(1) 概要
1991年12月、ソ連の解体とともに独立国家となった。1993年10月にヘイダル・アリエフ大統領が就任し、1995年11月に行われた新憲法の採択と議会選挙以後、政治情勢は安定化した。1998年10月の大統領選挙においてもアリエフ大統領が圧倒的支持を得て再選された。2003年10月に実施された大統領選挙において、アリエフ大統領の息子であるイルハム・アリエフが大統領選に立候補し、大多数の支持を得て当選した。国会においても政権与党が議席の大多数を有しており、政治情勢は安定しているが、民主化の一層の推進が現政権にとっての課題となっている。
アゼルバイジャンの最大の懸案は、アルメニアとのナゴルノ・カラバフ紛争(アゼルバイジャン領内のナゴルノ・カラバフ自治州の住民はアルメニア人が多数を占めており、ソ連崩壊とともに、同州の帰属を巡ってアルメニアとの武力衝突が激化した)の解決である。この紛争により、約100万人のアゼルバイジャン人避難民が発生している。1994年5月に停戦合意が成立し、現在、欧州安全保障・協力機構 (OSCE:Organization for Security and Co-operation in Europe)和平仲介グループ(通称ミンスク・グループ、米国、フランス、ロシアが共同議長)を中心に和平交渉が行われている。
外交面では、伝統的にトルコとの関係が深く、また、豊富な石油資源を背景に、米国をはじめとする西側との関係を強化しつつある。一方、現政権はロシアとの関係にも一定の配慮を見せている。
アゼルバイジャンは、カスピ海沿岸にバクー油田を擁し、帝政ロシア時代から1950年代にかけて世界的にも有数な石油の産出地であったが、1960年代初め頃から油田が枯渇し始め、その経済的地位は低下した。しかしカスピ海の石油資源にはまだ相当の潜在力があり、1994年以来、国際コンソーシアム等が10以上の鉱区で開発プロジェクトを実施するなど、同国は活発に石油・天然ガス開発を進めている。また、我が国企業もコンソーシアムに参加するなど、近年同国の石油開発、石油パイプライン敷設事業に積極的に進出している。なお、アゼルバイジャンでは、現在、2003年に策定された「貧困削減・経済開発国家計画」に基づき、経済開発・社会政策が進められている。
(1) アゼルバイジャンに対するODAの意義
アゼルバイジャンはソ連崩壊後の新たな国際情勢において地政学的に重要な位置を占めており、同国の豊富な石油ガス資源の存在も我が国のエネルギー政策上重要である。また、同国の民主化、市場経済導入の動きはODA大綱の基本方針の一つである「途上国の自助努力支援」の観点からも望ましいものであるため、同国が人材不足や経済インフラの老朽化、環境悪化等の問題に効率的に対処し、経済的な困難を克服して国造りを行えるよう、我が国としても側面的な支援を行うことが重要である。
(2)アゼルバイジャンに対するODAの基本方針
我が国は、アゼルバイジャンがDACリストパートIに掲載されODA対象国となる以前の1991年から、研修員受入れや医薬品などの供与等の協力を開始している。また旧ソ連諸国に対する人道支援の一環として、1993年以降、同国に対して374万ドル相当の支援を実施している。
さらに、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)を通じた難民支援の実施に当たり、1993年以来総計266万ドルの拠出を行っている。
(3) 重点分野
2002年11月に行った政策協議を踏まえ、以下を重点分野としている。
(イ) 経済インフラ整備(特にエネルギー、運輸・通信)
(ロ) 社会セクター(特に保健・医療、教育)
(ハ) 人造り
(1) 総論
2003年度のアゼルバイジャンに対する無償資金協力は8.55億円(交換公文ベース)、技術協力は1.38億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款390.31億円、無償資金協力54.19億円(以上、交換公文ベース)、技術協力21.74億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 円借款
電力案件(「セヴェルナヤ・ガス火力複合発電所計画」)に対し、1998年(第1期)、1999年(第2期)に円借款を供与した。既存の石油火力から天然ガスを燃料とする複合発電所に転換することにより、環境負荷軽減、天然ガス有効利用並びに電力供給の増強及び安定化を図るものである。第1期事業が2002年11月に完了し、第2期事業も2003年10月に完了している。
(3) 無償資金協力
1996年度に初の無償資金協力として食糧増産援助及びノンプロ無償の協力がなされた。その後、一般無償を始め、文化無償、草の根・人間の安全保障無償資金協力を行ってきている。
2003年度は「土地改良・灌漑整備計画」を実施した。
(4) 技術協力
市場経済及び各種行政分野を中心に研修員受入れを行っている。また社会インフラ整備、市場経済分野の専門家派遣を行っている。開発調査は、社会インフラ整備、環境分野を対象に実施している。