(1) 概要
1974年の英国からの独立後、1979年のクーデターによる人民革命政権、1983年の暫定政府を経て、1984年に正式な政府としてブレイズ政権が成立した。その後1995年6月の総選挙で政権についた新国民党(NNP:New National Party)のミッチェル首相は、1999年1月の総選挙で全選挙区の勝利を収めたのに続き、2003年11月の総選挙においても1議席の僅差ではあるが勝利し、ミッチェル政権は3期目に入った。外交面では、米国を中心とした欧米諸国との関係を強化しつつ、カリブ共同体諸国(カリコム)との連帯を推進している。
経済面では、伝統的農産品(ナツメグ、バナナ、カカオ等)の生産と観光産業に大きく依存している。観光業は、1980年代中・後半に高い成長率を記録し(1986―1990年平均6.5%)、1990年代に入ってその成長は鈍化したものの、概して緩やかな成長が維持されている。農業は、1990年代に入って天候不良、病虫害等の影響により生産高の減少がみられ、1995年を除きマイナス成長が続いた。米国の景気後退に加えて、2001年9月の米国における同時多発テロ事件は、欧米からの観光客に大きく依存している観光業に打撃を与え、2001年の国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)成長率は-3%に落ち込んだが、その後観光業が回復し、2002年のGDP成長率は3.4%、翌2003年は1.2%となっている。なお、2004年9月には、ハリケーン・アイバンの直撃を受け、観光、農産物生産に壊滅的な打撃を受けるとともに、建造物の90%が破壊され、独自では復興支援が困難であるとし、国際社会に広く支援を呼びかけている。
我が国は1975年に外交関係を開設した。1993年より開始された日・カリブ協議等を通じ両国関係は強化されつつある。
(1) グレナダに対するODAの意義
グレナダの基幹産業は観光と農業、水産業であるが、いずれも天候に大きく左右されるため、経済基盤は脆弱である。同国経済の安定のためにODAにより同国の社会経済開発を側面的に支援することは、ODA大綱の重点課題の一つである「持続的成長」の観点からも重要である。
漁業に関しては、昔ながらの漁法を採っているため、非効率的でありかつ全世界的な傾向として資源の枯渇が懸念されている。同国は今後、持続的海洋水産資源の利用や観光資源を確保する観点から、環境保全にも関心を有し、我が国に対して支援を求めている。カリブ地域と我が国は、同じ島国としての立場から漁業分野において共通の利害を有し、国際場裡では捕鯨問題等連携を取ってきており、今後も有効な関係を継続する必要がある。
(2) グレナダに対するODAの基本方針
同国は人口わずか10.2万人という小規模国家であるが、我が国は技術協力及び水産無償資金協力を中心に協力を行っている。
(3) 重点分野
2001年11月8日に東京で開催された、第1回日・カリコム閣僚級会合において、策定された「21世紀における日・カリコム協力のための新たな枠組み」に基づき以下を重点分野とした。
(イ) 良い統治、(ロ) 貧困削減、(ハ) 環境と防災、(ニ) 中小企業開発、(ホ) 観光・水産・農業、(ヘ) 貿易・投資促進、(ト) 通信技術
(1) 総論
2003年度のグレナダに対する技術協力は0.17億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力は39.10億円(交換公文ベース)、技術協力は9.40億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
沿岸漁業開発計画、漁業施設建設計画、魚市場建設計画及び水産物流通改善計画等の水産無償を実施しているほか、1997年度からは草の根・人間の安全保障無償資金協力、2004年度のハリケーン被害に対する緊急援助を実施している。
2003年度は水産無償として、グレンヴィル水産物流通改善計画を実施した。
(3) 技術協力
1977年度より農林水産、交通等の分野で研修員を受入れているほか、水産関係の専門家の派遣実績がある。1996年度には初の開発調査である「道路整備計画調査」を実施した。
また、2003年度には、行政、水産分野等で4名の研修員を受入れ、2004年にはハリケーン被害に対する緊急援助を実施し、2002年から水産分野の広域専門家を派遣(駐ドミニカ)派遣している。