[30]ボリビア

1.ボリビアの概要と開発課題

(1) 概要
 ボリビアでは、1982年に民政移管を達成して以降、紆余曲折を経ながらも民主化と市場経済化を推進している。2002年の選挙で当選したサンチェス・デ・ロサダ大統領(当時)は、経済活性化、生産性・競争力の向上を試みたが明確な成果が得られず、2003年には所得税制度の改正問題や天然ガスの輸出港問題(チリを輸出港とすることに国民が反発)に端を発する暴動が発生したため国外退去を余儀なくされ、カルロス・メサ副大統領が繰り上がり大統領に就任した。カルロス・メサ大統領は、貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)改訂に向けた国民対話の実施、天然ガスに関する国民投票の実施、選挙立候補における政党独占排除等に取り組んでいる。
 また、2005年から2006年にかけて実施される予定の憲法改正会議においては、更なる分権化の推進、先住民及び女性の権利規定等を含め、国家機構の根本的変革が行われる可能性が高い。
 経済面では、農業、天然ガスを含む鉱業産品を中心とする一次産品への依存率が総輸出の80%を占めている。1990年代半ばには年率5%近い経済成長率を記録したボリビア経済は、その後の世界経済の停滞を受け1998年末より深刻な不況に突入した。この不況の中で失業率が増大し社会の不満が高まると共に、財政赤字の急速な悪化が政府の経済運営に対する大きな制約要因となっており、国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)との協議の下、2004年度は緊縮財政を実現した。
 前サンチェス・デ・ロサダ政権時代から、輸出産品の多様化、及び各産品の生産・輸出振興の取り組みが政府の経済政策として前面化している。特に、米国のアンデス貿易促進・麻薬根絶法(ATPDEA:the Andean Trade Promotion and Diug Eradication Act.)による優遇関税の下で、繊維、木材、皮革、金装身具の分野の輸出促進及び新規市場開拓が志向されており、重点産品はさらに拡大する方向である。
 ただし、ボリビアの経済の現状では、上記の輸出経済から裨益する国民の数は限られており、生産力強化に基づく輸出振興を通じた大規模な貧困削減の達成は、少なくとも短中期的には困難なシナリオであると言える。かかる状況下で、輸出経済の外にある経済活動を如何に振興し、大多数の国民の生活の安定性を確保するかが重要な課題となっている。
(2) 開発計画
 ボリビアの各政権は国家経済社会開発総合計画(PGDES:Plan General de Desarrollo Economico y Social)の策定を義務づけられているが、2003年10月の暴動後にカルロス・メサ大統領が就任したことから未だにPGDESの策定には至っていない。今後は、国民対話2004の合意やPRSPの改訂を通じてPGDESが策定(2005年1月~2月を予定)される予定である。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.ボリビアに対するODAの考え方

(1) ボリビアに対するODAの意義
 ボリビアは中南米においても最貧国の一つであるが、世界銀行、IMF等の監督の下、成長に向けた構造調整に取り組んでおり、我が国としてもかかる努力を支援していくことが重要である。
 ボリビア経済は農産物や鉱業産品を中心とする一次産品に依存し、外部環境に対して脆弱であるとともに、近年は冨の偏在に伴う貧困問題も深刻化しているところ、ODA大綱の基本方針の一つである「公平性の確保」の下で社会的弱者の状況や貧富の格差等を考慮しつつ、同国における貧困対策や経済改革等の取組をODAにより支援することは、同大綱の重点課題である「貧困削減」や「持続的成長」の観点から意義が大きい。
 なお、ボリビア政府は、ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)の達成に向けて、ボリビア版貧困削減戦略(EBRP:Estrategia Boliviana de Reduccion de la Pobreza)を推進し、多くのドナーも同戦略を支援して援助を集中させているところである。
(2) ボリビアに対するODAの基本方針
 中南米地域における最貧国の一つであるボリビアは、貧困削減が喫緊の課題となっている。ボリビアは拡大重債務貧困国(HIPC)イニシアティブの対象国 であることから当分の間、新規の円借款の供与は困難であり、無償資金協力、技術協力を中心とした支援を実施していく。
 また、援助協調が行われていることを踏まえ、他ドナーと連携・調整を図りつつ支援を行う。
 ボリビアにおいては、多くの日本人移住者・日系人が地域の発展に貢献しており、かかる移住者社会の成果を生かした支援の実施にも配慮する。
(3) 重点分野
 我が国は、2004年7月にボリビア政府と現地ODAタスクフォースとの間で政策協議を実施し、特に次の分野に重点をおいて、支援を行うことで合意した。
 1人間の安全保障の充実(保健・基礎衛生分野、教育分野等)
 2生産向上支援(経済的自立支援、農業・農村開発分野、運輸交通分野等)
 3制度・ガバナンス支援

3.ボリビアに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のボリビアに対する無償資金協力は38.87億円(交換公文ベース)、技術協力は24.03億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款は470.26億円、無償資金協力は737.96億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は539.09億円(JICA経費実績ベース)である
(2) 有償資金協力
 2003年度にボリビアがJBICに対して有する533.39億円の円借款の債権の免除を実施した。
(3) 無償資金協力
 一般無償資金協力として「コチャバンバ母子医療システム強化」他1件、草の根・人間の安全保障無償資金協力として「サン・マルコス教育施設増築計画」他49件、食糧増産援助、文化無償資金協力等を実施した。
(4) 技術協力
 医療、行政、農業分野等の研修員を598名受入れ、35名の専門家、48名の青年海外協力隊員の派遣を新たに行った。
 また、技術協力プロジェクトとして、「サンタクルス県地域保健ネットワーク強化」等を実施し、「ヤニ・ペレチュコ地域資源開発調査」他1件の開発調査を実施した。

4.ボリビアにおける援助協調の現状と我が国の関与

(1) 総論
 2004年4月にボリビアの援助窓口である大蔵省公共投資海外金融次官室(VIPFE:Viceministro de Educacion Inicial, Primaria y Secundaria)及び世界銀行が中心となり、1国民対話及びPRSP改訂作業、2憲法改正会議、3生産性・競争力、4財政支援、5調和化の5つのワーキング・グループが提示され、各国ドナーは、2005年2月にパリで開催予定の支援国会合(CG:Consultative Group)に向けてワーキング・グループに関する活動を開始している。
(2) ワーキング・グループ動向
 2004年4月より、5つのワーキング・グループが主に活動している。
(イ) 国民対話及びPRSP改訂作業(幹事国:英(DFID:Department for International Development)、副幹事国:スウェーデン)
(a) PRSPプロセスの分析、(b) 社会セクターの参加、(c) 情報システム、(d) 不測の事態のための計画の4つのサブグループが形成。
(ロ) 憲法改正会議(幹事国:UNDP、副幹事国:ドイツ)
 国連開発計画(UNDP:United Nations Development Programme)が調整し、米州開発銀行(IDB:Inter-American Development Bank)、カナダ、我が国、スウェーデン、米国国際開発庁(USAID:United States Agency for International Development)等が援助を検討。また、同グループの中に紛争対策のサブグループが作られた。
(ハ) 生産性・競争力(幹事国:IDB)、副幹事国:USAID)
 生産力・競争性に関するマトリックスを作成。中長期的に生産性について今後協議。
(ニ) 財政支援(幹事国:IMF、副幹事国:デンマーク)
 IMFのスタンド・バイ借款の延長期間が2004年末までとなったため当面の財政危機は脱した模様。今後、2005年の財政支援型援助の在り方、財政状態の短期・中期的改善していくかが焦点。
(ホ) 調和化(幹事国:オランダ、副幹事国:世界銀行)
(a) 行動計画、(b) カウンターパート資金、(c) モニタリング・評価システム及び実施、(d) 各セクターの評価、(e)セクター・ワイド・アプローチ、(f)情報システムの6つのサブグループを策定。
(3) 我が国の関与
 我が国としては、ワーキング・グループの場における主要援助機関との協調に積極的に参加すると共に、ボリビア政府のオーナーシップと自助努力を尊重し、同政府の政策意向を十分に踏まえた上で、建設的に意見交換を行い、政府とドナー間の協調関係を築く役割を担いたいと考えている。

5.留意点

 ODA政策の立案及び実施に当たっては、ボリビア側から要請を受ける前から、現地ODAタスクフォースを中心とした政策協議を活発に行うことにより、その開発政策や援助需要を十分把握しつつ、対話を通じて我が国の援助方針をボリビア側に示し、同国の開発戦略の中で我が国の援助が十分に生かされるよう、開発政策と我が国の援助政策の調整を図ることとしている。また同時に、案件の形成・実施の面も含めた政策及び制度の改善のためのボリビア側の努力を支援するとともに、その努力が十分であるかどうかを我が国の支援の決定に当たって考慮していく。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ボリビア経済協力実績

表-6 諸外国の対ボリビア経済協力実績

表-7 国際機関の対ボリビア経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件

表-11 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



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