(1) 概要
1990年、ツチ族主導のルワンダ愛国戦線(RPF:Rwandan Patriotic Front)とフツ族政権(当時)の間で内戦が勃発、1994年4~6月に起きたフツ族過激派による大虐殺の後、RPFは全土を武力で制圧し、同年7月に政権を樹立した。RPF政権は、基本的にツチ族主導体制を維持しつつも、出身部族を示すIDカードの廃止、フツ族出身閣僚の任命、大統領、議会(上院及び下院)地方選挙の実施、女性の遺産相続を可能とする遺産相続制度の導入、国民和解委員会、人権委員会及び憲法委員会の設置等を通じた国民和解、民主化のための努力を行っている。2003年8月から10月にかけて実施された大統領選挙、議会選挙では、現職のカガメ大統領及び同大統領率いる与党RPFが勝利した。
経済面では、農・牧畜業が基盤であり、国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)の約50%が農林業によって占められている。主要農産物はコーヒー(輸出収入の80%を占める)、茶等であり、特にコーヒーは国際市況の動向に大きく左右されている。1994年の内戦により、経済は壊滅的打撃を受けたが、その後、国際社会から大規模な支援もあり、ここ数年マクロ経済指標にも改善が見られ、安定した経済成長を続けている(2002年の経済成長率は9.4%)。
(2) ルワンダ開発計画
ルワンダ政府は内戦からの復興を当面の課題とし、1996年に「公共投資計画」を、2000年に20年後の経済達成目標を定める「VISION2020」を、2002年には最終版貧困削減戦略文書(F-PRSP:Full-Poverty Reduction Strategy Paper)を策定し、右戦略において復興と開発に主眼を置いた国家計画を示している。一方、周辺国に大量に流出していた難民・国内被災民の帰還・再定住、社会再統合の問題は現在においても深刻な状況にある。
2002年に策定されたPRSPは2005年に改訂が予定されている。PRSPには、(a)人的支援開発、(b)経済インフラ開発・ICT、(c)農業改革・地方開発、(d)グッドガバナンス、(e)民間部門開発、(f)社会的弱者支援の6つの優先分野が定められている。
(1) ルワンダに対するODAの意義
ルワンダでは長く続いた内戦とその後の混乱がようやく収拾し、復興の局面に入りつつある。ルワンダの復興と安定は、依然として不安定な大湖地域の安定にとり重要である。ODA大綱の重点課題の一つとして「平和の構築」が掲げられているところであるが、ルワンダの民主化と国民和解、さらに復興開発に向けた努力を支援することは、悲惨な過去を踏まえて国家の再統合と再建を実現し、地域の安定と平和を確たるものとするためにも必要である。
(2) ルワンダに対するODAの基本方針
ルワンダ国内情勢の安定化を受けて、無償資金協力及び技術協力等の二国間援助の本格的再開も視野に入れつつ、2004年5月に政策協議を現地ベースにて実施した。その結果を踏まえ、今後、「人的資源開発」と「地方農村活性化」を重点支援課題として支援していく方針である。なお、同国は拡大HIPCイニシアティブの適用国であることから、当分の間、新規円借款供与は困難である。
(3) 重点分野
我が国は、1994年の大虐殺以前は、食糧援助、食糧増産援助、教育等の基礎生活分野及び運輸等の基礎インフラ整備に対する無償資金協力や、通信・放送、工業分野等での研修員受入、青年海外協力隊派遣等による技術協力を行ってきた。
現在、二国間援助の実施は草の根・人間の安全保障無償資金協力及び研修員受入を中心に実施しているが、2004年の現地政策協議を踏まえ、人的資源開発(特に教育、職業訓練)とマルチセクトラルな、コミュニティ開発のための小規模インフラ整備や運営、維持管理などのキャパシティビルディング、農業開発支援に関して、無償資金協力や技術協力と効果的に組みあわせた支援を実施していく方針である。また、国連人権高等弁務官事務所(UNHCR:United Nations High Commissioner for Refugees)、国連開発計画(UNDP:United Nationa Deuelopment Programme)、世界食糧計画(WFP:World Food Programme)及び赤十字国際委員会(ICRC:International Commiffee of the Red Cross)等の国際機関を通じた人道援助を積極的に実施している。
(1) 2003年度のルワンダに対する無償資金協力は、0.11億円(交換公文ベース)、技術協力0.31億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款46.49億円、無償資金協力259.59億円(以上、交換公文ベース)、技術協力26.44億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力では、ルワンダ、ブルンジ、タンザニア難民支援として、1.99億円の食糧援助をWFP経由で実施したほか、草の根・人間の安全保障無償資金協力を1件供与している。
(3) 技術協力では、保健・医療、農業などの分野で21名の研修員の受入を実施した。