[18]ザンビア

1.ザンビアの概要と開発課題

(1) 概要
 1991年10月、初の複数政党制による大統領選挙が行われ、チルバ複数政党民主主義運動(MMD:Movement for Multiparty Democracy)党首(当時)がカウンダ大統領に圧勝した。政権交替は円滑に行われ、アフリカにおける民主化の成功例として評価された。チルバ政権時代には、構造調整による経済再建への積極的な取組が見られたが、軍内部によるクーデター未遂事件があり、政権全般に及ぶ不正・汚職問題も指摘された。2002年1月に就任したムワナワサ大統領は、チルバ前政権時代の不正追求、汚職追放、産業構造改革に取り組んでいる。
 外交面では、自国の経済建設を最優先とする前政権の実利的な外交路線が継承される一方で、アンゴラ和平プロセスにおける仲介や、モザンビーク、ルワンダ等への国連平和維持活動(PKO:Peacekeeping Operations)の派遣、コンゴ民主共和国の停戦協定取りまとめ等、地域の安定化のための外交努力は国際社会からも高い評価を得ている。
 経済面では、銅の国際価格上昇を受け、銅の産出量は2003年から増加したほか、主食であるメイズを中心とする農業生産も2003年は収穫量が倍増し、経済成長は4%の伸びを達成した。ムワナワサ政権では、銅依存の経済構造からの脱却を図るため、肥沃な未開拓可耕地の開拓を通じた農業生産性の向上を目指すとともに、潜在的な観光資源を活かした観光収入の向上を中心とする産業構造改革に取り組んでいるが、他方で、国民総所得(GNI:Gross National Income)(2003年に約40億ドル)よりも大きな対外債務(2003年末で約52億ドル)、行政府機能の非効率等の問題を抱えている。
(2) 「ザンビア貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)」
 ザンビアPRSPは、2002年5月に策定され、同年6月に世界銀行理事会に支持された。同文書の概要は(イ)~(ハ)のとおりである。また、同年には当面(2002~2006年)の国家開発計画(TNDP:Transitional National Development Plan)も策定されている。
(イ) PRSPは土台のしっかりした持続的な高い経済成長の達成や経済の多様化、社会サービスと公共サービスへのアクセスと質の改善(保健、教育、給水、衛生の強化)を目標としており、同時に貧困やエイズ、男女平等、環境などの問題にも言及している。
(ロ) 政府はPRSPを通して民間部門の発展を奨励し、社会・公共サービスを改善することにより、貧困削減と高い経済成長を達成することを求めている。
(ハ) 貧困層の多くが農村部に居住していることから、PRSPでは主に農業、観光、農業加工品、小規模鉱業(宝石類)、インフラ整備の推進が重要であると述べられており、政府は経済活動のためのインフラ整備を推進することとされている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.ザンビアに対するODAの考え方

(1) ザンビアに対するODAの意義
 ザンビアは、南部アフリカ開発共同体(SADC:Southern African Development Community)や東・南部アフリカ共同市場(COMESA:Common Market for Eastern and Southern Africa)等地域協力機構における中心的メンバーの一つであり、南部アフリカ地域において指導的立場にあり、地域の平和と安定に積極的な貢献を行っている。また、銅、コバルト等鉱物資源の供給国として我が国にとって重要である。
 ザンビアは1人当たりの国民所得が低く(2003年のGNIは380ドル)、また、銅とコバルトに依存する典型的なモノカルチャーであることから、同国が世界銀行・国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)の支援の下で金融関連規制の自由化、公営企業の民営化、各種価格統制の廃止等の構造調整を推進していることも踏まえ、基礎生活分野や経済再建に資する援助を実施することは、ODA大綱の重点課題である「貧困削減」と「持続的成長」の観点から意義が大きい。
(2) ザンビアに対するODAの基本方針
 これまで、基礎生活分野や経済再建に資する援助を中心に無償資金協力、技術協力及び円借款による援助を実施してきている。援助の実施に際しては、ザンビア政府のオーナーシップを尊重するとともに、より一層の質の向上と効率化を図る。
 ザンビアは拡大HIPCイニシアティブの適用国であることから、当分の間、新規円借款の供与は困難であり、ザンビアに対する今後の支援は、無償資金協力及び技術協力を中心とした協力を行っていく方針である。
(3) 重点分野
 2000年10月に策定された対ザンビア国別援助計画では次の5分野を重点分野として支援を行うこととされており、これらの重点課題は2004年8月に実施された現地ODAタスクフォースとザンビア側との政策協議においても確認された。
(イ) 農村開発を中心とする貧困対策への支援
 貧困地域における効果的な小農支援の実施。
(ロ) 費用対効果の高い保健医療サービスの充実
 HIV/AIDSの検査体制の強化、自発的カウンセリング及び検査(VCT:Voluntary Counseling and Testing)センターの強化、また、人々の保健治療へのアクセスの向上としてプライマリ・ヘルス・ケアの拡充。
(ハ) 均衡のとれた経済構造改革努力への支援
 経済活動活性化のためのインフラ整備。また、外貨収入源として可能性の高い観光分野への支援についても検討。
(ニ) 自立発展に向けた人材育成
 セクター・プログラムの実施について協力。特に青年海外協力隊やシニアボランティアなどの派遣により実施してきた理数科教育の改善の推進。
(ホ) 域内相互協力の促進

3.ザンビアに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のザンビアに対する無償資金協力は18.64億円(交換公文ベース)、技術協力は16.19億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款494.97億円、無償資金協力897.48億円(以上、交換公文ベース)、技術協力377.41億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 保健・医療、インフラ等の分野に対して協力を実施するとともに、食糧援助を実施した。特に、道路分野では、2001年度より実施してきたルサカ市内の第二次道路整備(延長30.7km)が2004年1月に竣工を迎えた。
(3) 技術協力
 保健・医療分野及び農業分野で技術協力プロジェクトを実施しているほか、保健・医療、農業、教育等の分野において、専門家派遣、研修員受入れ、青年海外協力隊派遣等による協力を実施した。また、HIV/AIDS対策やマラリア対策等を目的とした医療機材の供与を行った。

4.ザンビアにおける援助協調の現状と我が国の関与

 ザンビアは、政府のオーナーシップのもと保健、農業、道路、教育の各分野においてドナー会合が定期的に実施されるなど、援助協調が進展している。援助の手続調和化に関しても進んでおり、我が国も2004年6月に調和化(HIP:Harmonization in Practice)に関する覚書に署名した。
 保健と教育に関しては援助協調に関する枠組文書に各国が署名しているが、我が国や米国国際開発庁(USAID:United States Agency for International Development)等は署名していない。現在、同文書の見直し作業が進められており、我が国としての対応を検討中である。
 英国国際開発省(DFID:Department for International Development)やヨーロッパ連合(EU:European Union)を中心に直接財政支援及びセクター財政支援が実施されており、全体としてプロジェクト型支援から財政支援への移行が進みつつある。

 5.留意点

 対ザンビアODAの実施に際しては、2006年度に予定されている大統領選挙へ向けての動向に留意する必要がある。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ザンビア経済協力実績

表-6 諸外国の対ザンビア経済協力実績

表-7 国際機関の対ザンビア経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図


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