[44]モーリタニア

1.モーリタニアの概要と開発課題

(1) 概要
 タヤ政権の下で内政は比較的安定して推移してきたが、2003年6月にはクーデター未遂事件が発生し首都ヌアクショットで戦闘が行われたほか、同年11月の大統領選挙は、直前に野党系有力候補が逮捕されたものの、予定通り実施された結果、タヤ大統領の勝利に終わった。2004年に入り、8月、9月には相次ぐクーデター計画が発覚したが、これら計画の首謀者は逮捕された。
 モーリタニア経済は、伝統的に、農業、漁業及び牧畜を基盤とし、外貨収入は水産物及び鉄鉱石の輸出に依存している。農業や牧畜は天候、疫病、害虫(バッタ)に左右され、輸出も国際需要・価格の変動に影響を受けやすいため、構造的な脆弱性を抱えている。他方、オフショアには、相当量の石油とガスの埋蔵が確認されており、今後、同国は、急速に経済発展する可能性がある。
 モーリタニアは、経済構造調整に積極的に取り組み、国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)や世界銀行からも高く評価されているが、貧困対策(貧富の格差の縮小)、都市問題、識字率向上、民営化の推進、為替レートの安定、食糧安全保障の確立等、中・長期的な課題は少なくない。
(2) 「貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)」
 (イ) 内容:モーリタニアは、2001年から2015年までの中・長期的な開発目標を掲げたPRSPを2000年12月に策定した。PRSPの目標は、1経済成長と貧困の削減、2基本的社会サービスへのアクセスと質量両面の改善、3経済インフラへのアクセスにおける地域差と性別間の格差の解消、より具体的には貧困率の低下、識字率、医療、教育、水へのアクセスの向上等である。
 (ロ) 優先テーマ:上記目標を達成するために、PRSPは、1経済成長の促進、2貧困層における成長の確立、3人的資源開発と基本的社会サービスの拡充、4組織改革と良き統治の促進の4つの優先テーマを特定している。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.モーリタニアに対するODAの考え方

(1) モーリタニアに対するODAの意義
 モーリタニアの民主化及び政治的安定への努力、社会的・経済的弱者を救済するための貧困対策、また、外的要因に左右されやすい経済構造の改革を引き続き支援していくことは、ODA大綱の重点課題である「貧困削減」と「持続的成長」の観点から意義が大きい。
(2) モーリタニアに対するODAの基本方針
 モーリタニアは拡大重債務貧困国(HIPC)イニシアティブの対象国であることから、当分の間、新規円借款の供与は困難である。今後も、同国の貧困削減及び経済構造改革を支援するため、基礎生活分野や水産分野で、無償資金協力、技術協力を中心とした協力を検討していく方針である。
(3) 重点分野
 我が国は、モーリタニアの基礎生活の向上を図るため、無償資金協力や情報技術、行政、保健医療、人的資源分野等での研修員受入れ、専門家派遣、開発調査等の技術協力を中心に援助を実施している。無償資金協力については、農業分野で食料援助及び食糧増産援助を実施しているほか、基礎教育、保健・医療、水供給といった基礎生活分野、水産分野での援助を実施している。また、同国の構造調整努力を支援するため、2000年度までに合計63億円のノン・プロジェクト無償資金協力を供与した。また、ジェンダー関連で「女性の支援のための開発調査」を行っている。

3.モーリタニアに対する2003年度ODA実績

(1) 2003年度のモーリタニアに対する無償資金協力は14.55億円、技術協力5.03億円(JICA経費実績ベース)であった。また、債務免除79.56億円(交換公文ベース)を実施した。
 2003年度までの援助実績は、円借款110.84億円、無償資金協力400.94億円(以上、交換公文ベース)、技術協力43.61億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 1994年、1997年の二度にわたり、我が国の協力によって実施された飲料水供給施設整備に関する開発調査に基づき、深井戸を水源とする配水施設の建設・整備および地域住民参加型の施設の維持管理体制の確立を目的とした「キファ市飲料水供給施設整備計画」(9.53億円)を実施した。また、国土の大部分(約85%)が砂漠地帯に属するという極めて厳しい環境の中で農業を営む同国の事情に鑑み、モーリタニア政府は農業振興を国家経済政策の重点に置き、農業生産の増加による食糧自給率向上を図るための「農村部門開発戦略2015年に向けて」を策定しており、我が国はこの計画に必要な農業資機材(農業機械)を購入するために必要な資金につき、1.74億円の食糧増産援助を実施している。さらに、同国では約3%の高い人口増加率、干ばつ・砂漠化の進行およびバッタ被害等の影響により食糧総需要の約60%を輸入に依存するという構造的な食糧不足の状況にあり、その状況改善のため米の購入に必要な資金として、3億円の食糧援助を実施した。
(3) 技術協力では、砂漠化防止、オアシスを中心とした持続的な土地利用を目的とした地域開発計画(マスタープラン)策定を目的とした「オアシス地域開発計画調査」を実施したほか、国民の大半が農牧業に従事しており、外貨獲得のための産業育成を政策の重点課題として揚げている同国の輸出産業育成の一環として、鉱物資源開発に係る戦略プランを策定する「鉱物資源開発戦略策定調査」を開始している。さらに、水産分野で専門家の派遣を継続するほか、農業、水産、教育、保健・医療などの分野で27名の研修員の受入を実施した。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対モーリタニア経済協力実績

表-6 諸外国の対モーリタニア経済協力実績

表-7 国際機関の対モーリタニア経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件

表-10 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



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