[8]カメルーン

1.カメルーンの概要と開発課題

(1) 概要
 1982年に就任したビヤ大統領は、単一政党たる「カメルーン人民民主連合」を基盤に堅実な経済運営を行い内政安定に努力した。1990年代に入り、諸外国からの支援の必要性と国内の民主化要求に応えて、1992年3月、複数政党制下で初の国民議会選挙が実施されたのに続き、同年10月に大統領選挙が実施されたが(ビヤ大統領再選)、その後野党との対立が続き、民主化プロセスは一時後退した。しかし、1997年10月、主要野党がボイコットする中で実施された大統領選挙において、圧倒的多数で再選された同大統領は、政治的緊張緩和を図るべく有力野党との連立政権を発足させる事に成功し、政治的安定が続いている。2004年10月に行われた大統領選挙においてもビヤ大統領が再選された他、全体に透明かつ公正な選挙運営を行って民主化の進展を示した。
 外交面では、非同盟路線を基調とし、旧宗主国である英仏両語圏諸国との関係強化を図ると共に、友好国との協力の多様化を推進している。また、カメルーンは中部アフリカ諸国経済共同体(CEEAC:Communaute Economique des Etats de l'Afrique Centrale)等の地域経済機構の主要メンバーでもある。
 経済面では、第1次産業が国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)の約29%、労働人口の約49%、輸出額の約50%を占めている。1980年代後半以降、同国の経済は悪化していたが、近年の世界的な景気回復によって、原材料、特にカメルーンの主要輸出産品である木材、原油、アルミニウム、天然ゴムの輸出が順調に推移し、同国の経済は好転し始め、2003年の実質GDP成長率は4.2%となっており、2004年以降も成長が見込まれている。
(2) 貧困削減戦略文書(PRSP:PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)
 最終版PRSP(F-PRSP)が2003年7月に策定済み。対外債務削減に関しては、経済改革等の結果、2000年10月に拡大重債務貧困国(HIPC)イニシアティヴの「決定時点」(DP:Decision Point)へ到達しており、現在「完了時点」(CP:Completion Point)への到達の是非につき、国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)との間で協議が行われている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.カメルーンに対するODAの考え方

(1) カメルーン対するODAの意義
 カメルーンは、「アフリカ開発会議(TICAD:Tokyo International Conference on African Development)」の拡大開催者として同プロセスに参加するなど我が国が対アフリカ外交を推進する上での重要な理解者・協力者となっている。我が国は、従来、基礎生活分野、インフラ整備等に対する支援を実施してきたが、カメルーンの民主化と経済再建に向けた努力に呼応する形で、これらの分野で支援を実施することは、ODA大綱の重点課題である「貧困削減」や「持続的成長」の観点から有意義である。
(2) カメルーンに対するODAの基本方針
 カメルーンは拡大HIPCイニシアティヴの対象国であることから、当分の間、新規円借款の供与は困難であるため、無償資金協力と技術協力を中心に支援を実施していくこととなる。今後とも、同国の民主化努力の進展を注視しつつ、援助を検討して行く。
(3) 重点分野
 我が国は、従来、カメルーンに対して、教育(小学校や小学校教員養成学校の建設)、水(地方給水計画)、保健・医療や漁業(小規模漁業推進計画)等の基礎生活分野やインフラ整備(ラジオ放送網拡充計画)における支援を実施してきている。

3.カメルーンに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のカメルーンに対する無償資金協力は13.54億円(交換公文ベース)、技術協力は1.54億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款95.88億円、無償資金協力146.15億円(以上、交換公文ベース)、技術協力28.93億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 カメルーン政府が中央州、南部州及び西部州地域における教育環境改善を目的として策定した「第2次小学校建設計画」に対し、教室等の建設、机・椅子等の教育機材の購入および学校施設の維持管理等の技術指導に対して、2001年より3期にわたる協力を実施し、2003年にはその最終期として、西部州の小学校12校を対象に163教室の建設および教育機材の調達を支援した。また、そのほかにも、草の根・人間の安全保障無償資金協力を1件供与している。
(3) 技術協力
 2003年には計28名の研修員を行政、保健医療、衛生、教育、観光、電気通信などの分野で受け入れたほか、保健医療分野への協力としてユニセフとのマルチ・バイ協力による機材供与を行った。

4.カメルーンに於ける援助協調の現状と我が国の関与

 当国では、特に援助協調は進んでいないが、ドナー間での意見交換は多く行われており、特に拡大HIPCイニシアティヴに基づく対外債務削減による資金を活用する案件の絞り込みに際しては、ドナー間での協調・調整が頻繁に行われている。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対カメルーン経済協力実績

表-6 諸外国の対カメルーン経済協力実績

表-7 国際機関の対カメルーン経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



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