金融システムの強化、外国直接投資の促進、中小企業育成・振興、産業の国際競争力の強化等を経済政策の目標としている。
 また、1990年代後半から国内の社会格差の存在を念頭に、「人間の顔をした経済政策」として貧困層に対する支援策(現政権下では「OPORTUNIDADES」政策とよばれる)に重点が置かれている。
 我が国にとって初の平等条約となった1888年の日墨修好通商条約の締結以来、日・メキシコ関係は伝統的に友好関係を保ってきている。経済関係を中心に両国の関係は緊密化してきており、2005年4月に発効する日・メキシコ経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)により、更なる二国間経済関係の緊密化が期待される。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.メキシコに対するODAの考え方

(1) メキシコに対するODAの意義
 中南米地域においてはブラジルと並ぶ大国であり、国際場裏においてより積極的な役割を果たす様になっていることから、ODAも活用しつつ、二国間関係を強化することの意義は大きい。経済面では、2005年4月発効する日・メキシコ経済連携協定により、世界でも有数の重要な市場であるメキシコとの経済連携が強化されるのみならず、米州市場への足がかりを築く事が期待される。こうしたポテンシャルを充分活用するためには、例えば、中小企業支援、裾野産業支援など、経済協力と日・メキシコ経済連携協定における二国間協力との連携に留意していく必要がある。
 他方、メキシコは、経済社会の発展の結果、第三国に技術移転の出来るレベルに達している。我が国は、メキシコが実施する南南協力をパートナーとして支援しており、第三国に技術移転を進める新しい形の技術協力を実施するなど、日・メキシコ経済協力関係は、新たな段階に入ってきている。さらに、広域的な観点からは、メキシコ南部の州を始め中米地域に共通している貧困、社会インフラ整備の課題の解決に資する支援を実施していくことで、メキシコを含む中米地域の地域統合へのイニシアティブとそれによる地域の安定と繁栄に資する支援ができるとの意義が指摘できる。
(2) メキシコに対するODA基本方針
 メキシコは、高中所得国と呼ばれるまでに経済成長を遂げている一方で、貧困その他の様々な開発課題を抱えている。そのため、メキシコ政府が開発を進めるために困難を抱えている分野、真に援助を必要としている分野に集中的に支援を行うことが重要である。
 また、我が国とメキシコは、2004年10月に中米等を始めとする途上国に日本・メキシコ共同で技術協力を行う南南協力の枠組みである、日・墨パートナーシップ・プログラムに署名した。今後、この枠組みのもとで新たな協力が進められることが期待されている。
(3) 重点分野
 2003年に現地ODAタスクフォースがメキシコ政府との間で実施した現地ODA政策協議においては、以下の点を重点分野とすることに合意した。 
(イ) 人間の安全保障の向上と貧困削減のための努力(地域・貧富の格差の是正)
 メキシコの人口の50%を超えるとされている貧困層に対し、保健医療や教育の分野について支援を実施する。
(ロ) 産業開発と地域振興に関する協力(産業開発と地域振興)
 日墨EPA協定発効も視野にいれつつも、従来より実施してきた裾野産業支援や中小企業育成・振興のための協力推進を目的に支援を実施する。
(ハ) 地球環境問題及び水の衛生と供給に関する協力(環境対策と自然環境保全)
 大気汚染対策や、水質汚濁対策について、第三国研修や専門家の派遣を実施する。

3.メキシコに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003度のメキシコに対する無償資金協力は0.52億円(交換公文ベース)、技術協力は23.93億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款は2,295,68億円、無償資金協力は54.46億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は608.60億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 保健医療、教育分野を中心に実施。
(3) 技術協力
 保健医療、環境、工業分野に対し実施。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対メキシコ経済協力実績

表-6 諸外国の対メキシコ経済協力実績

表-7 国際機関の対メキシコ経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件

表-11 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



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