[16]コンゴ民主共和国

1.コンゴ民主共和国の概要と開発課題

(1) 概要
 1997年5月、ローラン・デジレ・カビラ議長率いるコンゴ・ザイール解放民主勢力同盟(ADFL:Alliance of Democratic Forces for the Ciberation of Congo)は首都キンシャサを制圧し、この結果、同議長が大統領に就任し、国名をザイール共和国からコンゴ民主共和国に変更した。しかし、1998年8月初めに、再度、同国東部地域で反政府勢力が武装蜂起し、ルワンダやウガンダ等周辺国が介入した複雑な国際紛争に発展した。1999年8月に紛争当事国間で停戦合意が成立したが、その後も断続的に戦闘が行われ、不安定な状態が続いた。2001年1月、カビラ大統領が殺害され、息子のジョゼフ・カビラ将軍が新大統領に就任すると、同大統領の下で国内和平交渉(国民対話)が進展し、2002年12月プレトリア包括和平合意が成立、2003年6月に金紛争当事者が参加しての暫定政権(2年間)が発足した。今後、2005年6月を目標に国民議会選挙・大統領選挙を実施し、独立後初の民主的政権への移行を予定しているが、2004年3月及び6月には首都キンシャサでクーデター未遂事件や6月には国連コンゴ民主共和国ミッション(MONUC)に対する暴動が起きるなど東部地域での治安も完全に回復しているとはいえず、不安定要因が残っている。
 外交面では、南部アフリカ開発共同体(SADC:Southern African Development Community)、中部アフリカ諸国経済共同体(CEEAC:Economic Commuunity of Central African States)諸国との友好を掲げ、敵対していたルワンダ、ウガンダとの関係改善にも意欲的であり、西側諸国の支援も本格化しつつある。
 経済面では、基本的に銅、コバルト、ダイヤモンド、石油、木材等の輸出により外貨収入を得ている。1970年代末期以降、銅価格の低迷等により経済困難に直面しており、1991年来のモブツ政権末期の情勢混乱、1996年から1997年5月のカビラ政権誕生に至るまでの紛争、1998年8月からの紛争等で経済インフラは大きな被害を受け、後退した。1999年より、国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)、西側諸国等の支援もあり、為替相場の安定、インフレの抑制にも成果が見られている。2003年12月にはパリにおいて支援国会合が開催され、大湖地域における同国の安定の重要性から国際社会の関心も高く、各国ドナーから予期した以上の支援表明がなされた。2004年11月にも、首都キンシャサにて同様の支援国会合が行われた。
 我が国は、コンゴ民主共和国から原油、コバルト、銅等を輸入し(2002年輸入額38.93億円)、自動車等を輸出している(同輸出額15.37億円)。
(2) 貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)
 コンゴ民主共和国は、拡大重債務貧困国(HIPC)イニシアティブの適用を受けるに当たり、貧困削減戦略文書(PRSP)を作成し、2002年6月に暫定版(I-PRSP)の策定を完了し、現在、最終版(F-PRSP)を策定中である。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.コンゴ民主共和国に対する我が国のODAの考え方

(1) コンゴ民主共和国に対するODAの意義
 コンゴ民主共和国は、1970年代末以降の経済的困難に加えて、1991年の内乱以降の紛争や政情不安により経済は壊滅状態となり、一人当たりのGNIは90ドル(2002年)に過ぎない。現政権が民主化プロセスの推進と経済再建に向けた努力を継続してきていることも踏まえ、同国の社会・経済開発をODAにより支援することは、ODA大綱の重点課題である「貧困削減」と「平和の定着」の観点からも意義が大きい。
(2) コンゴ民主共和国に対するODAの基本方針
 我が国は、かつては同国に対し、円借款、無償資金協力及び技術協力の各形態において二国間援助を実施していたが、1991年9月の暴動発生以来、二国間援助は、草の根・人間の安全保障無償資金協力を除き原則として中断されていた。今後、和平プロセスの進展や治安情勢等を見極めつつ、二国間援助の可能性を検討する。ただし、コンゴ民主共和国は拡大HIPCイニシアティブの適用国であることから、当分の間新規円借款の供与は困難である。
 他方、2000年度から連続して国連児童基金(UNICEF:United Nations Children’s Fund)を通じたポリオ等の予防接種の実施のための協力や、人道的観点からの緊急無償資金協力、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:The Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)を通じた拠出、世界食糧計画(WFP:World Food Programme)経由の食糧援助等、国際機関を通じた支援を積極的に行っている。
 また、同国で2005年7月に予定されている選挙プロセス支援が主要援助国・機関の主要課題となっており、我が国の支援の可能性を検討している。
(3) 重点分野
 1991年9月の暴動発生以来、原則として草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じた二国間援助と国際機関を通じた援助のみを行っている状況であり、保健・医療分野での支援や緊急食糧援助を中心に支援を行っている。また、2003年には平和構築の一環として兵士の動員解除・社会復帰(DDR:Disarmament, Demobilization and Reintegration)支援を実施している。

3.コンゴ民主共和国に対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のコンゴ民主共和国に対する無償資金協力は10.52億円(交換公文ベース)、技術協力は0.11億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款355.96億円、無償資金協力281.21億円(以上、交換公文ベース)、技術協力66.10億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 2003年度には、同国の厳しい食糧事情に鑑み、米の購入資金として3億円の食糧援助を実施したほか、国連開発計画(UNDP:United Nations Development Programme)を通じたDDRプログラムの実施に4.08億円の無償資金協力やUNCEF経由で「小児感染症予防計画」(2.97億円)を実施した。また、草の根・人間の安全保障無償資金協力も13件供与している。
(3) 技術協力
 保健医療や社会福祉分野で5名の研修員の受け入れを行った。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対コンゴ民主共和国経済協力実績

表-6 諸外国の対コンゴ民主共和国経済協力実績

表-7 国際機関の対コンゴ民主共和国経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



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