[30]トーゴ

1.トーゴの概要と開発課題

(1) 概要
 1967年のクーデターでエヤデマ大統領が権力を掌握して以来、独裁一党による政権運営であったが、1990年以降民主化の動きが国内外で高まった。1993年1月以降、同大統領を支持する軍の一部による妨害及び民主派への弾圧等が続き民主化プロセスが一時停滞したものの、1994年2月の国民議会選挙の結果、野党側が過半数の議席をおさえ、野党第二党のコジョー氏が首相に指名され、民主化への再度の歩みが始まった。しかしながら、1998年6月に実施された大統領選挙でエヤデマ大統領は再選されたものの、野党側は投票結果に操作があったとして抗議を行い、与野党間の政治的緊張が急速に高まる等、不安定な状況が続いていた。2002年12月、同大統領は大統領任期の憲法を改正して、2003年の大統領選挙に再度立候補することを可能にし、2003年6月に行われた大統領選挙では、エヤデマ大統領が当選し、大統領に就任した。
 外交面では、穏健な非同盟中立路線を基調としている。フランス・中国との関係は良好であるが、欧州連合(EU:European Union)・ドイツ・米国等の西側諸国ドナーが同国の民主化問題から、1993年以降、フランス以外の西側諸国ドナーは大規模な支援は凍結している。アフリカ域内では、紛争の平和的解決に貢献してきており、特に1999年中には西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS:Economic Community of WestAfrican States)議長国としてギニア・ビサウ紛争、シエラレオネ紛争の仲介の役割を積極的に果たすなど、西アフリカ地域の安定化に努力した。
 経済については、農業が労働人口の約70%、国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)の約40%を占める。燐鉱石・綿花・コーヒー・カカオの輸出が重要な外貨獲得手段であり、1970年代に一次産品の国際価格の上昇に伴い高度成長を遂げたが、1980年をピークにこれら一次産品価格は下落の一途をたどったこと、併せて1990年後半からの政治的混乱も加わり同国経済状況は悪化している。
 なお、トーゴ政府は、貧困削減文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)の策定作業を行っているが、未だ正式に策定されていない。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.トーゴに対するODAの考え方 

(1) トーゴに対するODAの意義
 トーゴは紛争の平和的解決等を通じて西アフリカ地域の安定化に積極的に貢献しており、内外から評価されている。他方、同国の経済基盤は一次産品の輸出に依存する脆弱なものであり、1980年代以降の一次産品価格の下落等により経済状況は悪化し、1人当たりの国民総所得(GNI:Gross National Income)は270ドル(2002年)に過ぎない。こうした問題に対する同国の取組をODAにより支援することは、ODA大綱の重点課題である「貧困削減」や「持続的成長」の観点からも意義が大きい。
(2) トーゴに対するODAの基本方針
 我が国は、基礎生活分野での支援や構造調整努力への支援を実施してきたが、1993年以降、反政府勢力・民主派への弾圧が多く見られたため、食糧援助や債務救済を除き、事実上二国間援助を停止していた。その後の民主化プロセスの再開により、1996年8月援助を再開することとした。ただし、同国の政情・治安が不安定であることから、現在、草の根・人間の安全保障無償資金協力や研修員受入を中心とした協力を行っている。今後の支援については、同国が民主化に向けて積極的に努力していることから、政治的安定性や援助受け入れ能力などを見極めつつ、検討していく。なお、トーゴは拡大重債務貧困国(HIPC)イニシアティブの対象国であることから、当分の間、新規円借款の供与は困難となっている。
(3) 重点分野
 これまで無償資金協力による食糧援助、食糧増産援助、水供給(井戸建設等)、保健(感染症対策等)など基礎生活分野での支援を実施しており、トーゴからも高く評価されている。

3.トーゴに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のトーゴに対する無償資金協力は0.09億円(交換公文ベース)、技術協力は0.34億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款93.46億円、無償資金協力132.15億円(以上、交換公文ベース)、技術協力6.99億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 草の根・人間の安全保障無償資金協力を1件供与した。
(3) 技術協力
 保健医療・農業・教育分野等で第三国研修を含め18名の研修員を受入れている。

4.トーゴにおける援助協調の現状と我が国の関与

 トーゴでは、フランス以外の国際機関及び西側ドナーは大規模な援助を実施していないことなどから、援助協調の動きはない。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対トーゴ経済協力実績

表-6 諸外国の対トーゴ経済協力実績

表-7 国際機関の対トーゴ経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



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