[9]ガンビア

1.ガンビアの概要と開発課題

(1) 概要
 1994年7月、無血クーデターによりジャメ大統領による軍事政権が樹立された。その後2年間の民主化移行期間を経て大統領選挙が実施され、1997年には国民議会選挙が実施され国民議会の収集により民政移管を完了した。2001年の選挙で再選を果たしたジャメ大統領は、議会でも与党が多数を占める中、安定した政治基盤に基づく政権を維持している。
 外交政策は近隣諸国との友好関係の維持に努めるとともにイスラム諸国との緊密な関係を構築している。1996年以降の民主化の進展に伴い国際社会との関係も回復し、援助も再開された。
 ガンビアは、国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)の約30%と労働人口の約80%を農業が占めているが、一次産品の国際価格の低迷等による経済困難に陥り、1986年から世界銀行・国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)の支援の下、包括的な構造調整を実施してきた。1994年7月のクーデター発生後は、主要産業である観光業が打撃を受けたが、民主化の進展、治安の安定化とともに政変前の活況を取り戻している。
 クーデター以降中断されてきた世界銀行・IMFによる構造調整支援は、1998年より再開し、マクロ経済政策と構造調整の結果、2000年の実質GDP成長率は5%を達成した。しかし、貧困は解消されず、依然として厳しい状況にある。
(2) 「貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)」
 拡大HIPCイニシアティブに基づく債務救済の条件として作成され、2002年7月に世界銀行理事会の支持を得た。2002年から2005年の優先戦略は以下の5つとなっている。
 1 経済成長及び貧困削減を推進する政治環境の実現
 2 生産能力の増加及び貧困層・弱者の社会的保護
 3 貧困層の基本的ニーズの充足
 4 地方分権化を通じた開発及び地方におけるキャパシティ・ビルディング
 5 開発プログラムにおいて、ジェンダー、環境、栄養、ガバナンス及びHIV/AIDSといった分野への注目
(3) 「国家開発計画 Vision2020」
 ガンビア政府はPRSPと並ぶ開発基本計画である国家開発計画Vision2020を掲げており、同計画では特に国内での食糧の自給自足の可能性、製造業の強化と多様化、輸出産業の発展等に重点が置かれている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.ガンビアに対するODAの考え方

(1) ガンビアに対するODAの意義
 セネガルに周囲を挟まれた農業国であるガンビアは、天候や一次産品の国際価格の影響を受けやすく、1人当たりの国民総所得(GNI:Gross National Income)320ドル(2001年)に過ぎない。現政権は現在は比較的安定した政権運営を行っており、民主化と経済改革を進めつつ貧困削減に取り組んでいるところ、こうした取組をODAにより支援することは、ODA大綱の重点課題である「貧困削減」及び「持続的成長」の観点から意義が大きい。
(2) ガンビアに対するODAの基本方針
 我が国は、1994年のクーデターを機に緊急轄人道的な援助を除き、新規の援助を見合わせていたが、一連の民主化プロセスが進展したことにかんがみ、1998年に無償資金協力及び技術協力に関する政策協議を実施した。ガンビアは拡大HIPCイニシアティブの対象国であることもふまえ、無償資金協力と技術協力による支援を中心に検討を行っていく。
(3) 重点分野
 1994年のクーデター以前は食糧分野、水産分野、水供給野等における無償資金協力、行政や農業分野等での研修員受入れ等の技術協力を中心に実施した。
 今後は、ガンビアのPRSPも踏まえつつ、即効性が高く広く国民に裨益する食糧援助・食糧増産援助を中心に、基礎生活野及び水産分野における支援等を検討していく方針である。

3.ガンビアに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のガンビアに対する無償資金協力は1.80億円(交換公文ベース)、技術協力は2.28億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力98.79億円(交換公文ベース)、技術協力18.25億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 慢性的な食糧不足を改善するために必要な米を購入することを目的に、1.8億円の食糧援助を行った。
(3) 技術協力
 ガンビア国上流地域の生計向上・生活改善のためのマスタープランの策定を行う「ガンビア国ガンビア川上流地域農村開発調査」を実施したほか、農業土木、水産、行政分野などで7名の研修員を受け入れた。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ガンビア経済協力実績

表-6 諸外国の対ガンビア経済協力実績

表-7 国際機関の対ガンビア経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件


プロジェクト所在図


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