[47]レソト

1.レソトの概要と開発課題

(1) 概要
 レソトでは、1998年5月に実施された国民議会総選挙の選挙結果への不満から騒擾が勃発、同年9月には南部アフリカ開発共同体(SADC:Southern African Development Community)軍の介入を招いた。2002年5月、「やり直し総選挙」が国際選挙監視団の監視の下で実施され、モシシリ首相率いる与党レソト民主会議(LCD:Lesotho Congress for Democracy)が大勝した。その後、レソト国内の政治情勢は安定している。なお、2002年5月のやり直し総選挙では、我が国は、暫定政治機構(IPA:Interim Political Authority)に対して選挙活動用器材を支援し、1名の国際選挙監視委員を派遣する等の協力を実施した。
 外交面では、アフリカ連合(AU:African Union)、南部アフリカ開発共同体(SADC)、英連邦等に加盟し、現実的かつ穏健な外交政策を実施している。また、経済的に大きく依存している南アフリカ共和国と良好な関係を保つことが重要な課題となっている。
 経済面では、近年、米国によるアフリカ成長機会法(AGOA:African Growth and Opportunity Act)の恩恵を受け、繊維産業が成長している。ただし、繊維産業以外に突出した産業が少なく、多くの面で南アフリカ共和国に大きく依存しており、レソトから南アフリカ共和国への鉱業出稼ぎ労働者も多い。労働人口の多くが従事する農業については、経営規模が小規模であり、耕作可能な土地も国土の約1割に過ぎない。また、近年度重なる旱ばつの影響から慢性的食糧不足が問題となっている。レソト政府は電力、通信及び建設分野の産業育成に力を注いでおり、2001年に通信会社を民営化し、2004年後半には電力会社の民営化も予定している。我が国はレソトから衣類等を輸入(2003年輸入総額約8千6百万円)し、自動車、機械製品等を輸出(2003年輸出総額約1億1千万円)している。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.レソトに対するODAの考え方

(1) レソトに対するODAの意義
 レソトは、一人当たり国民総所得(GNI:Gross National Income)が590ドル(2003年)と低く、後発開発途上国(LDC:Least Developed Countries)として貧困問題を抱えていることに加え、失業率も高く、頻発する旱ばつ被害による慢性的な食糧不足の脅威にさらされており、我が国が基礎生活分野を中心とした支援をレソトに対して行うことは、ODA大綱の重点課題である「貧困削減」の観点からも意義が大きい。また、HIV/AIDSは人間に対する直接的な脅威となっており、その対応をODAによる支援することは、「人間の安全保障」の観点からも支援を実施していくことが重点である。
(2) レソトに対するODAの基本方針
 我が国は、レソトの民主化・経済改革努力を支援するため、食糧確保を含めた基礎生活分野に対する支援を実施していく方針である。
(3) 重点分野
 教育、保健・医療、農業を中心とする。教育については学校等の施設建設、保健・医療分野はHIV/AIDS及び感染症に関する資機材の提供、農業については農機具等の提供を中心に支援を実施。

3.レソトに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のレソトに対する無償資金協力は1.18億円(交換公文ベース)、技術協力は1.27億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力55.80億円(交換公文ベース)、技術協力6.47億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 食糧援助及び草の根・人間の安全保障無償資金協力による協力を実施した。
(3) 技術協力 
 保健・医療、農業等の分野における研修員受入れを中心に協力を実施した。また、HIV/AIDS対策や予防接種拡大を目的とする医療機材の供与を行った。

4.レソトにおける援助協調の現状と我が国の関与

 レソトは、世界銀行、英国国際開発省(DfID:Department for International Development)等を中心とするドナーを始めとする関係者と協議しつつ、最終版貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)の策定を進めているが、その動きは鈍い。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対レソト経済協力実績

表-6 諸外国の対レソト経済協力実績

表-7 国際機関の対レソト経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



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