[34]ブルキナファソ

1.ブルキナファソの概要と開発課題

(1) 概要
 1987年にクーデターで政権についたコンパオレ現大統領は、民主化を進め、1991年、1997年の大統領選挙でも再選されている。こうした中、1998年には野党系ジャーナリストの怪死事件を契機に政治危機が生じたものの、同大統領は、野党との協力関係を構築するなどして事態の収拾を図り、その後安定的な政権運営を続けている。他方、2002年9月に隣国のコートジボワールで発生した危機は、同国と経済的な結びつきが強いブルキナファソに大きな影響を与えている。
 外交面では、非同盟を掲げているが、深刻な経済困難の中、開発を進めるために諸ドナーからの支援を必要としていることから、先進諸国との関係も重視し、良好な関係を維持している。
  経済面では、内陸国であり、また、サヘル地域に位置するため厳しい自然環境に置かれているが、国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)の約35%、労働人国の90%近くを農業・牧畜業が占めている。特に農産品輸出による収入、中でも綿花は輸出所得の約60%を占める重要部門である。
(2) 「貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)」
 ブルキナファソは2000年にサブサハラ・アフリカで2番目にPRSPを策定し、現在その具体的実施に努めている。このPRSPでは、均衡のとれた成長の加速、貧困層の社会サービスへのアクセス保障、貧困層の雇用増大及び所得創出機会創出、良い統治の推進の4つを戦略上の柱と位置づけている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.ブルキナファソに対するODAの考え方

(1) ブルキナファソに対するODAの意義
 ブルキナファソでは、2001年の1人当たりの国民総所得(GNI:Gross National Income)は220ドルに過ぎず、国連開発計画(UNDP:United Nations Development Programme)の人間開発指数で下位から3番目に位置しており、貧困問題の解決は最重要課題である。他方、不安定な国々を抱える西アフリカにあって、同国は民主化を進め、安定的な政権運営を続けている。また、PRSPを策定し、問題解決に鋭意取り組んでいる。さらには、1990年代初めより構造調整を積極的に進めており、その努力はドナー間で高く評価されている。
 世界最貧国の一つである同国に対する支援は、我が国のODA大綱の重点課題である「貧困削減」の観点から意義が大きく、また同国における極端な貧困が人間に対する直接の脅威となっていることから「人間の安全保障」の観点からも重要である。また、同国のオーナーシップに基づいた改革を支援することは、我が国が進めるアフリカ開発会議(TICAD:Tokyo International Conference on African Development)プロセスの中でも重要である。さらに同国は西アフリカの主要産業の一つである「綿花」の産出国であるが、近年の欧米諸国の国内綿花農家に対する補助金供与に起因する市場価格の高騰により、大きな経済的打撃を受けていることから、ベナン、チャド、マリの4カ国と共に、公正な市場取引を求めて綿花イニシアチブを推進している。我が国として貿易と開発に一貫して取り組む観点からも、同国への支援は重要である。
(2) ブルキナファソに対するODAの基本方針
 我が国は、ブルキナファソの貧困削減努力を支援するため、食糧援助や食糧増産援助、教育、水供給等の基礎生活分野の他、同国がサヘル地域という厳しい環境に置かれていることを踏まえて、農地や森林の保全等を図るための砂漠化防止分野での無償資金協力を実施している。また、同国の構造調整努力を支援するためのノン・プロジェクト無償資金協力を1999年度までに合計16億円供与している。さらに、人的資源分野等での研修員受け入れ、教育、環境分野での専門家派遣を実施している他、1998年10月には青年海外協力隊派遣取極の署名がなされ、2000年4月から隊員派遣が開始され、現在約45名の隊員が活動している。
 なお、同国は拡大HIPCイニシアティブの適用国であるため、当分の間、新規円借款供与は困難である。
(3) 重点分野
 ブルキナファソの厳しい貧困状況に鑑み、同国民の生活改善に直接寄与するものとして、教育、水、保健を中心とした協力を重視しているほか、同国土の北半分がサヘル地域に属し、深刻な砂漠化問題に直面していることから、砂漠化防止への支援も重点分野としている。

3.ブルキナファソに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のブルキナファソに対する無償資金協力は3.15億円(交換公文ベース)、技術協力は6.84億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力231.36億円(交換公文ベース)、技術協力41.18億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 同国の慢性的な食糧不足に対し、米の購入資金として3.5億円の食糧援助を実施したほか、草の根・人間の安全保障無償資金協力を3件実施している。
(3) 技術協力
 第三国研修を含む26名の研修員受け入れると共に、青年海外協力隊を派遣した。また、同国土の北半分がサヘル地域に属し、深刻な砂漠化問題に直面していることから、砂漠化防止策の支援の一環として、保存林区を保全し持続的な利用を可能にする森林管理計画「コモエ県森林管理計画調査」を実施している。さらに、ユニセフとのマルチ・バイ協力による医療特別機材供与として長期残効果蚊帳(約2,000万円)を供与した。

4.ブルキナファソにおける援助協調の現状と我が国の関与

 PRSPの策定を受けて、その実施の一環として援助協調を巡る動きが活発化している。既に世界銀行、欧州連合(EU:European Union)、フランス、ベルギー、オランダ、スイス、スウェーデン等のドナーが一般財政支援を実施している。また、教育分野におけるセクター・プログラムである「基礎教育10か年計画」の実施に対し、共通基金(コモンファンド)方式による財政支援が行われつつあり、既に世界銀行、カナダ、オランダ等がこれに参加している。我が国は、これまでのところ財政支援には参加していないが、こうした動きを注視している。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ブルキナファソ経済協力実績

表-6 諸外国の対ブルキナファソ経済協力実績

表-7 国際機関の対ブルキナファソ経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件

表-10 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



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