[6]カーボヴェルデ

1.カーボヴェルデの概要と開発課題

(1) 概要
 独立(1975年)以来、カーボヴェルデ・アフリカ独立党(PAICV:Partido Africano da Independncia de Cabo Verde)による一党政治が継続されてきたが、1990年9月複数政党制が導入され、その後は選挙による政権交代が行われるなど民主化が定着していると言える。
 外交面では、善隣友好、非同盟を基本とする現実路線を堅持している。また、ギニアビサウ情勢に関し、仲介役を果たすなど地域外交を積極的に展開している。
 経済面では、1998年7月に自国通貨であるカーボヴェルデ・エスクードの対ポルトガル・エスクード(現在では対ユーロ)固定相場制を導入し、安定した民主的政治と自由経済とが相まって、同国の経済は成長過程にある。
 他方、同国は厳しい気候条件、狭い国土、隔絶された地理条件、天然資源の欠如等、経済開発のためには不利な条件を多く抱えており、食糧自給率も10%~15%程度と低く、外国からの食糧援助に大きく依存している。また、外貨獲得源は、本国在住人口を上回る在外移民からの送金、観光収入及び海上・航空の交通に係る中継収益であるが、これらは慢性的な財政赤字を補うには程遠い状況にある。
(2) 「第5次国家開発計画(2002~2005年)」
(イ) 戦略的優先プログラム:1マクロ経済の安定、2インフラと国土整備、3教育と人的資源開発、4行政改革とその近代化、5環境汚染の防止の5分野を掲げている。
(ロ) 具体的戦略:1付加価値税の導入、公共支出審査を強化、国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)の貧困削減成長ファシリティ(PRGF:Poverty Reduction and Growth Facility)の効果的実施を図る。2運輸、エネルギー、水・衛生分野において基礎インフラのネットワークの構築を図る。3給水率を上昇させることにより、就学期の児童及び女性を過酷な労働から解放し、就学・就職の機会を増大させ識字率を高める。4地方分権、住民参加型行政管理における透明性の確保、公務員のキャパシティ・ビルディング等の推進を図る。5各セクターの政策実施における環境への配慮を推進する。2010年までに安全で安定した飲料水の給水率を100%とする等の目標を掲げている。
(ハ) なお、貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)については、最終版を世界銀行にて審議中である。現時点では、本国家開発計画に基づいた政策運営がなされている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.カーボヴェルデに対するODAの考え方

(1) カーボヴェルデに対するODAの意義
 カーボヴェルデは1人当たりの国民所得が比較的高いものの(2002年は1,250ドル)、農業・漁業には国民の5割が従事しているにもかかわらず、そのGDPに占める割合は9%弱に過ぎず、同セクターに従事する人々の多くが貧困に苦しんでいる状況である。こうした状況を踏まえ、社会的弱者や貧富の格差等を考慮するというODA大綱の基本方針の一つである「公平性の確保」の考え方の下ODAを通じて基礎生活分野及び水産分野を中心に援助を継続することは、同大綱の重点分野である「貧困削減」の観点からも、意義が大きい。
(2) カーボヴェルデに対するODAの基本方針
 我が国は、カーボヴェルデにおける市場指向型経済の導入、民主化の着実な進展、また依然として開発需要が高いこと等にかんがみ支援を実施してきている。今後とも、同国の民主化、経済改革努力を支援するため、基礎生活分野を中心に援助実施を検討していく方針である。
(3) 重点分野
 これまで、同国については、基幹産業である水産分野を中心に、食糧援助など地域住民の生活改善に資する分野を中心とした無償資金協力、技術協力を実施している。

3.カーボヴェルデに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のカーボヴェルデに対する無 償資金協力は1.92億円(交換公文ベース)、技術協力は0.74億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力116.99億円(交換公文ベース)、技術協力13.88億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 乾燥気候により飲料水の確保が最重要課題となっている同国に対し、我が国が1998年から1999年に実施した開発調査「サンティアゴ島地下水開発計画」を基に、サンティアゴ島の23村落において簡易小規模給水施設を建設する「サンティアゴ島地下水開発・給水計画」を実施した。本件実施によって、同島の給水率の向上が実現されるとともに、水因性疾病の発生の防止および女性や子供による険しい山岳地帯での過酷な水汲み労働からの解放されることが期待されている。また、慢性的な食糧不足のため大半を輸入に依存している同国の食糧事情に鑑み、毎年食糧援助を実施しており、2003年には、米の購入資金として1.5億円を供与した。
(3) 技術協力
 2003年度には、行政能力向上や水産分野において11名の研修員受入を行ったほか、保健医療分野への協力としてユニセフとのマルチ・バイ協力による機材供与を行った。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対カーボヴェルデ経済協力実績

表-6 諸外国の対カーボヴェルデ経済協力実績

表-7 国際機関の対カーボヴェルデ経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



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