[39]マラウイ

1.マラウイの概要と開発課題

(1) 概要
 1994年5月に独立後初めての複数政党制による大統領選挙及び国民議会選挙が実施され、統一民主戦線(UDF:United Democratic Front)が議会選挙で勝利し、ムルジUDF党首が大統領に就任し、政権交代が平和的かつ民主的に行われた。1999年6月のムルジ大統領再選を経て、2004年5月に民主化後第3回目の大統領選挙が実施され、UDFのムタリカ候補が当選した。
 ムタリカ大統領は、前政権時代に比べ閣僚ポストを大幅に減らし、財務大臣や外務大臣など主要閣僚には国際機関での経験が豊富な人材を登用するなど、実務重視の政治運営に取り組んでおり、主要ドナー国・国際機関もムタリカ政権のこのような政治姿勢に対し好意的な関心を寄せている。
 外交面では、アフリカ諸国の中で唯一早くから南アフリカ共和国と外交関係を持つなど独自の路線を取り、また、領土を巡る緊張もあり、従来、周辺諸国との関係は良好とは言えなかった。しかし、南アフリカ共和国の民主化やマラウイ自体の政権交代により、周辺国との関係は改善され、現在では、南部アフリカ開発共同体(SADC:Southern African Development Community)を中心とした地域協力に積極的に参画する方針をとっている。
 経済面では、農業が国民総所得(GNI:Gross National Income)の約40%、労働人口の約85%、輸出の90%)を占めている。主要産物であるタバコ、茶、砂糖等は国際価格の動向に左右されやすく、経済基盤は脆弱である。経済成長率は2002年に2%、2003年は4.5%と上昇しているが、貧困人口を削減するには不十分である。今後の課題として財政赤字の削減、インフレの抑制、経済の多角化等がある。2001年から2003年にかけての洪水及び干ばつの影響により主食であるメイズをはじめとする農業生産が激減し、食糧支援を国際社会にアピールした。
(2) 「マラウイ貧困削減戦略文書(MPRSP:Malawi Poverty Reduction Strategy Paper)」
 2002年4月にMPRSPを策定し、次の(イ)~(ホ)を開発戦略の柱としている。また、2000年には長期開発計画として「ビジョン2020」が策定されている。
(イ) 持続的貧困削減と成長:貧困層の成長・収入増のために、農業を中心に、その他、製造業、観光業、小規模鉱業などを振興する。また、経済活動を支えるための通信・電力・運輸等経済基盤インフラ整備や上下水道等生活インフラ整備を進める。
(ロ) 人的資源の開発:上記(イ)の成長を達成するために基礎教育を普及させ、職業訓練に力を入れる。また、保健・衛生環境改善のために医療従事者を育成する。
(ハ) 弱者層の生活の質の改善:上記(イ)及び(ロ)が達成されたとしても、その効果が行き届かないと考えられる弱者層の生活を改善する。
(ニ) グッドガバナンス:様々な政策を運営する政府機能を向上させる。
(ホ) 横断的課題:HIV/AIDS、ジェンダー、環境保護、科学技術振興などの横断的課題にも対応していく。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.マラウイに対するODAの考え方

(1) マラウイに対するODAの意義
 マラウイは、南部アフリカ開発共同体(SADC:Southern African Development Community)、東・南部アフリカ共同市場(COMESA:Common Market for Eastern and Southern Africa)の枠組みにおける地域協力に積極的な取組を見せている。また、世界銀行・国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)の支援の下で構造調整を積極的に推進している。他方、同国では依然として1人当たりのGNIが低く(2003年は138ドル)、相次ぐ干ばつによる飢饉に見舞われているところ、基礎生活分野を中心にODAによる援助を実施していくことは、ODA大綱の重点課題である「貧困削減」の観点からも意義は大きい。
(2) マラウイに対するODAの基本方針
 我が国は、マラウイの民主化や貧困削減を最優先課題とした経済改革に対する取組を高く評価しており、これまで積極的に支援してきた。マラウイは、拡大HIPCイニシアティブの適用国であることから、当分の間、新規円借款供与は困難であるため今後の支援に当たっては、食糧援助、食糧増産援助、無償資金協力及び技術協力を中心に協力を実施していく。
(3) 重点分野
 1997年2月の政策協議及び1999年8月のプロジェクト確認調査により、農業分野における生産性向上を目的とした農業地域の開発、貧困層の生活環境改善のための生活分野に対する支援を中心に協力していくことが確認されており、具体的な援助に当たっては、2004年8月に実施された現地ベースでの政策協議を踏まえ、次の5分野を重点分野とした援助を実施していく。
(イ) 基礎生活支援
 食糧増産・農業生産性の向上のための農村地域開発として、小規模灌漑の普及、灌漑施設運営能力の向上支援を検討する。また、貧困層の生活環境改善(保健・医療、安全な飲料水の確保など)のために、医療器材の供与や地方医療施設改善、地下水開発を検討する。
(ロ) 経済インフラ整備
 地域経済の中心となる電化候補地点(トレーディングセンター)を拠点とした地方電化の推進や、経済活動を活発化させるための運輸交通インフラ整備など経済基礎インフラ整備に対する支援を検討する。
(ハ) 中小・零細企業育成
 2003年度にムルジ大統領(当時)が開始した一村一品運動の支援を検討する。
(ニ) 自立発展に向けた人材育成
 基礎教育を向上させるために、教育行政支援や教育施設整備などを検討する。
(ホ) 持続的開発のための環境保護
 人口に比して国土が小さいため、薪炭の消費などで自然環境への圧力が大きくなっているため、環境を保全しながらも持続的に発展していくための方策に関し、開発調査等を通じて検討していく。

3.マラウイに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のマラウイに対する無償資金協力は9.05億円(交換公文ベース)、技術協力は14.46億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款331.49億円、無償資金協力441.59億円(以上、交換公文ベース)、技術協力245.79億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力 
 食糧援助及び保健・医療分野における協力を実施した。
(3) 技術協力 
 水産分野における技術協力プロジェクト、農業、水産、保健・医療、インフラ、教育等の分野において、専門家派遣、研修員受入れ、青年海外協力隊員派遣、開発調査等の協力を実施した。特に、青年海外協力隊による協力は早くから進んでおり、隊員派遣数の累計は、アフリカ地域で第一位、全世界でもフィリピンに次いで第二位となっている。

4.マラウイにおける援助協調の現状と我が国の関与

 マラウイにおいては保健、教育、農業分野でセクター別に、財政管理、公共部門改革等の課題別にドナー会合が定期的に開催されている。保健と教育に関しては援助協調に関する枠組文書(MOU:Memorandum of Understanding)の準備がなされている。直接財政支援に関しては財政支援推進派(CABS:Common Approach to Budgetary Support)と称する4ドナー(英国、ノルウェー、スウェーデン及び欧州連合(EU:European Union))がIMFと世界銀行の動向を注視しつつ、停止と再開を繰り返しながら実施しているが、現在のところ、プロジェクト型の支援が中心である。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対マラウイ経済協力実績

表-6 諸外国の対マラウイ経済協力実績

表-7 国際機関の対マラウイ経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件

表-11 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



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