2004年4月の選挙で再選されたブーテフリカ大統領は、司法、教育及び行政の3大改革の他、社会安定と経済改革を積極的に推進している。また、テロ弾圧及び治安回復にも力を入れている。テロ掃討作戦、取締強化によりテロによる犠牲者数は1999年以降低位で推移しており、特に都市部では治安の改善が見られる。対外関係では、アルジェリアは「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(NEPAD:New Partnership for Africa's Development)の創設国及び推進国を自負しており、沖縄G8サミット以来毎年G8首脳会議でのアフリカ問題に関する討議に参加するなど、積極的な外交を展開している。
アルジェリア経済の中心は、天然ガスをはじめとする炭化水素部門である。重工業・石油関連産業が中核的産業であり、石油・天然ガス関連が輸出収入の97%、国家予算の57%を占めている。国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)構造調整プログラム実施後、対外債務の減少、外貨準備高の増加、インフレの沈静化等、マクロ経済指標は堅調に推移してきている。しかし、失業率は約24%と依然として高い。対外経済関係では、欧州連合(EU:European Union)諸国との関係が緊密であり、2017年のEUとの自由貿易圏を目指す連合協定交渉が行われ、2002年4月に署名したほか、世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)への加盟手続きを進めている。
依然として住宅、水、失業等が社会問題となっている。政府は、国営企業の民営化を含めた再編整理や外国投資の呼込み等により経済再建に努めている。
(1) アルジェリアに対するODAの意義
アルジェリアは、地中海地域、アフリカ大陸及びアラブ世界において政治的な影響力を有し、国連安保理の非常任理事国(2004~2005年の2年間)を務めるなど国際社会において重要な役割を果たしていること、豊富なエネルギー資源を有していること(天然ガス生産は世界第5位、開発途上国中第1位)、1992年以来のテロの発生等による治安情勢の悪化と不安定な政情から脱して繁栄を築くには、社会経済改革及び各種インフラの整備が急務となっていること、「世界に残る最大のプラント市場」とも形容されるアルジェリアの潜在的経済力を背景として我が国との経済関係の回復が期待されていることなどから、アルジェリアとの良好な関係を踏まえ、ODAを実施している。アルジェリアに対する援助は、主にODA大綱の重点課題の一つである「持続的成長」の観点から重要性を有する。
(2) アルジェリアに対するODAの基本方針
独立後1990年代初頭まで、アルジェリアの1人当たりの国民総所得(GNI:Gross National Income)が1,890ドル(2003年)と高かったことから、技術協力を中心として、海運等の分野における技術協力プロジェクトをはじめ、運輸、災害対策、保健医療等の分野における研修員受入、専門家派遣、開発調査等の援助を実施していた。その後、アルジェリアは円借款対象国に復帰している(一般無償資金協力については卒業国)。2002年10月に治安情勢の改善を受け、安全確認及び経済協力のあり方について検討するための調査団が派遣され、その結果、2003年度から専門家の派遣を含む技術協力の再開が決定された。その後、環境、水資源等の分野の調査団が派遣され、技術協力は再活発化されつつあり、2004年12月には技術協力協定が署名された。なお、アルジェリアはアフリカからの研修員受入れに積極的であり、NEPAD推進国の一つとして、我が国の対アフリカ南南協力の実施面で重要なパートナーとなり得る。
(3) 重点分野
現在は震災復興が我が国支援の中心となっており、2004年9月には1974年の円借款以降初の震災復興に係る円借款が供与された。今後、ODAの本格的再開を踏まえて、アルジェリア側との政策協議を通じて重点分野を特定していくこととなる。
(1) 総論
2003年度のアルジェリアに対する無償資金協力は0.47億円(交換公文ベース)、技術協力は3.03億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款120.00億円、無償資金協力5.75億円(以上、交換公文ベース)、技術協力49.24億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 円借款
2003年5月にアルジェ東方ブメルデス県を震源とする大地震が発生し、多くの被害がもたらされたことから、「教育セクター震災復興計画」に対する円借款供与を行い(2004年9月、交換公文署名)、地震により被害を受けた小中高の校舎建設及び大学の実験・研究機材の整備を行った。
(3) 無償資金協力
震災復興のための緊急無償及び文化無償を実施した。
(4) 技術協力
教育等の分野における技術協力プロジェクトをはじめ、運輸・交通、教育分野における研修員の受入、専門家派遣、開発調査等の協力を実施している。テロの多発等による治安の悪化により人の派遣を伴う協力については、1994年度に一旦中断したが、治安情勢の回復を受け2003年度から専門家派遣を再開している。2004年12月には技術協力協定を締結。
治安情勢の改善を受け、所定の安全措置を図ることにより援助関係者の派遣が可能となったが、東部及び北部山岳地帯を中心に依然としてイスラム過激派によるテロ事件が発生しており、現在も国家非常事態宣言が布告されたままになっている。