[8]サウジアラビア

1.サウジアラビアの概要と開発課題

(1) 概要
 湾岸危機に際し、多国籍軍の駐留等が国内各層に政治的・文化的に大きな影響を与え、また、戦費負担や資本の逃避等のため財政状況が悪化したが、国家基本法の発布(1992年3月)、諮問評議会の設置、地方制度の改革等の内政改革措置により国内の安定が図られてきた。2003年以降、サウジ政府はシーア派や女性も参加する「対話のための国民集会」の実施、地方評議会選挙の実施する旨発表、国民人権協会の設立等、種々の改革に取り組んできている。また、同時期サウジ各地でテロ事件が発生したが、サウジ当局はテロ防止対策に全力をあげている。外交面では、欧米諸国及び湾岸協力理事会(GCC:Gulf Cooperation Council)諸国との連帯強化、エジプトやシリアとの関係強化が図られている。イランとの二国間関係はイラン革命以降良好ではなかったが、1997年来関係改善の兆しが見られ、関係拡大が着実に進展している。2001年9月の米国での同時多発テロ事件以降、米国との関係に軋轢が見られるようになってきたが、サウジ政府は可能な範囲で対米協力姿勢を見せており、両国の協調関係は維持されている。
 経済構造は原油に依存するモノカルチャーであるが、1970年度からこれまで7次にわたり経済開発5か年計画を実施し、石油依存からの脱却、工業化の推進、労働者の自国民化に取り組んでいる。しかしながら、依然として石油依存度は高く、また、人口増に伴う雇用機会の創出が重要な課題となっている。財政に関しては、1980年代半ば以降の石油価格の低迷や、湾岸危機の際の歳出拡大のために財政赤字が拡大したが、歳出削減と公共料金の値上げ等によって財政赤字の削減に乗り出しており、原油価格高騰もあり、財政好転の兆しが見られている。
(2) 経済開発5か年計画
 1970年度からこれまで6次にわたり経済開発5か年計画を実施し、2000年8月、国家収入の多角化、財政赤字ゼロ、生産拡大、サウジ人の雇用機会増を主要目標とする第7次5か年計画(2000年~2004年)が閣議で承認された。同計画では、国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)の年成長率3.16%(部門別では民間部門5.04%、非石油部門4.01%)、年率6.85%の投資増、民間の総投資額4,785SR(1,276億ドル)を見込んでいる。雇用については、5年間で約82万人の雇用創出、約49万人の労働力の自国民化(サウダィゼーション)を予定している。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.サウジアラビアに対するODAの考え方

(1) サウジアラビアに対するODAの意義
  サウジアラビアは、世界最大の原油輸出量及び原油確認埋蔵量を誇り、第1位の原油供給国であること(2003年シェア約25%)、イスラム教2大聖地の守護者としての地位を背景として、アラブ・イスラム世界で枢要な地位を占め、中東域内の穏健安定勢力として極めて重要な役割を担っていることから同国との間で安定した協力関係を維持していくことは重要である。他方、同国は年率3%を超える人口増加と20歳以下の人口が約6割を占める若年層の失業問題が象徴的に示すように、サウジ社会は社会・経済構造の改革を求められていることなどから、サウジアラビアとの良好な関係を踏まえ、技術協力を実施している。
(2) サウジアラビアに対するODAの基本方針
 サウジアラビアの一人当たり国民総所得(GNI:Gross National Income)が高い水準(8,530ドル、2003年、世界銀行)にあることから資金協力を実施していないが、先進技術に対する需要の大きさ等にかんがみて技術協力を実施している。
 1997年の橋本総理(当時)のサウジアラビア訪問を受け、翌年、21世紀に向けて両国が共同で取り組む重要課題が「日・サウジ協力アジェンダ」としてまとめられ、人造り支援(教育、職業訓練)、環境、医療・科学技術等の分野を中心に技術協力を実施していく方針が示された。2003年5月に行われた小泉総理のサウジ訪問では、アブドッラー皇太子から更なる技術移転の要請があり、総理は特に「人造り」と「水資源」分野での協力に言及した。
(3) 重点分野
 上記の通り、人造り(教育、職業訓練)、環境、医療・科学技術等の分野を中心とした技術協力及び水資源分野を重点分野としている。
 また、現地ODAタスクフォースでは、サウジアラビア側との協議を通じて、改革関連(女性の進出、教育)、人材育成(労働力のサウジ人化支援、中小企業育成、観光振興、テロ・国際組織犯罪対策)及び水資源・環境協力を重視していく方針を打ち出している。

3.サウジアラビアに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のサウジアラビアに対する技術協力は4.27億円(JICA経費実績ベース)。2003年度までの援助実績は、無償資金協力3.83億円(交換公文ベース)、技術協力181.89億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 技術協力
 行政、通信・放送、鉱工業等の分野における研修員受入、専門家派遣等の技術協力を行っている。今後とも、同国の人材育成及び技術水準の向上を支援するため、「日・サウジ協力アジェンダ」の人造り(教育、職業訓練)、環境、医療等の分野を中心に技術協力を実施していく方針である。また、水資源分野、考古学分析・遺跡発掘技術の協力も開始している。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対サウジアラビア経済協力実績

表-6 諸外国の対サウジアラビア経済協力実績

表-7 国際機関の対サウジアラビア経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件


プロジェクト所在図


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