[1]アンゴラ

1.アンゴラの概要と開発課題

(1) 概要
 2002年4月の停戦合意により27年に亘って続いた内戦が終結して以来、1994年のルサカ協定に基づく国民和解、国家再建のプロセスが開始され、与党アンゴラ解放人民運動(MPLA:Popular Movement for the Liberation of Angola)主導による政治の安定及び経済復興が徐々に進められている。しかしながら、行政機構は依然として脆弱なままであり、また、政府はガバナンスの問題を抱えており、効率的な経済復興を妨げる要因となっている。その結果、内戦の後遺症とも言える国内避難民等の人道状況の回復は遅く、また、人口の急激な都市流入による都市問題も深刻化している。
 アンゴラ経済は、石油を始めとする豊富な天然資源の好調な輸出を背景として、マクロ的には安定の兆しを見せつつある。しかしながら、全国に拡散している地雷の除去、内戦で破壊されたインフラの復旧、低下した生産能力の回復は安定した経済復興を図る上で不可欠な要素である。また、9%に達する財政赤字(2003年)にも現れている財政管理の脆弱性は、国内資金の効率的分配と海外からの資金吸収能力を弱めることとなり、今後の経済成長の大きな障害となる。
 政治的には、2006年9月に予定される大統領・議会選挙に至る国内政治の動勢が注目されている。こうした状況を背景として、主要ドナー国・機関はアンゴラ政府に対し引き続き政府のガバナンスの改善を求めている。
(2) アンゴラ貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)
 アンゴラ政府は2002年8月にPRSPを作成し、現在、アンゴラ政府とドナーとの間で内容の調整が進められている。この中では、ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)に基づき、2015年までにアンゴラ人口の最貧困層(一日の消費1米ドル未満)の割合を半減するとの目標のほか、(イ)難民・避難民及び元兵士の社会復帰、(ロ)市民の安全と保護(対人地雷等の撤去)、(ハ)食糧保障及び地方開発、(ニ)エイズ対策、(ホ)教育、(ヘ)保健、(ト)基礎インフラ、(チ)雇用及び職業訓練、(リ)ガバナンス、(ヌ)マクロ経済運営の10分野を重点政策課題として掲げ具体的な数値目標を設定している。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.アンゴラに対するODAの考え方

(1) アンゴラに対するODAの意義
 アンゴラでは、2002年の内戦終結後に反政府勢力の武装解除・動員解除も進み、国民和解、国家再建に向けた取組が進展しつつある。我が国は、これまでこうしたアンゴラの努力に呼応する形で、食糧援助、食糧増産援助、難民帰還支援及び首都ルアンダの復興に資する基礎インフラ分野、基礎生活分野を中心に支援を実施してきているが、アンゴラの安定は周辺諸国の安定にも影響を与えるものであり、こうした支援の実施は、ODA大綱の重点課題の一つである「平和の構築」の観点からも、意義は極めて大きい。
(2) アンゴラに対するODAの基本方針
 アンゴラにおける平和の定着を確実にし、全国民が「平和の配当」を等しく享受できるよう、アンゴラ国民が裨益し、かつ、国家復興・再建に大きく資すると認められる案件を中心に援助を実施していく。また、アンゴラが依然として抱える内戦による難民・避難民の発生といった問題への対処に当たっては、「人間の安全保障」の視点を重視して支援を実施する。そのため、現地ODAタスクフォースでは、具体的な我が国援助戦略の検討を進める。
 ただし、具体的な実施に当たっては、アンゴラ側の実施体制と透明性の確保及び治安状況を十分考慮する。
(3) 重点分野
 当面は、2000年5月の政策協議にて合意した下記の4分野を重点分野として援助を実施していく。なお、アフリカにおける平和構築に関する協力の一環として、地雷関連、除隊兵士の社会復帰、国内避難民・難民の支援について二国間及び国際機関を通じた協力を実施中である。
(イ) 保健・医療:病院・保健センターの設備整備、機材整備、感染症対策
(ロ) 基礎インフラ、基礎生活分野:道路網整備、電話網整備、低所得者用住宅建設、給水計画
(ハ) 農業分野:食糧増産援助
(ニ) 復興支援:小学校建設・改修、復興のための地雷撤去・地雷回避教育・被害者支援、帰還民等に対する再定住支援

3.アンゴラに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のアンゴラに対する無償資金協力は16.23億円(交換公文ベース)、技術協力は0.55億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力241.84億円(交換公文ベース)、技術協力20.10億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 食糧援助、病院整備の他、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:The Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)を通じた「アンゴラ帰還民に対する再定住支援プログラム」及び国連児童基金(UNICEF:United Nations Children's Fund)を通じた「小児感染症予防計画」を実施した。
(3) 技術協力
 保健・医療、基礎インフラ及び農業等の分野において、研修員受入れ等による協力を中心に実施した。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対アンゴラ経済協力実績

表-6 諸外国の対アンゴラ経済協力実績

表-7 国際機関の対アンゴラ経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案


プロジェクト所在図



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