(1) 概要
コロンビアでは、憲政が100年以上継続し、一貫して文民政権の下で民主主義制度を維持してきている。他方、同国には左翼系反政府組織として、「コロンビア革命軍(FARC:Fuerzas Armadas Revolucionarias de Colombia」及び「国民解放軍(ELN:Ejercito de Liberacion Nacional)」の2大勢力が存在し、政府、治安当局等に対する政治目的のテロを行う一方、資金調達のための誘拐、脅迫、強盗等を行うとともに、麻薬取引で巨額の資金を調達しているとされる。これら左翼系組織に相対する自警団「パラミリタリー(極右不正規民兵組織)」との間でも激しい抗争が続いている。
左翼ゲリラの抗争によって多くの国内避難民が発生しており、流出元の農村部のコミュニティーが崩壊するばかりでなく、流入先の地方都市部に深刻な社会インフラ不足を生じさせており、深刻な社会問題となっている。また、エクアドル等隣国に流出する避難民問題、反政府勢力の資金源となっている麻薬取引問題は、国際的な地域不安定問題にまで発展している。
2002年8月に発足した現ウリベ政権は、治安強化を打ち出して和平問題に積極的に取り組んでおり、国民からの高い支持を受けて いる。また、パラミリタリーとの交渉プロセスを正式に立ち上げ2003年7月から和平交渉を開始した。また将来的な和平プロセスの再開を念頭に置きつつ、左翼ゲリラとの接触も維持し、ELNとはメキシコの仲介により書簡での対話を開始した。FARCについては和平交渉実現の目処は立っておらず、武力抗争はなお続いている。
経済面では、伝統的に堅実な経済運営を行っており、中南米地域で債務繰延を行っていない数少ない国のひとつである。かつては、コーヒー産業を中心とする農業国であったが、近年は輸出産品の多角化を進めており、農産物の国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)に占める割合は低下している。1999年にコーヒー価格の低迷、世界的不況の影響を受け、32年以来初のマイナス成長を記録したが、2000年以降は再びプラスに転じている。鉱物資源(石油、石炭等)及び水産資源が豊富であり、文化・教育水準も高く、人口(約4,300万人)も中南米ではブラジルとメキシコに次ぐ規模であり、発展の潜在力は大きい。
我が国とは伝統的に友好的な関係を維持している。1999年には日本人コロンビア移住70周年記念式典が行われたほか、同年5月にはパストラーナ前大統領が訪日(公式実務訪問)した。
(2) 国家開発計画
現ウリベ政権の国家開発計画「共同体国家に向けて」は、次の4つの重点分野から構成される。
(イ) 国民全体の安全確保
コロンビアの経済・社会状況の改善のためには、治安・秩序回復が必要条件。このためには、麻薬取引及び犯罪組織の根絶、司法強化、荒廃地域及び紛争地域の開発、人権の擁護、国家建設のための教育普及等を推進することが重要。また、国際協力も必要。
(ロ) 持続可能な経済成長と雇用の拡大
2006年における経済成長率の目標を4.4%に設定。高い経済成長率の実現のためには経済活動の活性化が必要。特に住宅セクター及び輸出産業セクターの活性化が重要。また、財政調整、年金制度及び雇用制度改革の実施は国民所得を増加させる基礎となる。さらに石油及び天然ガス資源の探査及び採掘の推進、新たなインフラプロジェクトの実施、科学技術振興等も必要。
(ハ) 社会的公平の建設
市民参加型の国家では、異なる社会層及び地域、農村住民及び都市住民の間で経済成長による利益を公平に分配。教育改革(150万人の小中学校教育機会創出)、地域の治安状況の改善、経済的連携の強化、生産性向上及びインフラ整備を通じた社会開発、公共サービスに関する新政策の導入、中小企業の振興及び都市生活の質的向上を推進。
(ニ) 透明性と効率性の高い国家機関の建設
高い経済成長率及び社会的平等の確立のため国家の改革を強化。政治改革、行政改革、政府規模の合理化、地方における民主主義の強化、行政手続への市民参加、国民へのサービス意識の徹底、腐敗及び金権、地縁、血縁に偏った政治の防止等を推進することが必要。