(1) 概要
1980年の独立以来、ムガベ大統領が政権運営に当たり、1987年に野党第一党を吸収合併した「ジンバブエ・アフリカ国民同盟・愛国戦線(ZANU-PF:Zimbabwe African National Union-Patriotic Front)」が事実上の単独政党として国政を運営してきた。一方、経済悪化が表面化した1999年に、労組を母体とする野党「民主改革運動(MDC:Movement for Democratic Change)」が結成され、2000年6月の議会選挙の結果議席は伯仲し、ジンバブエは二大政党制へと大きく移行することとなった。2002年3月に実施された大統領選挙では、ムガベ大統領が4選を果たしたものの、「自由かつ公正な選挙」が行われなかったとして国内外の批判を浴びるとともに、これを機に与野党間の対立が発生している。
独立以来の重要な課題であった土地改革については。2000年から白人所有の大農場を強制収用し、共同農場で働く黒人に再配分する「ファスト・トラック」が開始された。2002年8月に政府は土地改革の成功を宣言したが、当初の目標を大幅に上回る1,400万ヘクタールの土地が強制収用され、現在も続いている。収用プロセスの適正さが問題となっているほか、十分なインフラ整備を行わないままに再配分されたため、農業生産が落ち込み、食料危機、外貨払底等ジンバブエ経済及び国民生活に深刻な影響をもたらしている。
外交面では、2002年の大統領選挙の在り方を巡って国際社会の批判を招き、欧州連合(EU:European Union)、米等から制裁を課されているほか、土地改革を巡っても国際社会の批判を集めている中、2003年12月には英連邦を脱退するなど国際社会からの孤立を深めている。こうした背景から、主要ドナー国のほとんどが、人道的援助を除き政府間経済協力を停止している。国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)は、ジンバブエの債務支払いが滞り、成長へ向けた適切な経済運営も行われていないことから同国の強制脱退手続に入っている(現在は猶予されている)。
経済面では、ジンバブエは豊富な鉱物資源に恵まれ、アフリカの中では社会インフラが比較的整備され、農業、製造業及び鉱業が比較的バランス良く発達していたが、土地改革に伴う政治的・社会的混乱や干ばつ被害等から、かつて「アフリカの穀物庫」と呼ばれたジンバブエの農業は深刻な影響を受け、2003年には国民の約半数にあたる500万人が国際社会からの食料援助に依存するに至った。
また、外貨収入源であるタバコ等の生産が落ち込んだことから、外貨が払底し、燃料、電気、機械・部品、生産設備の輸入が困難となり、製造業、鉱工業にも大きな影響をももたらした。土地強制収用に起因する危機的状況の下、過去4年間に国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)は約30%落ち込み、失業率は70%を超える等、経済活動、国民生活に大きな困難が生じている。