ベリーズは、長年にわたる英国とグアテマラとの争いの後、1981年に独立を達成した。1998年8月の下院選挙で過半数を占めた人民連合党のサイード・ムサ党首を首班として成立したムサ内閣は、2003年3月の総選挙でも人民連合党が過半数を占めたことから引き続き政権の座にあり、鈍化した経済成長の改善、急増した中米難民への対応等に取り組んでいる。
外交面では、同国が国連総会決議に基づき独立した経緯もあり、国連中心の外交を展開している。英連邦の一員及びカリブ共同体(カリコム)の加盟国として、伝統的に英国及びカリブ諸国とは緊密な関係を有してきたが、2001年には中米統合機構(SICA:Sistema de la Integracion Centroamericana)にも正式加盟し、中米諸国との関係をも重視した外交を展開している。ベリーズの領有権を主張していたグアテマラとは、1991年の外交関係樹立後もしばしば領土問題で対立している。
ベリーズの最大の産業は伝統的に農水産業であり、砂糖、バナナ、柑橘類、エビなどを産し、労働力の3割、全外貨収入の7割を占めているが、世界的な供給過剰・価格低迷により政府は農産物生産の多様化を推進している。最近は、観光業などのサービス業の比重が増加し、製糖や製材等の製造業も発展している。
エスキベル前政権が当初財政再建を最優先課題とし、緊縮財政政策を執ったため財政赤字は大きく減少したが景気はやや停滞気味となったことから、1997年以降は積極財政による成長政策がとられた。ムサ政権においても同拡大政策が継続されている。
(1) ベリーズに対するODAの意義
ベリーズは、我が国とは水産分野において貿易や協力関係を構築しており、また、1993年に開始された日・カリコム協議等を通じて関係が強化されつつあるところ、引き続き安定した協力関係を維持していくことは重要である。
また、同国では農産品に依存する経済基盤の脆弱さを克服すべく多角化が進められているところ、こうした取組をODAにより支援することは、ODA大綱の重点課題の一つである「持続的成長」の観点からも意義は大きい。
(2) ベリーズに対するODAの方針
ベリーズは、国家としての人口・経済規模が小さく、我が国による経済協力の実績は必ずしも大きくはないものの、同国に対しては、基幹産業である農水産業の分野を中心に技術協力及び草の根・人間の安全保障無償資金協力を実施している。
(3) 重点分野
2001年11月8日に東京で開催された、第1回日・カリコム閣僚級会合において、策定された「21世紀における日・カリコム協力のための新たな枠組み」に基づき以下を重点分野とした。
(イ) 良い統治、(ロ) 貧困削減、(ハ) 環境と防災、(ニ) 中小企業開発、(ホ) 観光・水産・農業、(ヘ) 貿易・投資促進、(ト) 通信技術
(1) 総論
2003年度のベリーズに対する無償資金協力は0.09億円(交換公文ベース)、技術協力は0.86億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力は1.82億円(交換公文ベース)、技術協力は4.65億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
草の根・人間の安全保障無償資金協力では、「身体障害者施設改修・増築計画」を実施した。
(3) 技術協力
2003年度は、行政、社会基盤、自然保護、水産等の分野で6名の研修員を受入れている。また、2000年以降は青年協力隊員の派遣を年々拡充し、2003年度は12名の派遣を行った。(2004年8月には現地の調整員事務所の人員を2名に増員)。
ベリーズでは、英国、カナダ、クウェートによる道路建設等のインフラ整備のための借款の供与、台湾、スペインによる小規模な資金協力、欧米非政府組織(NGO:Non Governmental Organization)団体の活動、米州開発銀行(IDB:Inter-American Development Bank)、カリブ開発銀行(CDB:Caribbean Development Bank)等の国際機関による支援など、小国ながら、複数のドナー国による援助が展開されているが、援助協調には結びついていない。