[13]コートジボワール

1.コートジボワールの概要と開発課題

(1) 概要
 コートジボワールでは、1999年のクーデターと2000年の大統領選挙を経て、翌2001年バグボ政権が誕生した。同政権の下で順調に民主化プロセスが進むかに思われたが、2002年9月、一部軍隊が武装蜂起し、国土の約4割に当たる北部・西部地域を反乱軍グループが占領・支配するに至った。
 2003年1月旧宗主国フランスのイニシアチブによりいわゆる「マルクシ」合意が得られ、3月に全勢力が参加した国民和解政府が樹立され、また、この合意の適用を促進させるべく、5月には国連コートジボワールミッション(MINICI)が設置された。しかし、「マルクシ」合意の適用は必ずしも順調に進んでおらず、今後の和平プロセスの進展が再び危惧されている。
 経済面では、コートジボワールは、西アフリカ経済・通貨同盟(UEMOA:West African Monetary & Economic Union)8カ国の国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)の約40%を占めるなど、経済面において西アフリカの牽引的役割を果たしている。
 同国の基幹産業は農業であり、GDPの26%、輸出総額の約60%、農業就業人口は労働人口の68%を占める。主な農業産品は、コーヒー(2003生産量世界7位)、カカオ(2003生産量世界1位:全世界の約40%)である。この他、主な輸出産品として、石油製品(近年急激に増加)、木材などがある。
 1970年代にカカオにより潤った経済は、1980年代以降の国際価格の低迷、膨大な対外債務により経済的危機に陥り、1989年から、国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)・世界銀行の下で構造調整計画を開始した。しかし、経済改善策が不十分であるとしてIMFの融資が停止され、ガバナンス問題によるEUの援助停止、1999年のクーデター発生に伴う他の主要ドナーの援助凍結等によって再び経済状況は悪化した。2002年には民主化プロセスの進展に伴い、世界銀行、IMF、欧州連合(EU:European Union)等が援助の再開を決定したものの、同年9月に発生した危機により国土が二分されることとなり、経済活動は大きな制約を受けている。開発援助も緊急人道支援を除き大幅に縮小されている。
(2) 開発基本計画
(イ) 貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)については、コートジボワールの開発基本計画となるべく策定作業が進んでいたが、2002年9月の危機により、完成直前で中断を余儀なくされた。現在、水面下でPRSP策定再開準備が進められているものの、当面、策定作業再開の目途は立っていない。2002年9月時点の重点取組事項は次のとおりとなっている。
 1 力強く持続的な経済成長、貧困者を対象とした財政分野の強化
 2 富と雇用を創出する観点からの農村開発、民間セクター、経済構造の強化
 3 公共サービスへの公平なアクセス及びその質の改善、環境保全、弱者・女性の参加促進
 4 開発プロセスへの住民参加及び地域間格差を緩和による地方分権
 5 良い統治の促進、資源の利用・分配を保証に向けた能力向上
 6 人間の正義、安全及び財産の強化
(ロ) 2002年の危機では大きな社会的・経済的損失が発生したが、これら損失に対する復興・開発計画については、現時点で事実上国が二分された状況が続いており、まとまった計画の策定には至っていない。
 他方、同危機以降、ストップしていた西北部における行政機能の再開を目指し、行政再展開国家委員会(CNPRA)において、復興にかかる教育、保健、インフラ等必要な行政投資計画等が議論されるなど、一部に国家復興計画の策定の動きも見られるようになっている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.コートジボワールに対するODAの考え方

(1) コートジボワールに対するODAの意義
 コートジボワールは西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)のGDPの約4割、輸出の約6割を占めており、また、西アフリカ地域最大のアビジャン港、ハブ機能を有するアビジャン国際空港等を擁する西アフリカ地域の拠点であり、同国の発展は地域全体の発展にとって重要である。また、コートジボワール経済はコーヒー、カカオ等の一次産品の輸出に依存する脆弱なものであり、クーデターや内戦が続く不安定な社会・経済情勢であるところ、こうした問題に対する同国の取組をODAにより支援することは、ODA大綱の重点課題である「貧困削減」、「持続的成長」及び「平和の構築」の観点からも意義が大きい。 
(2) コートジボワールに対するODAの基本方針
 当面は人道支援や基礎生活分野の支援を中心に治安状況等も踏まえて可能なものから実施していく。中長期的にはコートジボワールから示される開発計画等を踏まえつつ、支援を検討していく。また、同国では政治・社会状況が不安定であり、人間に対する直接の脅威が発生していることから、「人間の安全保障」の視点を持って援助を実施していく。
 なお、コートジボワールは拡大HIPCイニシアティブ対象国であることから、当分の間、円借款供与は困難である。
(3) 重点分野
 1999年3月の政策協議では、食糧自給、基礎生活分野、構造調整努力に対する支援が重点分野とされたが、その後、2002年の内乱による経済的・社会的損失等を踏まえ、難民・避難民等に対する緊急支援(緊急食糧支援等)、基礎生活分野(初等教育、保健、水供給、農業)における支援等を行ってきている。また、元兵士の武装解除・動員解除、社会復帰(DDR:Disarmament, Demobilization and Reintegration)など平和構築支援をできるものから実施していく。
 中長期的には、コートジボワール国民に直接裨益し、経済発展を通じた貧困削減に資する基礎生活分野における支援を検討する。具体的支援としては、農村開発(ネリカ米(NERICA:New Rice for Africa)の普及、灌漑営農技術移転、農業機械技術移転等)を中心に、現地ODAタスクフォースによる課題、ニーズの分析なども含め検討する。

3.コートジボワールに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のコートジボワールに対する無償資金協力は2.21億円(交換公文ベース)、技術協力は1.31億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款122.00億円、無償資金協力403.75億円(以上、交換公文ベース)、技術協力99.27億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 被災民に対する協力として、世界食糧計画(WFP:World Food Programme)を通じた2億円の食糧援助を実施したほか、4件の草の根・人間の安全保障無償資金協力を供与した。
(3) 技術協力
 2003年度には、農業、教育、保健医療分野などにおける第三国研修を含む43名の研修員を受け入れた。 

4.コートジボワールにおける援助協調の現状と我が国の関与

 コートジボワールにおいてはPRSPの策定に至っていないが、同国危機後、国連事務局人道問題調整事務所(OCHA:Office for the Coordination of Humanitarian Affairs)を中心に緊急人道支援でのドナー会合が頻繁に開催され、コートジボワールの和平、復興に向けたDDR委員会、行政再展開委員会等では主要ドナーを巻き込んで調整が行われている。我が国も第二次新学期計画、DDR支援等をこれらの枠組みの中で、他ドナーと協調しながら支援を実現するなど、同国危機を契機として、援助協調の動きが出てきている。

5.留意点

 対コートジボワールでは、依然不安定な政情が続いており、今後実施されるDDRプロセスや大統領選挙を巡っては不測の事態も予想される。邦人調査団の派遣等に当たっては、渡航情報等を踏まえ、十分注意することが必要である。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対コートジボワール経済協力実績

表-6 諸外国の対コートジボワール経済協力実績

表-7 国際機関の対コートジボワール経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



前ページへ  次ページへ