[26]ソマリア

1.ソマリアの概要と開発課題

(1) 概要
 1969年以来、政権の座にあったバレ政権が反政府勢力の攻勢により、1991年11月に崩壊し、反政府勢力の一つである統一ソマリア会議(USC:United Somali Congress)が暫定政権樹立を宣言した。しかし、同政権も実質的な機能を果たさないまま、ソマリアは無政府状態に陥った。
 内戦による極度の治安悪化と干ばつにより中・南部を中心に深刻な飢餓が発生したことに対し、国連は、1992年4月に国連ソマリア活動(UNOSOM:UN Operation in Somalia)を設立し、続く12月には人道援助実施の安全を確保するために米国を中心とする多国籍軍(UNITAF:United Task Force)が派遣され、更に人道援助のための安全な環境の確保を目的として、1993年4月に第2次国連ソマリア活動(UNOSOMII:UN Operation in Somalia II)の活動が開始されたが、1995年4月には撤退を余儀なくされた。エチオピア、エジプト等の近隣諸国による和平仲介努力も継続的に試みられたが、和平合意には至らなかった。
 2000年には、ジブチのイニシアチブにより開催された「アルタ和平会議」により、8月には暫定国民議会が発足し、アブディカシム・サラ・ハッサン暫定大統領が選出され、同10月には、ガライア暫定首相を中心とする暫定政府が発足した。しかし、反暫定政府勢力はこれに反発し、暫定政府に対する統一戦線を形成し、武力闘争は激化した。このような状況を打開するため、2002年1月に行われた政府間開発機構(IGAD:Inter-Governmental Authority on Development)閣僚・首脳会議において、ケニア、エチオピア、ジブチなどの隣国が協力し、同年10月中旬、ケニアにおいて国民和解会議が開会、同月下旬には停戦合意が成立したが、その後も各派民兵による局地的な戦闘行為は続いている。
 2004年に入り、ようやく新政権樹立の兆しが見え始め、1月29日には、IGAD主導の下、改正暫定連邦憲章が採択された。その後、暫定連邦議会議員の選出を経て、2004年10月にはアブドゥッラヒ・ユスフ暫定連邦政府大統領が選出されるに至った。
 ソマリアの主要産業は牧畜及び農業であるが、外貨獲得手段として水産資源の開発が期待される。しかしながら、1991年1月以降の内戦により国内のインフラが著しく破壊され、経済基盤は壊滅的な打撃を受けているほか、干ばつにより2002年には中南部を中心として大規模な飢饉が発生し、150万人以上が生命の危機に瀕した。内戦により国外からの援助は人道的なものを除き全て停止されているが、その人道援助についても内戦による治安の悪化等により実施が困難な状況である。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.ソマリアに対するODAの考え方

(1) ソマリアに対するODAの意義
 ソマリアでは内戦や干ばつに起因する飢餓により難民や避難民が発生している。内戦によって発生した難民に対して緊急人道援助を行い、また、紛争終結後の平和の定着や国造りのための支援を実施することは、ODA大綱の重点課題の一つである「平和の定着」の観点から意義が大きい。また、これらの難民等は正に人間に対する直接的な脅威に直面していることから、ODAを活用してこれら難民等に対する支援を実施していくことは「人間の安全保障」の観点からも重要である。
(2) ソマリアに対するODAの基本方針
 現在、ソマリアには我が国が承認する政府は存在せず、二国間援助は停止中であるが、内戦や干ばつによる飢餓に直面する難民等に対する援助として、1992年以降世界食糧計画(WFP:World Food Programme)経由の食糧援助、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:The Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)への拠出などの人道支援に加えて、国連児童基金(UNICEF:United Nations Children's Fund)を通じて女性や若年者などの社会的弱者のエンパワメントを目的とした初等教育支援を実施してきている。
 なお、ソマリアにおける中長期的な援助については、和解会議が進捗し、正当性のある政府が樹立された暁には、ソマリア側の援助受入体制の整備、治安状況の回復等の状況を見極めつつ、社会開発のための二国間援助の再開について検討する。
(3) 重点分野
 我が国が実施してきている支援は、当面は、被災民に対する緊急支援や女性、若年層など社会的弱者のエンパワメントを中心としている。

3.ソマリアに対する2003年度ODA実績

 2003年度のソマリアに対する援助実績はない。2003年度までの我が国の援助実績では、円借款64.70億円、無償資金協力176.67億円(以上、交換公文ベース)、技術協力8.68億円(JICA経費実績ベース)の協力である。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ソマリア経済協力実績

表-6 諸外国の対ソマリア経済協力実績

表-7 国際機関の対ソマリア経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細


プロジェクト所在図


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