(1) 概要
2002年10月の総選挙の結果、人民国家運動党(PNM:Peoples' National Movement)が勝利した。これを受けて、マニングPNM党首が首相に再任され、政治情勢は安定化の方向へ向かっている。
外交面では、米国、英国、カナダ、カリブ共同体(カリコム)諸国との協調を重視し、比較的穏健な非同盟路線をとっている。特に、石油輸出国機構(OPEC:Organization of Petroleum Exporting Countries)非加盟の産油国として、経済水準の高さを背景にカリブ単一市場経済(CSME:Caricom Single Market System)を積極的に推進し、域内において指導的地位を占めている。
経済面では、鉱業(石油、天然ガス)及び工業(石油精製、石油化学)を主要産業としている。1993年以降、エネルギー部門の拡大とともに、構造調整政策の効果が現れ始め、成長はプラスに転じ比較的安定している。2002年の国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)成長率は3.0%、翌2003年は5.5%と10年連続のプラス成長を記録した。2004年は我が国との外交関係樹立40周年にあたる。
(1) トリニダード・トバゴに対するODAの意義
トリニダード・トバゴは、政治面でも経済面でも安定しており、カリブ諸国においてリーダー的な存在である。同国はカリブ地域の開発目標である海洋資源開発分野や人材育成等の分野ではODAの支援対象とされているが、その中でも気候に左右されやすい同国水産業に対する支援はODA大綱の重点課題の一つである「持続的成長」を安定的に確保するとの観点から有意義である。また、同国と安定した協力関係を築くことは、カリブ諸国との良好な関係を維持する上で重要。
(2) トリニダード・トバゴに対するODAの基本方針
トリニダード・トバゴに対しては、同国1人当たりのGNIが比較的高い(2002年には6,750ドル)ことを踏まえつつ、技術協力を中心とした援助を実施していくこととしている。
カリブ諸国は、海洋資源分野や人材育成等共通した開発目標を持っており、我が国は、カリブ地域の広域に裨益する協力を実施することとしている。
(3) 重点分野
2000年11月8日に東京で開催された第1回日・カリコム閣僚級会合において、策定された「21世紀における日・カリコム協力のための新たな枠組み」に基づき、以下を重点分野とした。
(イ) 良い統治、(ロ) 貧困と削減、(ハ) 環境と防災、(ニ) 中小企業開発、(ホ) 観光・水産・農業、(ヘ) 貿易・投資促進、(ト) 通信技術
(1) 総論
2003年度のトリニダード・トバゴに対する無償資金協力は0.09億円(交換公文ベース)、技術協力は2.07億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力は1.44億円(交換公文ベース)、技術協力は27.62億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
一般無償の卒業国であるが、草の根・人間の安全保障無償資金協力で「学習設備向上計画」、「マトゥラ女性職業訓練・児童図書施設改善計画」、「貧困層のための職業訓練セミナー」の3件を実施した。
(3) 技術協力
水産分野を中心に研修員の受入れ、専門家の派遣を行って居るほか、技術協力プロジェクト「トリニダード・トバゴ持続的海洋水産資源利用促進計画(2001.9~2006.9)」を実施中。本協力を通じて、同国からカリブ諸国へ研修実施等による裨益効果が広がっている。