[12]ジャマイカ

1.ジャマイカ政治・経済の概要と開発課題

(1) 概要
 1962年の独立以来人民国家党(PNP:People's National Party)とジャマイカ労働党(JLP:Jamaican Labour Party)の2大政党が民主的選挙により政権交代しているが、1992年3月、パターソン現首相がマンレイ首相(当時)の病気引退を受け副首相から首相に就任した後は、1993年3月、1997年12月及び2002年10月の総選挙でJLPをおさえPNPが四期連続で政権を担っている。
 現政権は一国主義を排し国際協調の強化を図ることを外交の基本方針としており、その下で脆弱性を有する島嶼小国家からなるカリブ諸国の持続的発展のための国際協力の維持、具体的にはバナナ、砂糖等農産品に関する対カリブ特恵措置の継続働きかけ等を外交の主要課題としている。また、カリブ司法裁判所及びカリブ単一市場経済の早期創設に積極的である。
 外貨獲得の主力は海外在住者からの送金と観光収入であり、次いでボーキサイト、アルミナ及び農産品の輸出である。外貨獲得手段が限られることに加え、食料・石油を輸入に依存していることから、ジャマイカの経済は欧米先進国の景気、金利情勢や輸出品目の国際価格動向等の外部要因に対して極めて脆弱である。
 政府は、2004年8月現在で48億ドル(米ドル、以下同じ)を超える対外債務と1973億ドルを超える国内債務をかかえており、財政出動の自由度に乏しい。
 経済成長率は、債務負担軽減を目標にした政府の緊縮財政・高利子率政策を背景に1996年以降低迷していたが、ここ数年は回復基調にある。2004年度の成長率については、ハリケーンによる被害からの復旧や食料価格と最近の石油価格の高騰もある中で、現在は2.3~2.5%程度の成長率見込みとなっている。
 今後の経済運営の中・長期的課題としては引き続きインフレ抑制、金利の引き下げ、内外の投資促進による民間活力の引き上げ、生産性向上等が挙げられている。
(2) 2004~2007年の開発課題
 2004~2007年を見通した「中期社会経済政策フレームワーク」(財務・企画省、企画庁、中央銀行共同作成)によれば、財政中期支出計画の重点支出分野は、2004/2005年度が保健・衛生、教育及び治安であり、2006/2007年度は運輸、建設、観光、鉱業等となっている。
 経済面では、公共部門の近代化、及び民間部門の雇用を伴う成長再開等を政策目標としている。
 社会面では、高齢化対応と福祉制度の近代化、幼児の発育に関わるニーズの確保、中等教育のカリキュラム統一・就学率向上、犯罪と青少年問題(男性は学業不振と犯罪、女性は失業と性に係る健康)及びジェンダー問題等の克服を課題としている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.ジャマイカに対するODAの考え方

(1) ジャマイカに対するODAの意義
 パナマ運河通過船舶による円滑な輸送の確保のため、通行地域となるカリブ諸国の理解を得る必要がある。ジャマイカはカリブ諸国のスポークスマンを自認しており、国連、世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)等の場において開発のための国際協力を働きかけるなどカリブ地域諸国の利益擁護に努めており、カリブ諸国の動向にも影響力を有することから、同国と安定した協力関係を維持する必要がある。
 ジャマイカは、ボーキサイトや農産品の輸出に依存する島嶼小国であり、国際市場に左右されやすい経済的脆弱性を有するため、同国の経済安定化に向けた支援を行ったり、また、近年同国には石油埋蔵の可能性を有しており、同開発のための支援を行うことは、ODA大綱の重点課題である「貧困削減」や「持続的成長」の観点から意義が大きい。
(2) ジャマイカに対するODAの基本方針
 ジャマイカはカリブ地域の主要国であること、一人当たり国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)が比較的高い(3,800ドル:2002年)水準であること、及び我が国との関係も緊密化してきていることを踏まえ、草の根無償、円借款及び技術協力を中心とした援助を実施する。また、国連開発計画(UNDP:United Nations Development Programme)等国際機関を通じた援助も実施する。
(3) 重点分野
 ジャマイカ側の優先課題を踏まえ、現地大使館・JICA事務所が中心となり、2国間関係においては (イ) 雇用機会の拡充、(ロ) 地域医療の向上、(ハ) 環境保全に重点を置くとともに、2001年11月8日に東京で開催された、第1回日・カリコム閣僚級会合において、策定された「21世紀における日・カリコム協力のための新たな枠組み」に基づき以下を重点分野とした。
(イ) 良い統治、(ロ) 貧困削減、(ハ) 環境と防災、(ニ) 中小企業開発、(ホ) 観光・水産・農業、(ヘ) 貿易・投資促進、(ト) 通信技術

3.ジャマイカに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のジャマイカに対する無償資金協力は0.38億円(交換公文ベース)、技術協力は3.59億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款は534.21億円、無償資金協力は14.02億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は62.20億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 草の根・人間の安全保障無償資金協力として、「マバリー市民研修・ライフ・ケアー・センター設立計画」、「自動車修理研修センター設立計画」他2件を実施した。
(3) 技術協力
 2003年度は、行政、保健・医療、水産分野などの研修員18名の受入れ、5名の専門家、17名の青年海外協力隊員の派遣を行った。また、技術協力プロジェクトとして「南部地域保健強化」を実施し、その技術を近隣国へ裨益させるため、第3回研修「生活習慣予防」を実施する。

4.ジャマイカにおける援助協調の現状と我が国の関与

 UNDP等の国際機関、各国大使館・援助実施機関の間で「国際開発援助パートナー年次ドナー会合」を実施している。
 また、UNDP、ユネスコ、世界銀行等を通じ、ジェンダー訓練、遠隔教育支援、エイズ対策、電子政府ネットワーク整備等の支援を行っている。

5.留意点

 カリブ諸国は共通する地域特性と類似する経済構造を有しており、共通する開発課題に対し、カリブ共同体(カリコム)等の地域機関を通じた支援が行われている。カリブ地域全般に配慮したODAを実施する必要がある。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ジャマイカ経済協力実績

表-6 諸外国の対ジャマイカ経済協力実績

表-7 国際機関の対ジャマイカ経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度草の根人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



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