(1) 概要
1959年のキューバ革命以降、一党体制を堅持。カストロ国家評議会議長が閣僚評議会議長、軍最高司令官、キューバ共産党第一書記当の要職を兼任している。2003年1月、人民権力全国議会選挙を実施し、同年3月、カストロ議長は国家評議会議長に再選された(6選、任期は5年)。
キューバ経済は、ソ連・東欧圏の崩壊により、1990年代前半、大幅なマイナス成長を記録した。この「平時の緊急事態」と呼ばれる経済危機を克服するために、キューバ政府は、部分的に市場原理に基づく経済改革を導入、その後、キューバ経済は、1995年以降回復、特に観光業を中心に成長した。2002年の経済成長は、1.1%と低迷したものの、2003年は当初予想(1.5%)を上回って、2.6%を達成した。中・長期的には、一次産品(砂糖やニッケル等)に依存する脆弱な経済基盤を強化するため、国内産業の効率化・多角化、貿易・投資の拡大が課題となっている。
キューバは、従来、平等な社会とされてきたが、ドルの解禁や、自営業の認可等により、国民の間の所得格差が拡大しているとの指摘もある。これらの問題に対処するため、2002年末頃より党主導による中央集権化及び経済引き締めが強化される傾向にあり、2004年11月、国内の商取引における米ドルの流通が禁止された。
2003年3月、キューバ政府は人権活動家党合計75名を逮捕、またシージャック犯に対して即決裁判を実施、死刑が宣告され、即日執行された。2004年4月以降、収監者の健康上の理由により、逮捕された75名の内、14名が釈放されているものの、キューバの人権状況を引き続き注視する必要がある。
(2) 国家開発計画
キューバは、世界銀行及び国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)への加盟を認められていないため、貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)策定の条件が揃っていない。また、各省庁にはそれぞれ開発計画が存在しているが、これらの計画は非公開となっている。
(1) キューバに対するODAの意義
キューバは、統制と配給を基礎にするペソ経済と、部分的な経済改革により導入されたドル経済が存在する二重経済構造を有している。ODAを活用して、同国の経済自由化を促進すると共に、ODA大綱の基本方針の一つである「公平性の確保」の考えの下、社会的弱者への配慮を可能とするような持続可能な開発を促進することは、ODA大綱の重点課題の一つである「持続的成長」の観点から意義が大きい。
また、これまで環境対策が十分ではなく、キューバにおける大気・海洋汚染等は深刻な状況にあるが国際社会が協調して対応すべき環境問題への取組を支援することはODA大綱の重点課題の一つである「地球的規模の問題への取組」の観点から重要である。
(2) キューバに対するODAの基本方針
我が国は、キューバにおける民主化の促進、人権状況の改善、経済自由化の促進を支援することを目的として、ODAを実施。従来、技術協力を中心に実施してきたが、1997年以降、草の根無償資金協力、文化無償資金協力、草の根文化無償資金協力等、キューバ国民に直接裨益するような案件を中心に経済・社会開発を支援。
(3) 重点分野
2000年10月に、初のプロジェクト確認調査団を派遣し、先方政府と政策協議を行ったところ、農業、環境分野等を重視した協力を行っていくことで合意した。
(イ) 環境
環境分野に係る3件の開発調査(ハバナ湾汚染源対策調査、ハバナ市都市固形廃棄物総合管理調査、森林資源持続的管理計画調査)を実施。
(ロ) 食糧増産
キューバ中央地域における米生産に係る持続的開発計画を実施。
(ハ) 基礎生活分野(BHN:Basic Human Needs)
医療・保健分野における研修等を実施。
(ニ) 経済改革
研修員受け入れ及び専門家派遣を実施。
(1) 総論
2003年度のキューバに対する草の根無償資金協力は0.72億円(交換公文ベース)、技術協力は4.76億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力は14.54億円(交換公文ベース)、技術協力は19.43億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
水産分野及び医療保健分野に対し実施
(3) 技術協力
環境分野を中心に実施。
2004年、日・チリ・パートナーシップ・プログラムの枠組みで、キューバの水産分野に対し、水平協力プロジェクト(チリ人専門家の派遣)を実施した。