1) 概要
1990年に長年の内戦状態から脱したチャドは、デビー大統領の下で、1996年に複数政党制の下での大統領選挙、1997年には国民議会選挙を実施するなど民主化プロセスを安定的に推進させてきたが、2004年5月にクーデター未遂事件が発生、デビー大統領の三選及びそれを可能にする憲法改正に反対する動きなどの不安定要素がある。
また2003年からチャド東部のスーダン国境地帯にダルフール難民約20万人が流入しており、チャドの地域コミュニティは難民受入れに寛容であるものの、他方で、過酷な自然環境の中で国際社会から援助を受けている難民と、援助を享受できていないチャド地域住民との間に軋樂が生まれ、緊張関係が高まるという事態も生じている。
経済面では、1994年にCFAフランの切り下げ後は、実質経済成長率はプラス成長を続けている。2003年からチャド南部で石油施設が稼働しており、隣国カメルーン経由で石油を輸出している。
国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)による貧困削減経済成長ファシリティ(PRGF:Poverty Reduction and Growth Facility)は2004年1月で終了しており、現在は新規PRGFの可能性が検討されている。
(1) チャドに対するODAの意義
チャドでは国民所得が低く(2002年の1人当たりのGNPは220ドル)、人口の大半が1日1ドル以下で暮らしている。ODAによる支援を実施することでチャド人の生活環境改善に寄与しつつ、自助努力精神の浸透を図ることは、ODA大綱の重点課題の一つである「貧困削減」の観点から意義が大きい。また、そもそも貧しい東部地域ではスーダン難民を積極的に受け入れていることから、我が国として「平和の定着」や「人間の安全保障」の観点から支援する意義は大きい。
(2) チャドに対するODAの基本方針
チャドの政治・治安情勢、先方のニーズ、行政機構の援助受入能力を踏まえつつ、基礎生活分野や人造り分野を中心に援助を実施する。また、スーダン難民受入れ周辺コミュニティ支援として、水供給などの基礎生活分野や農村開発支援等を行っていく。なお、同国は拡大HIPC対象国であるところ、当分の間、新規円借款の供与は困難である。
(3) 重点分野
これまでチャドに対する支援は緊急援助及び農業、社会基盤、保健や開発と女性等の分野での研修生受入に止まっていたが、同国における民主化等の進展にかんがみ、2001年から草の根無償の導入を決定し、これまでに1件実施している。
(1) 総論
2003年度のチャドに対する無償資金協力は0.05億円(交換公文ベース)、技術協力は0.18億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力11.70億円(交換公文ベース)、技術協力2.16億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
草の根・人間の安全保障無償資金協力を1件供与している。
(3) 技術協力
農産品加工、保健医療などの分野における第三国研修を含む15名の研修員の受入を行った。