[13]スリナム

1.スリナムの概要と開発課題

(1) 概要
 1975年にオランダより独立した。政権の経済失策が経済成長の停滞を引き起こし、これに対する国民の不満を背景に、1980年、クーデタにより、軍事政権が樹立されたが、同政権による政策の失敗が経済を悪化させ、1987年総選挙で民政に復帰した。民政復帰後も反政府ゲリラとの内戦により、経済情勢は悪化し続けた。この混乱の中、1990年に再び軍事政権が樹立されたが、1991年総選挙以降は民主的手続による政権交代が続いている。その間、政権基盤の弱体化及び放漫財政による経済の悪化が急激に進展した。2000年総選挙の結果、フェネティアーン政権が発足した。同政権は緊縮財政や通貨デノミネーション政策を施行し、経済は安定した。しかし、国内消費財の殆ど全てを輸入品でまかなっているために、昨今の原油価格高騰や国際社会の不安定化を受けて物価上昇が続き、国民の生活は圧迫されている。
 同国は、小量の原油の他、不安定な国際市場価格の影響を被りやすいボーキサイト及び水産物等の資源を有するが、他に特に有力な外貨獲得手段を持たない。そのため、同国の外交は、外国から援助を確保する施策を推進する性格が極めて濃い。オランダ一辺倒の外交から脱却し、多角化を進めようと懸命であるが、同国に対する国外からの援助額の6割(2003年6月時点)を拠出しているオランダ中心主義が根強く、多角化が十全に図られているとは言い難い。1995年6月のカリブ共同体(カリコム)加盟以降、スリナムはカリブ諸国との関係緊密化を通して、国際場裡における発言力の向上と市場拡大を目指している。
 我が国との外交関係は、スリナムの独立と同時に開始された。近年では、日・カリコム協議を通して二国間関係強化を図っている。また、民間レベルでは独立以前よりエビ漁・加工に携わる日本企業が進出しており、エビ輸出額は対日輸出額のほぼ全てを占めているが、近年減少傾向にある。また、我が国からの輸出品は中古車及び関連機械が殆どを占めており、総輸出額は増加の一途をたどっている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.スリナムに対するODAの考え方

(1) スリナムに対するODAの意義
 我が国は、近年、スリナムを含むカリブ諸国との間で政治的な対話を通じて良好な関係を築いてきている。このようなカリブ諸国との良好な関係にもかんがみ、同国の民主化と社会・経済開発をODAにより支援し、同地域の安定化に貢献する意義は大きい。
(2) スリナムに対するODAの基本方針
 スリナムの民主化定着努力を側面支援する観点から、無償資金協力及び技術協力を中心とした支援を実施してきている。
(3) 重点分野
 2000年11月8日に東京で開催された第1回日・カリコム閣僚級会議において策定された「21世紀における日・カリコム協力のための新たな枠組み」に基づき、以下を重点分野とした。
(イ) 良い統治、(ロ) 貧困と削減、(ハ) 環境と防災、(ニ) 中小企業開発、(ホ) 観光・水産・農業、(ヘ) 貿易・投資促進、(ト) 通信技術

3.スリナムに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のスリナムに対する無償資金協力は3.27億円(交換公文ベース)、技術協力は0.33億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力は41.03億円(交換公文ベース)、技術協力は5.92億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 「母子保健医療機材整備計画」を実施した。
(3) 技術協力
 農業・水産等の分野から6名の研修員の受入れを行った。

4.スリナムにおける援助協調の現状と日本の関与

 汎アメリカ保健機構(PAHO:Pan American Health Organization)、世界保健機関(WHO:World Health Organization)、米州開発銀行(IDB:Inter-American Development Bank)等の国際機関や各国大使館の間で毎月ドナー会合が開催され、スリナムの開発問題や国際協力・援助動向について協議・情報交換を行っている。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対スリナム経済協力実績

表-6 諸外国の対スリナム経済協力実績

表-7 国際機関の対スリナム経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細


プロジェクト所在図



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