(1) 概要
1979年に英国から独立した。1984年以来、ミッチェル首相が率いる新民主党(NDP:New Democratic Party)が政権を担当していたが、2001年総選挙にて野党の統一労働党(ULP:Unity Labor Party)が勝利を収め、ゴンザルベス党首が首相に任命された。
外交面では、英国との関係を重視しており、また、カリブ共同体(カリコム)諸国との連携を推進している。
経済面では、バナナの輸出を中心とする農業と観光が主要産業である。自然災害、国際価格の変動に大きく影響を受けてきたが、概して安定した経済成長を維持している。米国の景気後退に加えて、2001年9月の米国における同時多発テロ事件が欧米からの観光客に大きく依存している観光業に打撃を与えたこともあり、2001年の国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)成長率は0.3%にとどまった。2002年は、バナナ生産部門の構造調整、金融部門の強化等の改革を実行することにより、GDP成長率は1.0%にとどまり、2003年も1.0%となっている。
我が国とは1980年に外交関係を樹立した。1993年より開始された日・カリブ協議等を通じ我が国との関係は緊密化しつつある。2004年3月には、ゴンザルベス首相が訪日している。
(1) セントビンセント及びグレナディーン諸島に対するODAの意義
セントビンセント及びグレナディーン諸島の基幹産業は観光と農業、水産業であり、経済基盤は脆弱である。同国経済の安定のためにODAにより同国の社会経済開発を側面的に支援することは、ODA大綱の重点課題の一つである「持続的成長」の観点からも重要である。
漁業に関しては、昔ながらの漁法を採っているため、非効率的でありかつ全世界的な傾向として資源の枯渇が懸念されている。同国は今後持続的海洋水産資源の利用、観光資源の確保等の観点から環境保全にも関心を有しており、我が国対して支援を求めている。カリブ地域と我が国は、同じ島国としての立場から漁業分野において共通の利害を有し、国際場裡では、では捕鯨問題等連携をとってきており、今後も有効な関係を継続する必要がある。
(2) セントビンセント及びグレナディーン諸島に対するODAの基本方針
セントビンセントは独立してから日が浅く人口も12万人と国家規模も小さいが、我が国は技術協力、水産無償協力等を中心とした援助を行っている。
技術協力では、水産分野における専門家派遣、農業、工業分野等の研修員受入れを行っている。2000年11月には、青年海外協力隊派遣取極が締結され、2003年より同隊員が派遣された。
無償資金協力では、1987、1988年度に、東カリブ諸国に対する初の水産無償協力としてキングスタウンに魚市場を建設したほか、漁業開発計画、沿岸漁業建設計画、水産センター建設計画および、2003年からはキングスタウン魚市場改修計画の水産無償案件を実施している。また、1991年度からは文化無償協力、1998年度から草の根無償資金協力を実施している。
(3) 重点分野
2000年11月8日に東京で開催された第1回日・カリコム閣僚級会合において、策定された「21世紀における日・カリコム協力のための新たな枠組み」に基づき、以下を重点分野とした。
(イ) 良い統治、(ロ) 貧困と削減、(ハ) 環境と防災、(ニ) 中小企業開発、(ホ) 観光・水産・農業、(ヘ) 貿易・投資促進、(ト) 通信技術
(1) 総論
2003年度のセントビンセントに対する無償資金協力は7.73億円(交換公文ベース)、技術協力は0.85億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力は39.67億円(交換公文ベース)、技術協力は8.87億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
1987年、1988年度に、東カリブ諸国に対する発の水産無償資協力として「キングスタウン魚市場建設計画」を建設したほか、漁業開発計画、沿岸漁業開発計画、水産施設建設計画等の協力を実施し、2003年にはキングスタウン魚市場改修計画を実施した。また、1991年度からは文化無償協力、1998年度からは草の根・人間の安全保障無償資金協力を導入し、2003年には、「幼児教育研修施設改修計画」の協力を行った。
(3) 技術協力
行政、水産分野等で研修員を8名受入れ、水産開発の専門家を派遣している。
2000年11月には、青年海外協力隊派遣取極が締結され、2003年には8名を派遣した。