[27]ベネズエラ

1.ベネズエラの概要と開発課題

 ベネズエラでは、1958年以降、民主的な政治体制が継続している。1999年2月に就任したチャベス大統領は、同年12月の新憲法制定等を通じて、大統領権限の強化、国会の一院制への移行、国家主導的な経済運営等のための体制を構築した。2000年7月の大統領選挙で圧勝した同大統領は、2000年11月に成立した経済社会、財政・金融、行政近代化の分野に関する大統領授権法に基づき、翌2001年末に炭化水素法、土地・農村開発法等、国家経済の根幹に関わる49法を制定したところ、経済界を中心に政府への反発が強まり、2002年4月には国軍主導による暫定政権の発足という政変が発生した。チャベス大統領は2日後に復権し、国民各層と対話に取り組むが、同年12月には、石油セクターを始めとするゼネストが全国規模で行われ、国内経済は悪化した。こうした中、2004年8月、国際投票監視団による監視活動の下で大統領罷免国民投票が実施されたが、罷免反対票が賛成票を上回った結果、2007年1月10日までの任期を全うすることが確認された。
 外交面では、ベネズエラは、石油輸出国機構(OPEC:Organization of Petroleum Exporting Countries)の穏健派としてOPEC加盟国間の協調のために努力している。また、中米・カリブ諸国との関係を重視し、サン・ホセ協定及びカラカス・エネルギー協定を通じて、これら諸国に特恵的に石油の供与を行っている。チャベス政権は、米国主導の一極主義を批判し、米国主導の米州自由貿易地域(FTAA:Free Trade Area of the Americas)に反対するとともに、まずは南米統合を推進すべきとの立場をとり、2004年10月にはメルコスールの準加盟国となった。
 経済は石油に大きく依存しており、石油部門が国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)の約4分の1、国家予算の総収入の5割、総輸出の約8割を占めている。天然ガス、石炭及び水力のエネルギー資源並びに金、ダイヤモンド、鉄鉱石、ボーキサイト等の資源も豊富である。また、オリノコ川流域に超重質油が豊富に存在する。
 1980年代後半までは国民総生産(GNP:Gross National Product)が中南米でトップであったが、その後、原油市況の低迷により経済は状況は悪化した。財政赤字、景気後退、高インフレの中で発足したチャベス政権は、対外債務返済履行、OPEC生産枠厳守による国際石油価格の上昇への寄与、貧困削減、雇用創出などを経済政策として挙げたが、景気は本格的には回復せず、2002年12月からの上記ゼネストは、石油セクターの参加により原油生産が激減した。2003年は石油価格が高水準で推移したにもかかわらず、外貨不足と資本逃避抑制等のため、実質GDP成長率が-9.4%、インフレ率が27.1%、失業率が16.8%(下半期実績)と大きな改善は見られていない。
 我が国はベネズエラに対し、主に自動車、機械等を輸出して、アルミ地金(全輸入額の6割以上)、オリマルジョン、鉄鉱石等を輸入している。我が国からの投資は1980年代末に鉄鋼、石油化学、自動車等の分野で大型投資が行われたが、特に2000年以降はベネズエラの政治的混迷の影響もあり停滞している。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.ベネズエラに対するODAの考え方

(1) ベネズエラに対するODAの意義
 ベネズエラは、石油、天然ガス、鉄鉱石等豊富な天然資源を有し、自然環境にも恵まれた潜在力を有する。ベネズエラと我が国との関係は伝統的に良好であり、将来、有力な貿易・投資相手国となることが期待される。他方、1人当たりの国民総所得(GNI:Gross National Income)が高い反面(2002年は約4,080ドル)、石油に依存した産業構造は国際石油価格等に対して脆弱で、また、経済停滞の過程で中間層が没落して低所得層の貧困が深刻化しているなど援助需要は大きい。こうした事情を踏まえ、ODA大綱の基本方針の一つである「公平性の確保」の下で社会的弱者の状況や貧富の格差等を考慮しつつ、同国における貧困対策や経済改革等の取組をODAにより支援することは、同大綱の重点課題である「貧困削減」や「持続的成長」の観点から意義が大きい。
(2) ベネズエラに対するODAの基本方針
 ベネズエラは、石油等天然資源に恵まれており、所得水準が比較的高い国であることから、技術協力及び草の根・人間の安全保障無償資金協力を中心に実施しているが、貧富の差が大きい等、様々な問題も抱えている。
(3) 重点分野
 1996年2月にプロジェクト確認調査団を派遣し、協力の方向性等に関する政策対話を行った。同協議においては、今後、両国が協力してベネズエラの発展に資する優良案件の形成に努めるとともに、特に環境セクター(生活ゴミ等の処理推進等)と社会セクター(防災体制の整備、中小・零細企業振興、貧困削減、地域・社会間格差是正に資する基礎生活分野の充足等)を中心に協力を行っていくことを確認した。その後も現地日本大使館を通じて、同援助重点分野の確認がなされている。

3.ベネズエラに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のベネズエラに対する無償資金協力は0.31億円(交換公文ベース)、技術協力は5.27億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力は8.33億円(交換公文ベース)、技術協力は84.73億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 草の根・人間の安全保障無償資金協力として、「麻薬使用防止教育計画」、「貧困層青少年向け性教育・避妊促進計画」他4件実施した。
(3) 技術協力
 中小企業支援の技術協力プロジェクトを実施している他、行政、保健医療等を中心に49名の研修員を受入れ、7名の専門家、9名の青年海外協力隊員の派遣を行った。また、開発調査として「カラカス首都圏防災基本設計調査」を実施中。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ベネズエラ経済協力実績

表-6 諸外国の対ベネズエラ経済協力実績

表-7 国際機関の対ベネズエラ経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件

表-11 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



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