[2]ウガンダ

1.ウガンダの概要と開発課題

(1) 概要
 1986年以降、ムセベニ政権が続いているが、2006年に予定されている大統領選挙・総選挙に向け、大統領3選禁止条項の撤廃の是否、複数政党制への回帰の是否を含めた憲法改正問題に関する議論が展開されている。また、北部地域では、過去18年に亘り反政府勢力が活動を展開しており、早期の紛争解決・治安の回復、約160万人に及ぶ国内避難民に対する各種人道支援及び紛争解決後の復興・開発計画の策定・実施が喫緊の課題となっている。
 外交面では、善隣外交・非同盟主義を採り、アフリカ連合(AU:African Union)との連帯を含め、アフリカ諸国との連携を図る一方、米・EU諸国等先進国、さらにアジア諸国との関係強化にも積極的である。また、2004年には東アフリカ共同体(EAC:East African Community)、政府間開発機構(IGAD:Inter-Governmental Authority on Development)、東部・南部アフリカ共同市場(COMESA:Common Market for Eastern and Southern Africa)の議長国を務める他、ブルンジ和平の仲介役としての役割も担っており、地域協力の推進にも積極的である。
 経済面では、ムセベニ政権は、世界銀行・国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)による構造調整プログラムを積極的に受け入れ、農産品の生産者価格の自由化、輸出品の公社による独占の廃止、国営企業の民営化、公共部門(中央省庁)の縮小化等の施策を推進してきており、マクロ経済は安定している。他方、未だに低所得貧困国である現状に変わりはなく、政府は、貧困削減のためには経済成長の一層の推進が不可欠との認識の下、一次農産品への付加価値の付与を含めた貿易・投資の促進・民間セクター主導の経済成長の促進を図っている。基幹産業は農業で、国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)の約40%、輸出の約80%、雇用の約80%を占めている。
(2) 「貧困撲滅行動計画(PEAP:Poverty Eradication Action Plan)」
 1997年、ウガンダ政府は、2007年までの10年間を対象とした国家開発計画である「貧困撲滅行動計画(PEAP)」を策定した。2000年に第1次改訂が行われたが、この改訂版PEAPが世界銀行・IMFにより最終版として取り扱うこととされ、2000年3月に他国に先駆けて拡大重債務貧困国(HIPC)イニシアティブに基づく債務削減が実施されることとなった。第2次改訂プロセスは2004年中に作業を完了予定。
 第1次改訂版PEAPに定められた重点課題は以下の通り。
(イ) 急速且つ持続的な経済成長(マクロ経済の安定、資源配分の改善、民間セクター開発、インフラ整備等)、
(ロ) グッドガバナンスと治安(治安維持・改善、人権擁護、民主化・地方分権、公共支出の透明性・効率性、司法改革、情報公開、社会的弱者のエンパワーメント等)
(ハ) 貧困層の所得向上(土地へのアクセス、金融サービス、地方部の輸送インフラ改善、農業助言・普及サービス、職業訓練、中小企業育成、社会的弱者層の所得向上等)
(ニ) 貧困層の生活の質的向上(保健サービス、初等・中等教育、成人識字率、水・衛生、住宅、心理的サポート、家族計画等)

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.ウガンダに対するODAの考え方

(1) ウガンダに対するODAの意義
(イ) ウガンダは、ムセベニ政権の下、政治・経済の両面において、大湖地域の平和と発展に積極的な役割を果たしてきていることから、我が国ODAの供与を通じ、ウガンダの継続した安定と発展を支援することは、大湖地域、ひいてはアフリカ全体の平和と発展に貢献することにつながる。
(ロ) ウガンダは、国民1人当たりGDPは約300ドル、絶対的貧困ライン以下で生活する人口が全人口の38%(2003年)を占める低所得貧困国である。ウガンダ政府が経済成長を通じた貧困削減を目指していることも踏まえつつ、ODAを通じて開発ニーズの充足に貢献することは、ODA大綱の重点課題である「貧困削減」と「持続的成長」の観点からも意義が大きい。
(2) ウガンダに対するODAの基本方針
 2006年に予定されている大統領選挙・総選挙に向けての動向を含め、ウガンダの民主化やグッド・ガバナンスへの取組状況を注視しつつ、ウガンダ政府による「貧困撲滅行動計画(PEAP)」の円滑な実施に向けた自助努力を支援する。ただし、ウガンダは拡大HIPCイニシアティブの適用国であることから、当分の間、新規円借款の供与は困難である。
(3) 重点分野
 1997年7月の経済協力政策協議、1999年のプロジェクト確認調査におけるウガンダ政府との協議等を踏まえ、我が国の対ウガンダODAの重点分野として以下の4分野が設定されている。今後、現地ODAタスクフォースにより我が国援助の方向性について検討を進めていく。
(イ) 人的資源開発:(教育、職業訓練等)
(ロ) 基礎生活支援:(保健・医療、水供給、環境等)
(ハ) 農業開発:(稲作振興、収穫後処理・流通市場改善等)
(ニ) 経済基礎インフラ整備:(道路、電力等)

3.ウガンダに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のウガンダに対する無償資金協力は7.75億円(交換公文ベース)、技術協力は6.09億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの我が国の援助実績は、円借款72.55億円、無償資金協力310.73億円(以上、交換公文ベース)、技術協力91.45億円(JICA経費実績ベース)である。また、円借款の債務免除62.47億円(交換公文ベース)を実施した。
(2) 無償資金協力
 水供給分野、食糧援助を中心とした協力を実施した。
(3) 技術協力
 職業訓練の分野における技術協力プロジェクトとして「ナカワ職業訓練校プロジェクト」を実施している他、教育、農業等の分野において、専門家派遣、研修員受入れ、青年海外協力隊員派遣等による協力を実施した。

4.ウガンダにおける援助協調の現状と我が国の関与

(1) ウガンダは、PEAPを政策の最上位に据え、各セクターごとの開発計画である「セクター・プログラム」をウガンダ政府及びドナー間で共有し、密接な連携の下に援助を実施していく、いわゆる「セクター・ワイド・アプローチ(SWAPs:Sector Wide Approaches)」に基づく援助協調が世界で最も進展している国の一つである。具体的には、教育、保健、道路、農業、水・衛生、司法等の主要セクター全てにおいてセクター・プログラムが策定されており、各セクター、サブ・セクターごとに設置された数多くのドナー会合等の場を通じ、ドナー・コミュニティ全体としての援助の方向性の検討や個々の援助国・機関による援助案件間の密接な連携・調整、予算策定プロセスへの関与等が図られている。
(2) さらに、援助実施のモダリティをも統一しようとする動きも顕著となっており、具体的には、世界銀行・英国・オランダ・北欧諸国等の主導の下、従来型の「プロジェクト型支援」から、被援助国政府の予算に直接援助資金を投入する「財政支援」への移行が急速に進展しており(ウガンダが受け取る年間援助総額の約6割が財政支援)、ドナーがウガンダ政府の財政を直接支える代わりに国家予算の配分や重点分野の決定、民主化・グッドガバナンスの促進等の事案により深く関与していく援助手法がかなり浸透している。
(3) このような状況の中、我が国は、以下の対応をとってきている。
(イ) 2001年度及び2002年度債務救済無償の50%(それぞれ約6千万円、3千万円)を財政支援として供与。
(ロ) 2003年11月、援助協調との関連でのウガンダ政府とドナーの関わり方の原則を定めた枠組み文書「Partnership Principles between Government of Uganda and its Development Partners」に参加。
(ハ) ウガンダの民主化やグッドガバナンスの促進に関するドナーグループ(DDGG:Donor Democracy and Governance Group)の役割・機能等を定めた覚書(Memorandum of Understanding)に同グループの一員として署名。
(ニ) 主要セクターのドナー会合等への積極的参画を通じた恒常的情報収集・発信に努めると共に、SWAPsと我が国ODAの整合性確保のための各種調整を実施。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ウガンダ経済協力実績

表-6 諸外国の対ウガンダ経済協力実績

表-7 国際機関の対ウガンダ経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件

表-11 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



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