[7]オマーン

1.オマーンの概要と開発課題

(1) 概要
 1970年のカブース現国王の即位以来、原油収入を基盤とした経済社会開発を進め、民生の向上に努めている。外交面では、現国王即位後積極的に諸外国との間に国交を開いて友好関係の促進を図り、湾岸協力理事会(GCC:Gulf Cooperation Council)諸国との協力を軸に、先進諸国との関係強化にも努めている。さらに、中東和平問題についても湾岸諸国中初めて中東和平多国間協議の一つである水資源作業部会をホストし、「中東淡水化協力センター」を誘致するなど積極的に貢献してきた。
 経済面では、原油可採年数が残り20年前後と推測される比較的小規模な原油埋蔵量に対し、依然として国家収入の7割を占める原油収入依存型の経済構造から脱却することが必要であるとして、観光、商工業、漁業等非石油部門の育成を進める経済多角化政策を講じている。また、高い人口増加率と若年者層の割合等から失業問題も顕在化しており、新規産業の創出及び外国人労働者が占める労働市場をオマーン人に代替する「労働力のオマーン人化」政策を積極的に推進している。また、環境保護には高い関心を向けており、これまで国連環境計画(UNEP:United Nations Environment Programme)の理事に3度選出されている。特に、海洋環境保全に対しては1,700kmもの長い海岸を有すること、原油タンカーの多数往来する地域であることなどから慎重かつ積極的に取り組んでいる。
(2) 開発計画
 1996年に策定された国家中長期計画「オマーン・ビジョン2020」は、最低限、現在の個人所得水準を維持し、2020年までに実質所得を倍増することを目標としている。同計画に沿って、経済の均衡維持、持続可能な経済成長の推進、人材の教育・技能訓練、雇用創造等の実施を定めた第6次5か年計画(2001年~2005年)が実施されている。主な具体的目標は以下のとおりである。
(イ) 個人所得の安定、経済成長率3%の維持、政府支出の抑制
(ロ) 高等教育機関への進学推進、教育改革、技能訓練による人材開発
(ハ) 医療施設の改善による乳幼児死亡率の引下げ
(ニ) オマーン人雇用機会の拡大
(ホ) 非石油部門の成長促進
(ヘ) 投資促進による民間部門の強化
(ト) ガス関連事業への民間投資促進
(チ) 個人預金及び国内外からの投資拡大
(リ) 発電所、マスカット下水処理システム、空港、通信事業の民営化

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.オマーンに対するODAの考え方

(1) オマーンに対するODAの意義
 オマーンは、第6番目の原油供給国であること、ホルムズ海峡の出口に位置して同海峡を経由することなく原油の輸送が可能であるとの地政学的な重要性を有することから、オマーンの不安定化が我が国に直接・間接的に大きな影響を及ぼす可能性があるため、オマーンとの良好な関係を踏まえ、技術協力を実施している。
(2) オマーンに対するODAの基本方針
 オマーンが原油に代替する収入源の確保、そのために必要な人的資源の開発を進める努力を支援するため、技術協力を実施してきている。なお、一人当たりの国民総所得(GNI:Gross National Income)が高い水準(7,830ドル、2003年、世界銀行)にあるため、オマーンは一般無償資金協力の対象ではないが、水産資源がオマーンにとって重要であることなどを踏まえ、2000年度に水産無償資金協力を実施している。
(3) 重点分野
 マングローブ植林等の環境、人的資源開発等の分野において、技術協力が実施されてきている。

3.オマーンに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のオマーンに対する技術協力は3.68億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、無償資金協力10.69億円(交換公文ベース)、技術協力127.95億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 技術協力
 オマーンの開発ニーズを踏まえ、鉱工業、環境等の分野において専門家派遣、研修員受入等の技術協力を行っている。オマーンは近年、緑化及び環境改善に資するとしてマングローブの植林に力を注いでおり、こうした努力を専門家派遣により支援してきた。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対オマーン経済協力実績

表-6 諸外国の対オマーン経済協力実績

表-7 国際機関の対オマーン経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件


プロジェクト所在図


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