[25]セネガル

1.セネガルの概要と開発課題

(1) 概要
 独立以来、社会党政権の下で内政面で極めて高い安定を維持して、既に1976年に複数政党制を導入しており、アフリカの中では最も民主化の進んだ国の一つである。2000年3月の大統領選挙では、変革を求める若年層の支持を背景にワッド・セネガル民主党党首がディウフ大統領(当時)を破り大統領に当選したが、平和裡に政権交代が行われたことで、セネガルにおける民主主義の定着を内外に印象付けた。
 20年来の内政上の重要問題となっている南部カザマンス地方の分離独立問題を巡っては、政府と反政府勢力の「カザマンス民主解放運動(MFDC:Movement of Democratic Forces of Casamance)」との間で和平合意に向けての協議が行われた結果、2004年末に政府とMFPC間で和平合意が署名された。しかしながら、MFDC内部では対立があり、強硬派によるゲリラ活動の散発の可能性、未だ不安定要因は存在している。
 外交面では、旧宗主国フランスとの協調を基軸としつつも、多くの先進国とも友好関係を構築し、穏健な現実路線外交を基本としている。また、第三世界との関係も強く、特にアラブ諸国及びイスラム諸国とは伝統的に緊密な関係を有している。また、国際機関、とりわけアフリカ連合(AU:African Union)、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS:Economic Community of West African States)といったアフリカ地域機関へも積極的に関与しており、コートジボワール及びリベリアの平和部隊に軍事要員を派遣中である。
 経済は、落花生栽培などの農業が主要産業であり、農業に就労人口の約50%が従事している。他方、農業が国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)比に占める割合は僅か10%程度と見られており、GDP比の上では、その割合が60%を越えている商業、観光業、情報通信サービス業などの第三次産業がセネガル経済の主力となりつつある。セネガルの経済は一次産品価格の低迷等により、財政赤字、国際収支赤字が恒常化していたが、1994年の通貨切り下げを景気に一気に復調し、その後も緊縮財政、構造調整、民営化等に努めている。
(2) 貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)
 セネガルでの貧困削減文書(PRSP)は2002年11月に作成された(同年12月に世界銀行・国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)により支持を得た)。PRSPは、2003~05年の3年間を対象としており、1富の創出、2基本的社会サービスに関するキャパシティビルディングの推進、3弱者グループの生活条件の向上、4運営・執行の分権化に基づいた参加型のモニタリング・評価アプローチが4本の柱となっている。
 貧困削減のための優先目標として、1強力でバランスのとれた成長の下、2015年までに一人当たり収入を倍増させる、2国家の人的資本を強化するため、基礎的インフラの確立を通じて、2010年までに必要不可欠な社会サービスへアクセスを普及させる、32015年までに国内のあらゆる形態の排除を取り除き、特に初等・中等教育における男女の平等を確保することの3つを掲げている。
 現在、PRSPに沿った形で様々な分野(税制改革、投資・輸出促進、民間セクター支援システム、地方分権、財政・国際収支バランス、財政管理、司法システム再構築)で経済構造改善努力がなされている。同取組に対しては、世界銀行・IMFが定期的にレビューを行っており、PRSPの進捗状況に対する評価は概ね良好である。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.セネガルに対するODAの考え方

(1) セネガルに対するODAの意義
 セネガルは西アフリカの中心国の一つであるとともにアフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD:New Partnership for Africa's Development)主要国の一つでもある。1976年以来複数政党制をとってきているなど政情も極めて安定しており、世界銀行・IMFの支援の下、構造調整や経済改革にも積極的に取り組んでいる。また、極めて親日的で、我が国と良好な二国間関係を有する。他方、同国は人口増加率の高さ、砂漠化など多くの開発課題を抱えているところ、こうした問題に対する同国の取組をODAにより支援することは、ODA大綱の重点課題である「貧困削減」等の観点からも意義が大きい。
(2) セネガルに対するODAの基本方針
 我が国は、セネガルに対して、基礎生活分野等を中心に幅広く無償資金協力及び技術協力を実施してきているほか、その構造調整努力を支援するため、2003年度までに合計121億円の円借款及び合計144億円のノン・プロジェクト無償資金協力を供与している。ただし、セネガルは拡大重債務貧困国(HIPC)イニシアティブの適用国であることから、当分の間、新規円借款の供与は困難となっている。
(3) 重点分野
 2000年6月のプロジェクト確認調査におけるセネガル側との政策対話や現地ODAタスクフォースとの間で行われた政策協議の結果、1水供給、2教育、3人的資源開発、4保健医療、5環境(砂漠化防止)、6農業、7水産業、8インフラの8分野を対セネガル援助の重点分野と位置付けており、これらの重点分野を中心に裨益効果の高い案件を発掘・実施していくとともに、様々な経済協力スキームの効果的な組み合わせ・投入を目指している。

3.セネガルに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のセネガルに対する無償資金協力は34.39億円(交換公文ベース)、技術協力は17.68億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款145.60億円、無償資金協力866.56億円(交換公文ベース)、技術協力226.51億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 南南協力の一環として第三国研修の拠点としても利用されている「職業訓練センター拡充計画」を行ったほか、保健医療分野では、診療施設整備などを目的とした「国立保健衛生・社会開発学校整備計画」、食糧援助(2.5億円)、食糧増産援助(2.71億円)などを実施している。
(3) 技術協力
 開発調査として、同国の基幹産業である漁業振興のため「漁業資源評価・管理計画」や環境保全(砂漠化防止)を目的とした「マングローブの持続的管理」、就学前児童(0-6歳)の生活環境全般に係る改善計画(M/P:Master Plan)を策定する「子供の生活改善計画」を実施している。また、技術協力プロジェクトとして、農村開発分野では「安全な水とコミュニティ活動支援計画」や「総合村落林業開発計画」、人材育成分野では「保健人材開発促進」を実施している。

4.セネガルにおける援助協調の現状と我が国の関与

 セネガルにおいては、各主要分野毎にドナー会合が開催されている。現在、当地で最も援助協調が進んでいる分野は、教育及び保健分野であり、我が方からも現地ODAタスクフォースのメンバーが定期的に会合に参加している。また、最近では、カザマンス地域復興支援や財政支援に関するテーマ別のドナー会合も頻繁に開催されている。現地ODAタスクフォースにおいても、可能な限りメンバーが主要なドナー会合に参加するよう心掛けており、ドナー間での情報共有、意見交換等に努めている。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対セネガル経済協力実績

表-6 諸外国の対セネガル経済協力実績

表-7 国際機関の対セネガル経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件

表-11 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



前ページへ  次ページへ