[5]ガーナ

1.ガーナの概要と開発課題

(1) 概要
 ガーナは、1993年の民政移管以降、順調に民主化プロセスを進展させており、2000年12月に大統領・国会議員選挙の結果、2001年1月に発足したクフォー政権は、「積極的変革」をスローガンに、民主主義と法を尊重したグッドガバナンスの確立を政策目標とし、汚職に対する厳しい姿勢を堅持している。
 外交面では、非同盟を基調としつつ、近隣諸国との友好関係を維持するとともに域外国・先進国との関係強化にも力を入れている。国連平和維持活動に積極的に参加しており、アフリカを中心に、多くの紛争地域に部隊を派遣している。また、リベリア和平、シエラレオネ和平プロセスへの積極的な関与を行うとともに、さらに、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS:Economic Community of WestAfrican States)の議長に就任したクフォー大統領の下でリベリア和平、コートジボワール和平の仲介等に貢献している。
 ガーナ経済は金とカカオの輸出に依存しており、国際貿易の影響を受けやすい。1983年以降、国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)・世界銀行主導の構造調整を実施した結果、1980年代後半から年3-5%の経済成長を達成し、サブサハラ・アフリカの優等生として評価された。しかし、1999年から主要輸入品の石油価格の高騰や主要輸出品のカカオ及び金の価格低迷などにより、インフレ率が40%まで上昇するなど国内経済は厳しい状況となった。2001年3月、拡大重債務貧困国(HIPC)イニシアティブの適用による債務救済を申請する一方、マクロ経済の是正に取り組むなど、経済再建に向けた努力を行っている。
 2003年から2004年にかけてカカオの増収、海外からの送金の増加等により堅調な経済運営が続いているが、他方、2005年に実施される予定の石油価格の完全自由化による燃料・電力・水道等の価格上昇等がガーナ経済に与える影響に注意が必要である。
(2) ガーナ貧困削減戦略(GPRS:Ghana Poverty Reduction Strategy)
 ガーナは、拡大HIPCイニシアティブ適用の条件となるGPRSを策定し、2003年2月に世界銀行理事会に提出し、支持を得た。GPRSは貧困削減を重視した政策枠組みであるとともに、民間セクターの発展を持続的開発の鍵として重視しており、貧困人口に対する社会サービスの拡充に止まらず、成長ファクターをより意識したものになっているといわれている。
 GPRSにおいては、1マクロ経済の安定、2生産および雇用の拡大、3人材育成と基礎社会サービスの拡充、4社会的弱者への対応、及び5グッド・ガバナンスが優先課題とされており、これら優先課題の実現を図るための政策の立案・実施、そのモニタリングのために参照すべき60の主要指標を設定している。また、貧困削減の実現のための費用概算が付されており、予算と貧困削減戦略の関連づけを中期的に示す試みがなされている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.ガーナに対する我が国ODAの考え方

(1) ガーナに対する我が国のODAの意義
 ガーナは1980年代以降、真摯に構造調整に取り組んだ結果一定の成果をあげており、現在もオーナーシップを持って貧困削減に取り組んでいる。他方、ガーナにおける一人当たりGNIは依然として約270ドルにとどまり(2002年)、援助需要が引き続き高いことから、ODAによりガーナ政府の貧困削減に向けた取組を支援することは、ODA大綱の重点課題の一つである「貧困削減」の観点からも有意義である。
 また、選挙による政権の成立・交替を実現するなど民主化プロセスを着実に実践するとともに、西アフリカ地域の平和と安定に積極的な役割を果たしている同国を支援することは、同地域の安定にとって重要である。
(2) ガーナに対するODAの基本方針
 我が国は、ガーナにおける民主化プロセスと経済改革に向けた取組を評価しており、同国をアフリカにおける援助の重点国と位置づけている。ガーナは2001年3月に拡大HIPCイニシアティブの適用申請を行ったことを受けて同イニシアティブの対象国となったことから、当分の間新規円借款の供与は困難であるが、無償資金協力と技術協力により、同国の開発に向けた取組を支援していく方針である。
 なお、GPRSが既存の国家開発計画をすべて上書きする形で成立したことから、GPRSが示すガーナ政府の優先開発課題の達成に沿った形で支援を実施していくことが必要となる。
 2000年5月に実施された経済協力協議を踏まえ、同年6月に国別援助計画が策定されたが、ガーナを取り巻く開発環境の変化に対応して、現在、現地ODAタスクフォースも交え国別援助計画の改定を行っている。
(3) 重点開発課題
 2000年に策定された対ガーナ援助計画では、1農業開発、2基礎性格基盤の改善(基礎教育、保健・医療、水供給)、3経済構造改革、4産業育成、5経済インフラ整備の5分野が重点分野とされているが、同計画の改訂作業に当たっては、我が国の持つ開発ノウハウの比較優位を確認しつつ、今後中期的にはガーナの開発政策策定のベースとなるGPRSに沿った支援を行うとの方針をとることとしている。
 暫定的には、ガーナ政府と現地ODAタスクフォースによる政策協議も踏まえてGPRSの優先開発課題に沿って、1地方農村の活性化、2ポテンシャルを持つ産業の育成という2つの課題を中心に、その達成のための事業を順次組み合わせていくこととしている。同時に、政府自身のオーナーシップを発現させるために、行政機能の強化との視点から、キャパシティ・ビルディングを図ることを想定している。


3.ガーナに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のガーナに対する無償資金協力は22.19億円(交換公文ベース)、技術協力は14.64億円(JICA経費実績ベース)であった。西アフリカにおける我が国からの最大の被援助国であり、またアフリカ全体においても第6位となっている。2003年度までの援助実績は、円借款1,250.91億円、無償資金協力646.24億円(以上、交換公文ベース)、技術協力304.45億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 地方電化計画や幹線道路改修、橋梁建設などの経済インフラ整備、感染症予防などの保健・医療分野、農業分野等を中心とした協力を実施しているほか、小学校の建設や病院への機材供与など基礎生活分野(BHN:Basic Human Needs)を中心とした草の根・人間の安全保障無償資金協力も積極的に実施している。また、我が国は、同国の構造調整努力を支援するため、2003年度までに合計165億円のノン・プロジェクト無償資金協力を供与している。
(3) 技術協力
 保健・医療や教育分野等の基礎生活分野の他、農業、貿易・投資促進、職業訓練等多岐にわたる分野で技術協力を実施している。特に、野口記念医学研究所は我が国の国際医療協力の代表例であり、1979年に我が国の無償資金協力で設立された同研究所は、西アフリカ地域での感染症対策・研究に関する主要機関の一つとして広く認識されている。設置後は、長年にわたる技術協力によって、ワクチン技術の向上、HIV/AIDSに関する研究・対策の強化を通じ、感染症対策に関わる医療従事者の能力向上が図られてきたほか、現在では、西アフリカの周辺諸国を対象に、同研究所を拠点とした包括的寄生虫対策のための人材育成といった広域協力も実施している。


4.ガーナにおける援助協調の現状と我が国の関与

(1) セクター・ワイド・アプローチ(SWAPs:Sector-Wide Approaches)の導入と定着
 ガーナにおける援助協調のさきがけとなった保健セクターでは、1990年代後半にSWAPsに基づき、5つのドナーの参加による共通基金の設置などの動きが起こった。それ以外のセクター・開発課題においても、1990年代末から2000年にかけて、世界銀行による「包括的開発枠組み」の呼びかけに呼応する形で、ガーナ政府のリードを前提とした援助協調会合が設定され、そのいくつかはSWAPsの導入・実施に発展した。
(2) 一般財政支援の枠組みの成立
 英国や欧州連合(EU:European Union)等は2002年に策定されたGPRSの実施のためには財政支援の強化が不可欠であるとの立場をとり、2003年、1世界銀行の貧困削減戦略クレジット(PRSC:Poverty Reduction Support Credit)と、2二国間ドナー合同(8カ国/機関)の共通基金となったマルチドナー一般財政資金(MDBS:Multi Donor Budget Support。一部を除き贈与)の2つの柱からなる一般財政支援の枠組みが成立し、現在、年間合計約2億5千万ドル規模に達している。英国及びEUは、今後一般財政支援を対ガーナ支援の柱としていくとの方針を明確にしており、一方、カナダ、ドイツ、デンマーク等は、当面一般財政支援とプログラム/プロジェクト支援のバランスをとっていく方針を示している。
(3) 我が国の対応
 我が国は、共通基金という手法を否定しないものの、人造りと制度作りを支援しつつ地道に現場での解決を支援していくとの手法を中心とした取り組みを重視している。実際の案件形成過程では、ガーナ政府が優先する開発課題の中から我が国の比較優位と援助協調を重視し、各セクターの開発戦略と整合するプログラム化を図ることとしている。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ガーナ経済協力実績

表-6 諸外国の対ガーナ経済協力実績

表-7 国際機関の対ガーナ経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図


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