(1) 概要
独立以来、社会党政権の下で内政面で極めて高い安定を維持して、既に1976年に複数政党制を導入しており、アフリカの中では最も民主化の進んだ国の一つである。2000年3月の大統領選挙では、変革を求める若年層の支持を背景にワッド・セネガル民主党党首がディウフ大統領(当時)を破り大統領に当選したが、平和裡に政権交代が行われたことで、セネガルにおける民主主義の定着を内外に印象付けた。
20年来の内政上の重要問題となっている南部カザマンス地方の分離独立問題を巡っては、政府と反政府勢力の「カザマンス民主解放運動(MFDC:Movement of Democratic Forces of Casamance)」との間で和平合意に向けての協議が行われた結果、2004年末に政府とMFPC間で和平合意が署名された。しかしながら、MFDC内部では対立があり、強硬派によるゲリラ活動の散発の可能性、未だ不安定要因は存在している。
外交面では、旧宗主国フランスとの協調を基軸としつつも、多くの先進国とも友好関係を構築し、穏健な現実路線外交を基本としている。また、第三世界との関係も強く、特にアラブ諸国及びイスラム諸国とは伝統的に緊密な関係を有している。また、国際機関、とりわけアフリカ連合(AU:African Union)、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS:Economic Community of West African States)といったアフリカ地域機関へも積極的に関与しており、コートジボワール及びリベリアの平和部隊に軍事要員を派遣中である。
経済は、落花生栽培などの農業が主要産業であり、農業に就労人口の約50%が従事している。他方、農業が国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)比に占める割合は僅か10%程度と見られており、GDP比の上では、その割合が60%を越えている商業、観光業、情報通信サービス業などの第三次産業がセネガル経済の主力となりつつある。セネガルの経済は一次産品価格の低迷等により、財政赤字、国際収支赤字が恒常化していたが、1994年の通貨切り下げを景気に一気に復調し、その後も緊縮財政、構造調整、民営化等に努めている。
(2) 貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)
セネガルでの貧困削減文書(PRSP)は2002年11月に作成された(同年12月に世界銀行・国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)により支持を得た)。PRSPは、2003~05年の3年間を対象としており、富の創出、
基本的社会サービスに関するキャパシティビルディングの推進、
弱者グループの生活条件の向上、
運営・執行の分権化に基づいた参加型のモニタリング・評価アプローチが4本の柱となっている。
貧困削減のための優先目標として、強力でバランスのとれた成長の下、2015年までに一人当たり収入を倍増させる、
国家の人的資本を強化するため、基礎的インフラの確立を通じて、2010年までに必要不可欠な社会サービスへアクセスを普及させる、
2015年までに国内のあらゆる形態の排除を取り除き、特に初等・中等教育における男女の平等を確保することの3つを掲げている。
現在、PRSPに沿った形で様々な分野(税制改革、投資・輸出促進、民間セクター支援システム、地方分権、財政・国際収支バランス、財政管理、司法システム再構築)で経済構造改善努力がなされている。同取組に対しては、世界銀行・IMFが定期的にレビューを行っており、PRSPの進捗状況に対する評価は概ね良好である。