[2]アンティグア・バーブーダ

1.アンティグア・バーブーダの概要と開発課題

(1) 概要
 1981年の英国からの独立前からV.バード首相(1999年6月逝去)が政権を担当し、1994年より、同首相の次男であるL.バード首相が政権を担っていたが、2004年3月の総選挙において野党統一進歩党が圧勝し、政権交代が行われた。新政権のスペンサー首相は政策の大幅な変更はとっておらず、既存の政策の見直しと透明性を図っている。外交面では、米国との友好関係維持、カリブ諸国及び英国との関係を重視しており、近年、同国を含むカリブ共同体(カリコム)加盟諸国は、国際社会における発言力を強めてきている。
 経済面では、観光業の成長を背景に、1980年代半ばに高い経済成長率を達成したが、1990年代に入り経済は停滞し始めた。観光業以外にほとんど産業が育成されておらず、災害等外的要因に大きく左右される脆弱な経済構造を抱えている。米国の景気後退に加えて、2001年9月の米国における同時多発テロ事件が、欧米からの観光客に大きく依存している観光業に打撃を与えたこともあり2002年国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)成長率は1.7%にとどまり、翌2003年は4.4%となっている。
 我が国との関係は、貿易を含め稀薄であったが、1993年より開始された日・カリブ協議(カリコムとの政策対話)、駐日名誉領事館の設置(1997年5月)、駐日大使の任命(1997年7月)等を通じ、強化されつつある。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.アンティグア・バーブーダに対するODAの考え方

(1) アンティグア・バーブーダに対するODAの意義
 アンティグア・バーブーダは、1人あたりのGDPが9,390ドルと比較的高く、同地域の中でも中心的な国である。一方、同国の基幹産業は観光と農業、水産業であるが、天候に大きく左右されるため、経済基盤は脆弱であり、同国経済の安定のためにODAにより側面支援を行うことはODA大綱の重点課題の一つである「持続的成長」の観点からも重要である。
 漁業に関しては昔ながらの漁法を採っているため非効率的であり、かつ全世界的な傾向として資源の枯渇が懸念されている。同国は今後持続的海洋水産資源の利用、観光資源の確保等の観点から環境保全にも関心を有しており、我が国に対して支援を求めている。カリブ地域と我が国は、同じ島国としての立場から漁業分野において共通の利害を有し、国際場裡では、捕鯨問題等連携を取ってきており、今後も有効な関係を継続する必要がある。
(2) アンティグア・バーブーダに対するODAの基本方針
 アンティグア・バーブーダは独立後日が浅く、所得水準が高く(GDP約1万USドル)国家規模も小さいことから、これまで水産無償資金協力、技術協力等を中心とした援助を行っている。 
(3) 重点分野
 2001年11月8日に東京で開催された、第1回日・カリコム閣僚級会合において、策定された「21世紀における日・カリコム協力のための新たな枠組み」に基づき以下を重点分野とした。
 (イ) 良い統治、(ロ) 貧困削減、(ハ) 環境と防災、(ニ) 中小企業開発、(ホ) 観光・水産・農業、(ヘ) 貿易・投資促進、(ト) 通信技術

3.アンティグア・バーブーダに対する2003年度ODA実績

(1) 総論 
 2003年度のアンティグア・バーブーダに対する無償資金協力は1.68億円(交換公文ベース)、技術協力は0.84億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力は31.09億円(交換公文ベース)、技術協力は3.97億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 1997年以降、2003年度までに(水産センターは2004年にE/N署名、2004年度にも2期目を行っている。)セントジョーンズ水揚・流通施設建設計画、零細漁業復興計画、水産センター開発計画等水産無償案件(5案件、計31.03億円)を実施している。
(3) 技術協力
 2003年度は3名の研修員受入れ及び機材供与の実績があるほか、2001年度より2年間水産関連専門家を派遣した。
 また、1998年のハリケーン・ジョージによる災害に対して、緊急援助物資(785万円相当)を供与した。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対アンティグア・バーブーダ経済協力実績

表-6 諸外国の対アンティグア・バーブーダ経済協力実績

表-7 国際機関の対アンティグア・バーブーダ経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細


プロジェクト所在図



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