[4]エリトリア

1.エリトリアの概要と開発課題

(1) 概要
 エリトリアは1962年にエチオピアに併合されて以来解放闘争が続いていたが、1991年5月末にエチオピアのメンギスツ政権の崩壊により終結し、同時にエリトリア臨時政府を樹立。1993年4月の国連監視下での住民投票の結果、同年5月にエチオピアから正式に独立した。
 しかし、1998年5月には、エチオピアとの間で国境画定を巡る武力衝突が生じた。その後、アフリカ統一機構(OAU:Organization of African Unity)や米国による調停がなされ、2000年6月、両国は「休戦合意」に署名し、同年12月和平合意が成立した。しかしながら、一部の地域の帰属を巡って両国の意見が対立し、国境問題は現在のところ未解決のままである。
 経済面では分野別に見ると農業及び牧畜業に就業人口の多くが従事しているが、農業は伝統的手法で少ない自然降雨に依存しているため生産性が低く、さらに近年繰り返し生じる干ばつが食糧不足を慢性化させている。その結果、食糧の約7割を輸入ないし援助に依存している。また、30年に及ぶ内戦のために国内の各種インフラが破壊され、産業育成も大きく阻害されてきた。農業の他には大理石や金といった鉱工業が主要産業となっているが、輸出産業としては十分に発達しておらず、圧倒的な輸入超過状態が続いている。他方、ドナーからの支援も限られているところ、外貨不足が深刻化している模様である。
(2) エリトリア貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)
 エリトリアにおいては、長期的目的として、バランスの取れた持続的経済成長を通じて全国民の生活レベルを向上させることを掲げ、現在、暫定版PRSPを策定中である。そのための基礎として、マクロ経済の安定に基づく経済成長、貧困層の収入向上、人的資源の向上に焦点を当てている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.エリトリアに対するODAの考え方

(1) エリトリアに対するODAの意義
 エリトリアの安定と発展はアフリカの角地域の安定と発展にとって重要であるが、同国ではエチオピアとの国境紛争によりインフラが破壊され、20万人の兵士の動員解除・退役後の社会復帰、100万人を超える難民・国内避難民の復帰等の課題を抱えている上、近年繰り返し生じる干ばつにより食糧不足が慢性化している。このような状況を踏まえ、エリトリアで進められている民主化と国家再建努力をODAにより支援することは、ODA大綱の重点課題である「貧困削減」や「平和の構築」の観点からも意義が大きい。
 また、干ばつ等の自然災害や紛争は人間に対する直接的な脅威であることから、ODAによりかかる脅威への対処を支援することは「人間の安全保障」の観点からも重要である。
(2) エリトリアに対するODAの基本方針
 我が国はエリトリアの民主化と国家再建努力を支援するため、食糧不足に対処するための食糧援助、基礎生活分野における支援、紛争で破壊されたインフラの復興、兵士の動員解除・除隊兵士の社会復帰支援等の支援を進める。
(3) 重点分野
 2000年12月のエチオピアとの間の和平合意を受け、翌2001年5月、今後のエリトリアへの経済協力の方向性を協議すべく政策協議団を派遣した。同協議では、特に保健・衛生、水供給、教育等の基礎生活分野、インフラ復旧・整備を重点分野としつつ、水産や農業分野においても支援の可能性を検討していくことが確認されている。
 また、エチオピアとの紛争の終結を受けて既に7万人が除隊されたが、引き続き兵士の動員解除と除隊兵士の社会復帰はニーズが高いところ、アフリカに対する平和構築のための協力の一環として、除隊兵士の職業訓練に係る専門家の派遣など技術協力事業を実施してきている。

3.エリトリアに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のエリトリアに対する無償資金協力は1.10億円(交換公文ベース)、技術協力は0.67億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの我が国の援助累積実績では、無償資金協力77.96億円(交換公文ベース)、技術協力7.74億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 食糧援助を実施した。
(3) 技術協力
 ODA調整に関する専門家派遣、研修員受入れによる協力を実施した。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対エリトリア経済協力実績

表-6 諸外国の対エリトリア経済協力実績

表-7 国際機関の対エリトリア経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細


プロジェクト所在図



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