[10]ギニア

1.ギニアの概要と開発課題

(1) 概要
 1984年3月、無血クーデターによって政権を掌握した現コンテ大統領は、国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)・世界銀行等の国際機関からの支援を得つつ、市場経済の導入、国家基本法の採択、複数政党制導入など民主化を促進し、これまで3回の大統領選挙を経て、20年にわたる長期政権を実現している。国内政治的には安定しているが、人権問題や民主化の問題を抱え、また国内経済は不透明な財政運営や主要輸出品であるボーキサイト価格の下落、急激なインフレなどで厳しい局面を迎えている。
 西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS:Economic Community of West African States)加盟国として、及びギニア・リベリア・シエラレオネ3カ国で構成するマノ河同盟を主導するなど、西アフリカ地域における平和の定着に取り組むとともに、騒擾の続く近隣諸国から多くの難民を受入れ、地域の安定に貢献している。
 ギニアでは国民の経済活動の大半が農林水産業といった一次産業に依存しており、豊かな雨量(「西アフリカの水瓶」)、肥沃な土壌を背景に高い開発潜在力を有するものの、零細規模による前近代的技術からいまだ脱却できず、また近隣諸国の騒擾による国境周辺地域の荒廃もあって、生産性は低い。また同国はボーキサイト、金、ダイアモンド等を産出する鉱物資源大国(特にボーキサイトは全世界の3分の1の埋蔵量を誇る)でもあるが、独立後の社会主義体制による混乱、インフラ整備の遅れなどから、必ずしも全体的な経済開発にはつながっていない。
(2) 主要国家開発計画
(イ) 1996年に中期国家開発政策文書として「ギネ・ヴィジョン2010」が策定され、その後、同文書に基づき、世界銀行との協力による優先セクター別支出管理のための各種計画が策定された。
(ロ) 2002年7月に拡大HIPCイニシアティブのプロセスにおいて策定された「貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)」では、1基礎インフラ整備(給水・電気・道路等)、2経済成長を支える主要セクター支援(農・漁・鉱・工・観光業等)、3基礎社会サービス支援(教育・保健・都市衛生等)を貧困削減のための開発重点分野と位置づけている。2004年9月には、本PRSP実施状況の第1回報告書が発表された。
(ハ) その他、上記の上位開発計画をもとに、「万民のための教育(EFA:Education for All)計画」「農業開発政策文書(LPDA)I・II」といった各開発セクター別の取り組みを具体化する計画もある。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.ギニアに対するODAの考え方

(1) ギニア共和国に対するODAの意義
 ギニアは、西アフリカ随一の天然資源大国であるにもかかわらず、長らく続いた社会主義的な支配の影響やガバナンスの悪さ、近隣諸国の騒擾等により、依然として最貧国に位置する(2003年度の国民一人当たり年間国民総所得(GNI:Gross National Income)は413ドル)。基礎生活分野の改善、基礎的社会・経済インフラの整備等を通して国民の生活レベル向上を促し、貧困からの脱却を支援することにより、本来の高い開発潜在性を充分に発揮させることは、ODA大綱の重点課題の一つである「貧困削減」と「持続的な成長」の観点からも重要。
(2) ギニア共和国に対するODAの基本方針
 ギニアの民主化、経済改革を支援するため、基礎生活分野を中心に支援を検討していく。特に農業分野は国民の大多数が従事しているにもかかわらず生産性の低さが問題となっており、食糧安全保障の観点から支援を充実させる必要がある。
 また、ギニアは拡大HIPCイニシアティブの対象国であることから、当分の間新規円借款の供与は困難であるため、無償資金協力と技術協力による支援を中心に検討を行っていく。
(3) 重点分野
 我が国はギニアに対してこれまで次の基礎的生活分野を中心に支援を実施してきている。
(イ) 教育:一般・草の根無償双方による小学校建設を通して、教育インフラを整備(これまで一般無償だけで541教室を建設)。
(ロ) 飲料水:都市部(都市給水システム整備)・農村部(地方給水計画)双方において安全な飲料水確保に貢献。
(ハ) 水産:1984年以来実施している水産無償のほか、研修員受入・専門家派遣等の技術協力を通して、漁業分野における二国間協力モデルを構築。
(ニ) 農業:これまで食糧援助を実施している。今後は技術協力・開発調査を中心として、農村開発やネリカ米を含む稲作振興といった課題に挑戦していく。

3.ギニアに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のギニアに対する無償資金協力は12.32億円(交換公文ベース)、技術協力は1.63億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款160.08億円、無償資金協力381.78億円(以上、交換公文ベース)、技術協力48.19億円(JICA経費実績ベース)である。

(2) 無償資金協力
 2012年までに初等教育総就学率を100%とすることを目指している同国政府が行動計画として策定した「万人のための教育計画(2001年から2013年)」に対し、具体的な支援として「コナクリ市小学校建設計画」)を実施し、教室不足が著しい都市部を対象として小学校25校276教室の整備などを行った。また、慢性的な食糧不足に悩む同国に対し、米の購入資金として3.5億円の食糧援助を実施したほか、3件の草の根・人間の安全保障無償資金協力も供与している。

(3) 技術協力
 同国における漁業の中心となっている零細漁業振興のため、沿岸地域や森林、高地地域における零細企業の実体を把握し、マスタープラン策定及びフィージビリティスタディを行う開発調査を実施した。また、保健医療、教育、放送などの分野で、23名の研修員受入を行ったほか、水産分野で2名の専門家を派遣、またユニセフとのマルチ・バイ協力により長期残効果蚊帳(約2,000万円)を供与している。

4.ギニアにおける援助協調の現状と我が国の関与

 同国においては、教育分野(世界銀行主導のEFA)を除いて、二国間ベースでの援助協調は目立っていない。ただ、草の根無償レベルでの日仏協力は実績がある。また、財政支援は導入されておらず、各ドナーによるプロジェクト・ベースの支援が中心である。

5.留意点

 援助の質・効率性、政治的野心の無さ等を理由にギニア国民の我が国への信頼と期待は大きいが、他方でギニア政府の慢性的予算不足が行政実施能力の低下を招き、更に援助が停滞するという悪循環に陥っているのが実情である。かかる状況では、支援が必要な優先項目を絞りつつ、ソフト・コンポーネントやフォローアップ事業といったスキームを多用し、確実な裨益効果を確保することが重要である。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ギニア経済協力実績

表-6 諸外国の対ギニア経済協力実績

表-7 国際機関の対ギニア経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件

表-10 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図


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