[43]モーリシャス

1.モーリシャスの概要と開発課題

 1992年に英国女王を元首とする立憲君主制から大統領を元首とする共和制へ移行した。政体変更以前より一貫して議会制民主主義が定着している。現連合政権のモーリシャス社会主義運動(MSM)とモーリシャス闘士運動(MMM)の間で2000年に取り交わされた政治合意に従い、2003年、平穏裡にジュグノート首相(MSM党首)に代わりベランジェ副首相(MMM党首)が首相に就任するとともに、オフマン大統領に代わりジュグノート首相が大統領に就任した。
 モーリシャスは全方位外交を維持しつつ、とりわけインド及び旧宗主国である英国、フランスと良好な関係を保っている。また、南部アフリカ開発共同体(SADC:Southern African Development Community)、インド洋委員会(COI:Commiggion de l'Ocan Indien )、東部・南部アフリカ共同市場(COMESA:Common Market for Eastern and Southern Africa)及び環インド洋地域協力連合等を通じ地域協力を積極的に進めている。ベランジェ新首相は、IT先進国であり、人種的につながりの深いインドとの関係強化に引き続き努めている。
 経済面では、従来、砂糖産業に依存していたが、1985年以降は輸出加工工業地区(EPZ:Export Processing Zone)による繊維業輸出額が砂糖産業のそれを上回り、モノカルチャー経済構造から脱却して順調な経済成長を遂げた。一人当たり国民総所得(GNI:Gross National Income)は4,000ドルを越えており、アフリカ地域では数少ない高所得水準を達成している。砂糖、EPZの繊維業等の加工産業、観光が同国の経済の三本柱となっている。特に現連合政権はジュグノート前首相時代より経済活性化の鍵として情報産業開発に努力している。同国は、豊富な水産資源に恵まれた190万平方kmの排他的経済水域を擁しており、また、地域における通信・IT等知的技術や水産物流通の中枢として機能している。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.モーリシャスに対するODAの考え方

(1) モーリシャスに対するODAの意義
 モーリシャスは小島嶼国ではあるが、アフリカ有数の高所得国であり、国際場裏での発言力は大きい。地政学的にもアジアとアフリカの接点乃至中継地として、また、インド洋における要衝として重要である。モーリシャスが比較的順調に経済発展と民主主義を実現していることは、地域及びアフリカ全体の安定化と発展に貢献するものであるとともに、対アフリカ外交の観点からも重要である。また、同国の今後の課題であるEPZの産業の多様化・高度化、投資誘致をODAにより側面的に支援することはODA大綱の重点課題の一つである「持続的成長」の観点から重要である。
(2) モーリシャスに対するODAの基本方針
 我が国は、モーリシャスの一人当たりGNIが高い水準にあるため、円借款のほか、草の根無償資金協力、水産無償及び文化無償を実施している。今後とも、同国の更なる民主化、経済安定化を支援するため、基礎生活分野、水産分野、環境分野を中心とする援助実施の検討及び円借案件の発掘に努めていく方針である。
(3) 重点分野
 これまで下水処理等基礎生活分野にかかる協力のほか、沿岸資源・環境保全に関するプロジェクト方式技術協力や水産、社会インフラ分野などにおける研修員受入れ、開発調査等の技術協力を実施してきている。

3.モーリシャスに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のモーリシャスに対する無償資金協力は5.48億円(交換公文ベース)、技術協力は0.43億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款91.34億円、無償資金協力57.00億円(以上、交換公文ベース)、技術協力44.94億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 同国の基幹産業である漁業振興のため、サンゴ礁内で操業を行ってきた零細漁業者に対し、漁業技術訓練を行い沖合漁業に転換させること、及びサンゴ礁内外の資源管理を徹底し、資源保護、海洋環境保全を行うことを目的とした「零細漁業管理訓練施設改善計画」(5.48億円)を実施した。
(3) 技術協力
 行政、農業、保健医療、水産分野などで第三国研修を含め15名の研修員の受入を実施した。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対モーリシャス経済協力実績

表-6 諸外国の対モーリシャス経済協力実績

表-7 国際機関の対モーリシャス経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件


プロジェクト所在図



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