[35]ブルンジ

1.ブルンジの概要と開発課題

(1) 概要
 独立以来、多数派フツ族(85%)と少数派ツチ族(15%)の間で抗争が繰り返されてきたが、1993年6月に初のフツ族大統領として選出されたンダダイエ大統領が同年10月ツチ族主導の軍部により暗殺された事件を機に、犠牲者20万人以上といわれる内戦が勃発した。
 1996年7月の軍事クーデターによりツチ族のブヨヤ政権が誕生し、1998年以降、ニエレレ元タンザニア大統領のイニシアティブにより紛争当事者間の和平交渉が開始された。1999年12月のニエレレ大統領の死去後は、和平交渉の調停役はマンデラ前南アフリカ共和国大統領に引き継がれ、2000年8月には政府及び関係政党間でアルーシャ和平合意が署名された。これに基づき、2001年11月に暫定政権(36カ月)が発足し、前半18カ月の大統領にはツチ族のブヨヤ大統領が、後半18カ月の大統領にはフツ族のンダイゼイエ大統領が就任した。
 アルーシャ和平合意には反政府武装勢力4派が署名しなかったが、このうちの3派が2003年11月に停戦実施合意を暫定政府と署名し、国土の大部分に於ける武力抗争が停止した。しかし、残る反政府武力勢力一派(FNL ルクサ派)との停戦合意には至っていない。2004年11月暫定期間と6カ月間延長し、2005年4月までに議会・大統領選挙を実施することを予定している。
 経済面では、国内総所得(GDI:Gross Domestic Income)の約50%、労働人口の90%以上を農林漁業が占めており、伝統的自給自足農業が中心となっているが、93年の内戦勃発後は食糧援助に頼っている。資源の乏しい国土に高密度の人口を抱える中、長引く内戦の影響により、経済基盤が弱体化している。
(2) ブルンジ開発計画
 2003年11月に策定された暫定PRSP(I-PRSP:Interim Poverty Reduction Strategy Paper)の中で、ブルンジ政府は、(イ)グッド・ガバナンス及び(ロ)貧困削減を2つを主要な戦略と位置づけている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.ブルンジに対するODAの考え方

(1) ブルンジに対するODAの意義
 ブルンジでは資源の乏しい国土に高密度の人口を抱える中、内戦等により深刻な被害が生じているところ、ODAにより緊急人道支援や内戦後の国造りを支援することは、ODA大綱の重点課題の一つである「平和の構築」の観点から意義が大きい。同国では、政情不安のため国による十分な保護が期待できない中で、内戦や極度の貧困といった人間に対する直接の脅威が存在するところ、「人間の安全保障」の観点から支援を実施する必要がある。
 また、我が国が対アフリカ支援の柱の一つとして打ち出している「平和の定着」の文脈からも、同国の社会・経済開発の基盤を整えることにより大湖地域全体の安定を図ることは重要である。
(2) ブルンジに対するODAの基本方針
 1993年の内戦以降、同国の情勢が悪化したことから、我が国は、ブルンジに対して人道分野を中心に国連人権高等弁務官事務所(UNHCR:United Nations High Commissioner for Refugees)、世界食糧計画(WFP:World Food Programme)、赤十字国際委員会(ICRC:International Committee of the Red Cross)等国際機関を通じた支援を行い、二国間協力については中断していたが、1998年12月の政府承認以降、治安状況等同国の情勢に好転が見られたため、1999年9月に二国間経済協力の再開が決定され、国民に直接裨益効果の高い草の根・人間の安全保障無償資金協力を導入し、また技術協力として研修員受入を開始した。
 さらに、アフリカ開発会議(TICAD:Tokyo International Conference on African Development)プロセスやODA大綱でも重視している「人間の安全保障」の考えに基づき、2004年に入り、我が国は国連人間の安全保障基金を用いて、国連食糧農業機関(FAO:Food and Agriculture Organization of United Nations)等国際機関を通じた「帰還難民・国内避難民を始めとする貧困層に対する支援を通じた食糧安全保障の回復」に対する人道支援を行っている。なお、同国は拡大HIPCイニシアティブの適用国であることから当面の間、円借款供与は困難である。
 今後の二国間援助の実施については、同国の和平プロセスへの取り組み、治安の推移等を見極めつつ検討していくこととしている。なお、同国は拡大HIPCイニシアティブ適用国であることから当分の間、円借款の供与は困難である。
(3) 重点課題
 1993年の内戦以降は、国際機関等を通じた緊急人道支援、保健や農業など基礎生活分野での草の根、人間の安全保障無償資金協力や研修員の受入を実施している。

3.ブルンジに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のブルンジに対する無償資金協力は0.29億円(交換公文ベース、但しうち1.99億円は対ルワンダ・ブルンジ・タンザニア難民向け食糧援助合計額)、技術協力は0.14億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款33.00億円、無償資金協力131.25億円(以上、交換公文ベース)、技術協力7.47億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 WFPを通じて在ブルンジ・ルワンダ・タンザニア難民向け食糧援助を実施したほか、1件の草の根・人間の安全保障無償資金協力の供与を行った。
(3) 技術協力
 第三国研修(基礎保健や農業分野)を含む14名の研修員の受入を行った。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ブルンジ経済協力実績

表-6 諸外国の対ブルンジ経済協力実績

表-7 国際機関の対ブルンジ経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図


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