(1) 概要
1969年以来、政権の座にあったバレ政権が反政府勢力の攻勢により、1991年11月に崩壊し、反政府勢力の一つである統一ソマリア会議(USC:United Somali Congress)が暫定政権樹立を宣言した。しかし、同政権も実質的な機能を果たさないまま、ソマリアは無政府状態に陥った。
内戦による極度の治安悪化と干ばつにより中・南部を中心に深刻な飢餓が発生したことに対し、国連は、1992年4月に国連ソマリア活動(UNOSOM:UN Operation in Somalia)を設立し、続く12月には人道援助実施の安全を確保するために米国を中心とする多国籍軍(UNITAF:United Task Force)が派遣され、更に人道援助のための安全な環境の確保を目的として、1993年4月に第2次国連ソマリア活動(UNOSOMII:UN Operation in Somalia II)の活動が開始されたが、1995年4月には撤退を余儀なくされた。エチオピア、エジプト等の近隣諸国による和平仲介努力も継続的に試みられたが、和平合意には至らなかった。
2000年には、ジブチのイニシアチブにより開催された「アルタ和平会議」により、8月には暫定国民議会が発足し、アブディカシム・サラ・ハッサン暫定大統領が選出され、同10月には、ガライア暫定首相を中心とする暫定政府が発足した。しかし、反暫定政府勢力はこれに反発し、暫定政府に対する統一戦線を形成し、武力闘争は激化した。このような状況を打開するため、2002年1月に行われた政府間開発機構(IGAD:Inter-Governmental Authority on Development)閣僚・首脳会議において、ケニア、エチオピア、ジブチなどの隣国が協力し、同年10月中旬、ケニアにおいて国民和解会議が開会、同月下旬には停戦合意が成立したが、その後も各派民兵による局地的な戦闘行為は続いている。
2004年に入り、ようやく新政権樹立の兆しが見え始め、1月29日には、IGAD主導の下、改正暫定連邦憲章が採択された。その後、暫定連邦議会議員の選出を経て、2004年10月にはアブドゥッラヒ・ユスフ暫定連邦政府大統領が選出されるに至った。
ソマリアの主要産業は牧畜及び農業であるが、外貨獲得手段として水産資源の開発が期待される。しかしながら、1991年1月以降の内戦により国内のインフラが著しく破壊され、経済基盤は壊滅的な打撃を受けているほか、干ばつにより2002年には中南部を中心として大規模な飢饉が発生し、150万人以上が生命の危機に瀕した。内戦により国外からの援助は人道的なものを除き全て停止されているが、その人道援助についても内戦による治安の悪化等により実施が困難な状況である。