(1) 概要
タヤ政権の下で内政は比較的安定して推移してきたが、2003年6月にはクーデター未遂事件が発生し首都ヌアクショットで戦闘が行われたほか、同年11月の大統領選挙は、直前に野党系有力候補が逮捕されたものの、予定通り実施された結果、タヤ大統領の勝利に終わった。2004年に入り、8月、9月には相次ぐクーデター計画が発覚したが、これら計画の首謀者は逮捕された。
モーリタニア経済は、伝統的に、農業、漁業及び牧畜を基盤とし、外貨収入は水産物及び鉄鉱石の輸出に依存している。農業や牧畜は天候、疫病、害虫(バッタ)に左右され、輸出も国際需要・価格の変動に影響を受けやすいため、構造的な脆弱性を抱えている。他方、オフショアには、相当量の石油とガスの埋蔵が確認されており、今後、同国は、急速に経済発展する可能性がある。
モーリタニアは、経済構造調整に積極的に取り組み、国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)や世界銀行からも高く評価されているが、貧困対策(貧富の格差の縮小)、都市問題、識字率向上、民営化の推進、為替レートの安定、食糧安全保障の確立等、中・長期的な課題は少なくない。
(2) 「貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)」
(イ) 内容:モーリタニアは、2001年から2015年までの中・長期的な開発目標を掲げたPRSPを2000年12月に策定した。PRSPの目標は、経済成長と貧困の削減、
基本的社会サービスへのアクセスと質量両面の改善、
経済インフラへのアクセスにおける地域差と性別間の格差の解消、より具体的には貧困率の低下、識字率、医療、教育、水へのアクセスの向上等である。
(ロ) 優先テーマ:上記目標を達成するために、PRSPは、経済成長の促進、
貧困層における成長の確立、
人的資源開発と基本的社会サービスの拡充、
組織改革と良き統治の促進の4つの優先テーマを特定している。