(1) 概要
1979年に英国から独立した。1997年の総選挙ではセントルシア労働党(SLP:St. Lucia Labour Party)が大勝し、アンソニー党首が首相に就任した。経済の失速が懸念される中で行われた2001年総選挙では、野党の分裂に乗じた与党が2議席減としつつも圧勝し、第二次アンソニー政権が発足した。外交面では、米国、英国、カリブ諸国との関係を重視している。
経済面では、バナナの輸出を中心とした農業と観光業が主要産業である。観光業は近年の経済多角化政策により急速な成長を遂げているが、他の産業の育成は十分進んでいない。1994年以降、ハリケーン等の自然災害、国際市場変動の影響を受けてバナナの生産量が落ち込み、1980年代後半は平均9%であった成長率は鈍化している。特に2001年の実質国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)成長率は、米国の景気後退に加えて、2001年9月の米国における同時多発テロ事件が、欧米からの観光客に大きく依存している観光業に打撃を与えたこともあり-5.0%に落ち込み、2002年のGDP成長率も1.0%にとどまり、2003年には、2.6%となっている。
我が国は1980年に外交関係を開設した。両国関係は、1993年より開始された日・カリブ協議等を通じ強化されつつある。2004年3月には、国連総会議長であるハント外相が訪日、同年6月にはジャン農相が東京でのシンポジウムに出席するために訪日している。
(1) セントルシアに対するODAの意義
セントルシアの基幹産業は、観光と水産業であり天候に大きく左右されるため、経済基盤が脆弱ある。同国経済の安定のためにODAにより同国の社会経済開発を側面的に支援することは、ODA大綱の重点課題の一つである「持続的成長」の観点からも重要である。
漁業に関しては、昔ながらの漁法を採っているため、非効率的でありかつ全世界的な傾向として資源の枯渇が懸念されている。同国は今後持続的海洋水産資源の利用、観光資源の確保等の観点から環境保全にも関心を有しており、我が国に対して支援を求めている。カリブ地域と我が国は、同じ島国としての立場から漁業分野において共通の利害を有し、国際場裡では、捕鯨問題等連携を取っており、今後も有効な関係を継続する必要がある。
(2) セントルシアに対するODAの基本方針
セントルシアは独立してから日が浅く、また人口16万人程度であるが、技術協力及び水産無償を中心とした協力を実施している。
(3) 重点分野
2001年11月8日に東京で開催された第1回日・カリコム閣僚級会合において、策定された「21世紀における日・カリコム協力のための新たな枠組み」に基づき、以下を重点分野とした。
(イ) 良い統治、(ロ) 貧困と削減、(ハ) 環境と防災、(ニ) 中小企業開発、(ホ) 観光・水産・農業、(ヘ) 貿易・投資促進、(ト) 通信技術
(1) 総論
2003年度のセント・ルシアに対する無償資金協力は0.05億円(交換公文ベース)、技術協力は1.16億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力は57.38億円(交換公文ベース)、技術協力は13.19億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
草の根・人間の安全保障無償資金協力で「マーチャンド地区及び周辺地域の環境美化計画」の協力を実施した。1987年より水産無償資金協力を実施し、漁業開発計画、デナリー漁業基地建設計画、第三次漁業開発計画、漁業開発センター建設計画、ブューフォート水産複合施設整備計画、沿岸漁業振興計画等多数の協力を行った。また、1999年度に草の根・人間の安全保障無償資金協力を導入した。
(3) 技術協力
行政、水産等の分野で5名の研修員を受入れ、1994年に東カリブ地域では初めての青年海外協力隊派遣取極めの締結に基づき、青年海外協力隊員及びシニア海外ボランティアを派遣を開始し、2003年度は10名の派遣を行った。