[1]アフガニスタン

1.アフガニスタンの概要と開発課題

 2001年9月11日の米国同時多発テロ事件とその後の米軍主導のアフガニスタン侵攻によりタリバン政権は崩壊し、アフガニスタンの和平と復興への取組が始まった。こうした中で、国際社会は、同国が二度とテロリストの温床となることなく、秩序ある安定的な国となることの重要性を確信した。
 政治的な和平プロセスとしては、2001年12月、暫定政権の樹立と民主選挙による正当政権の樹立までのプロセスを描いた「ボン合意」が締結され、以後ボン・プロセスと言われるアフガニスタン和平定着へ向けての政治過程が開始された。また、政治プロセスの進展は復興なしにはなしえないことから、2002年1月、アフガニスタン復興支援東京会議が開催され、国際社会はアフガニスタンに対して総額45億ドル以上の支援を約束し、我が国自身も向こう2年半の間に5億ドルの支援を行う旨表明した。
 その後、2004年の10月の大統領選挙という政治プロセス履行の正念場に向けて国際社会がアフガニスタン支援の重要性を再確認するために、2004年3月末にベルリンにおいてアフガニスタンに関する国際会議が開催された。この会議は、2001年12月にボン会議を主催したドイツと、2002年1月に東京会議を主催した我が国により共同で開催され、アフガニスタンの政治プロセスの進展と復興支援とが「車の両輪」であることを全世界に強く印象づけた。この会議においては、3年間で82億ドル以上の支援の約束が得られており、我が国も向こう2年間で約4億ドルの支援を表明している。
 2004年10月には、ボン・プロセスで提示された正統政府の民主的選挙による選出のための選挙が、アフガニスタン政府の努力と国際社会の協力によって大きな混乱も無く実施され、カルザイ大統領がアフガニスタン国民の支持を受けた。しかし、アフガニスタン国内では依然として地方軍閥勢力が残存しており、軍閥 の地方支配と軍閥間の闘争が続いている。また、復興の成果が国の隅々にまで目に見える形で行き渡っていないのも現実である。さらに、タリバン政権時代に禁止されていたケシの栽培が急激に増加し、国民総生産(GNP:Gross National Product)の約半分を麻薬売買が占めるといった事態が発生している。このような状況のなか、2005年春にも予定されている、政治プロセスの締めくくりとなるアフガニスタン議会選挙の成功に向けて、アフガニスタンが真の平和と安定を享受するようにアフガニスタン政府自身の国造りへのイニシアチブに対して国際社会の取組が求められる。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.アフガニスタンに対するODAの考え方

(1) アフガニスタンに対するODAの意義
 アフガニスタンの平和と安定を実現することは、アフガニスタンのみならず、我が国が原油の9割近くを依存している中東地域の平和と安定に寄与し、世界の安全に関わる問題であり、我が国自身の安全と繁栄の確保という観点からも極めて重要である。
 このような紛争終結後の国で平和の定着と国づくりに積極的に貢献していくことは、ODA大綱の重点課題の一つである「平和の定着」の観点からも意義が大きい。
(2) アフガニスタンに対するODAの基本方針
 我が国は、2002年1月のアフガニスタン復興支援国際会議において、「地域共同体の再建」、「地雷・不発弾の除去」、「教育」、「保健・医療」、「メディア」、「インフラ」、「女性の地位向上」といった分野を中心に、向こう2年半で最大5億ドルまで、最初の1年間で最大2.5億ドルまでの支援を行うことを表明した。また、2004年4月に行われた「アフガニスタンに関する国際会議」においても今後2年間で4億ドルの支援を行うことを表明するなど、我が国はアフガニスタンの平和の定着のために、約8.1億ドルに上る支援を実施・決定してきている(2004年10月現在)。
 アフガニスタン政府と国際社会の一連の取組の結果、2004年10月にはアフガニスタンにおいて大統領選挙が実施され、カルザイ大統領が選出された。今後アフガニスタンはカルザイ新政権のもとで更なる国造りへの努力を進めていくことになるが、我が国としては、今般成立したアフガニスタン新政権が中心となって国家統一が促進され、アフガニスタンに真の平和が定着するように、引き続き和平プロセス、治安、人道・復興分野を中心に支援を実施していく。また、同国を再びテロの温床にしてはならないとの決意のもと、国際社会と一致団結してアフガニスタン支援に積極的に取り組んでいく方針である。また、紛争後の国家の再建のためには、緊急・復興の階段の継ぎ目のない支援を実施することが重要であるとの観点から、我が国は、難民及び国内避難民への雇用創出及び地域の総合開発を目的とした「緒方イニシアティブ」をUNHCH、UNICEF、WFPなどの国際機関と協力しつつ推進していく方針である。
(3) 重点分野
 我が国は、「平和の定着」構想の下、和平プロセス支援、治安支援、復興・復旧支援の3分野に重点を置いて支援を実施してきている。現在ODAタスクフォースで援助方針をとりまとめており、現在は、技術協力及び一般無償資金協力を中心に支援を実施している。
 (イ) 和平プロセス支援
 メディア支援、行政能力強化支援、選挙プロセス支援、暫定・移行政権への行政経費支援等
 (ロ) 治安支援
 武装解除、動員解除、社会復帰(DDR)、地雷対策支援、警察機材・病院への支援、麻薬対策支援
 (ハ) 復興・復旧支援
 幹線道路・二次道路の整備、保健医療分野への支援、難民・国内避難民の再定住支援(緒方イニシアティブ)、インフラ整備、教育、農業・灌漑支援等

3.アフガニスタンに対する2003年度ODA実績

(1) 概要
 2003年度のアフガニスタンに対する無償資金協力は236.69億円(交換公文ベース)、技術協力は26.45億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款は7.20億円、無償資金協力は650.38億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は69.97億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
 カブール国際空港機材整備、道路セクター・プログラム無償、カブール・カンダハル幹線道路、カブール・ヘラート間幹線道路、カブール・テレビ放送施設整備計画、カブール大学機材整備計画等に対する支援を実施した。
(3) 技術協力
 保健、教育、公衆衛生、援助調整、灌漑環境、DDR、村落開発等の分野に対し、専門家等を派遣した。また、カブール、カンダハル、マザリシャリフにおいて緊急開発調査を実施した。

4.アフガニスタンにおける援助協調の現状と我が国の関与

 2001年12月のボン会議以降、翌年のアフガニスタン復興支援国際会議(東京会議)等、一連の会議において、国際社会はアフガニスタンの健全な復興のために、議論をしてきている。主要ドナー各国は、それぞれが一つの開発分野のリードカントリー(米が国軍再建、英が麻薬対策、伊が司法分野、独が警察、そして我が国がDDR)として、アフガニスタン政府と共に開発・協力・さらに進捗状況に至り、協議を行っている。

5.留意点

(1) 援助効果向上の促進
 アフガニスタンの平和と安定、そして持続的な発展を促すことが、同地域のみならず国際社会の安定に資することはこれまで述べた通りであるが、そのためには膨大な援助需要に対応していく必要があり、限られた資金の中では、今後、更なる援助効果向上の促進が不可欠となっている。
(イ) 治安分野への貢献
 治安の安定と復興開発は、同国の平和と安定にとり両輪の働きをしており、いずれかが抜け落ちれば、同国の平和と安定は望めず、治安問題こそが援助効果向上の最大のネックとなっている。このため、治安分野への貢献は重要であり、DDRの主導国として今後とも積極的に貢献していく。
(ロ) アフガニスタン側の援助受け入れ態勢の強化
 同国政府は、いまだ援助受け入れ態勢および案件形成能力は極めて脆弱と言わざるを得ない。このため、我が国としては、各省への専門家派遣やキャパシティビルディング支援を通じて、同政府の能力向上に努めるとともに、かかる人材等を有効に活用し、同国政府との連携を深め、その開発戦略に沿った支援を行っていく。
(ハ) 各国・国連機関、非政府組織(NGO:Non Governmental Organization)との連携
 援助効果向上のためには、ドナー国、国連機関およびNGOとの連携を強化していく必要がある。また、二国間援助のスキームのみならず、国連や国際機関への拠出やNGOへの拠出を積極的に活用していく考えである。
(2) 安全対策の徹底
 9・11以降、3年が経過し同国の平和と安定に向けたプロセスは徐々に進行しているが、未だ治安状況は良好といえる段階にはない。他方、我が国は、アフガニスタンの平和の構築へ積極的貢献を決意し、同国へ多額の支援を行っており、多くの邦人援助関係者が厳しい環境の中、援助活動を行っている。我が国としては、同国への積極的な支援を行いつつも、邦人援助関係者の安全対策には細心の注意を払い、最大限の安全対策を行っている。
(3) 広報の強化
 同国のマスコミの未発達など広報を行う上での障害が多く、また、上述の治安問題等もあるが、我が国のアフガン支援のビジビリティを向上させるためにも、我が国支援の広報強化に努める。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対アフガニスタン経済協力実績

表-6 諸外国の対アフガニスタン経済協力実績

表-7 国際機関の対アフガニスタン経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件

表-11 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図



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