(1) 概要
1822年の独立後、クーデターによる政権交代が繰り返されたが、1979年の民政移管後は民主体制が維持されている。1998年に発足したマワ政権では、深刻な財政赤字の改善のため、補助金の削減、金融取引税の導入を行ったが、厳しい経済状況が続く中、マワ政権の経済政策に反対する抗議行動等が頻発した。2000年に発足したノボア政権では、当時副大統領が軍の支持を得つつ、議会の承認を経て新大統領に就任し、事態は収拾した。ノボア大統領は、マワ政権の経済政策を引き継ぎ、ドル化のための経済変革基本法や投資促進・市民参加法が成立し、各種改革がスタートした。
2003年に成立したルシオ・グティエレス政権では、就任直後、ガソリン価格の値上げを含む経済政策を発表し、国際金融機関が要求する財政改革に着手した。また、米国との関係強化をはかり、国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)からの融資取り付け、アンデス開発公社、世界銀行、米州開発銀行(IDB:Inter-American Development Bank)からの融資にも道を開いた。しかし、こうした政策は先住民系グループ、労組及び社会団体からの非難を招き、デモやストライキが頻発し、結果、民主大衆運動を引き起こした。その後、コロンビア反政府ゲリラへの武器密輸疑惑、麻薬組織から与党への献金疑惑が表面化し、政府は窮地に追い込まれたが、グティエレス大統領は12月に大幅な内閣改造(10閣僚の交代)を断行、危機を乗り越えた。脆弱な政治基盤を有する同政権は、頻繁に閣僚を交代するなど現在も厳しい政権運営を余儀なくされている。2004年11月からは、国会においてグティエレス大統領罷免手続きが行われてるなど(成立には至らず)、引き続き不安定な情勢が続いている。
外交関係では米国との政治経済関係の強化、アンデス共同体諸国との統合経済促進(特に1998年10月にペルーとの和平合意の維持発展)及びEU、アジア太平洋諸国との経済関係緊密化を柱として外交活動を展開している。なかでも米国との関係を重視しており、エクアドル国内に隣国コロンビアの麻薬取引監視を目的としたマンタ米軍基地設置を認めているほか、最近では自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)交渉が進行中である。
経済面では、石油輸出国(1992年OPECより脱退)であり、石油に大きく依存するとともに、農業や水産業が主要な産業となっている。
1972年に石油輸出が開始され、高い経済成長を遂げたが、1986年以降は石油価格の下落、地震によるパイプラインの損壊、コーヒー価格の急落、洪水等の影響を受け経済は深刻な打撃を被った。グティエレス政権は歴代政権と同様に財政赤字の削減を目的とした緊縮財政を中心に据え、IMFとの合意を基に公共料金の引き上げや増税を実施し、歳入増を図った。緊縮財政の下、インフレ率は低い水準で推移しており、マクロ経済面では安定している。
(2) 「エクアドル政府複数年計画2003-2007」
共和国大統領府企画室が2003年3月に発表した「エクアドル政府複数年計画2003-2007」では、以下の分野を取り上げている。
(イ) 汚職、刑罰の不当な免責、社会的不公平との闘い、(ロ) 貧困や失業との闘い、
(ハ) 国民の安全、治安、司法保障、食糧保障及び環境保全、(ニ) 競争力向上のための生産性の向上、(ホ) 実践に即した一貫した政治改革と外交政策