[5]トルクメニスタン

1.トルクメニスタンの概要と開発課題

(1) 概要
 ニヤゾフ大統領は、1990年10月に初代大統領に選任され、1999年12月には大統領の任期を規定した憲法の改正を行って終身大統領となった。他方、2002年11月に同大統領暗殺未遂事件が発生、首謀者として反体制派の中心人物であった元外務大臣が逮捕された。経済改革は「漸進主義」で進められているが、議会や政府は共産勢力が占め保守的な体制が根強く残っており、統制経済的色彩が濃く、市場経済化の動きは緩慢である。
 トルクメニスタンは、「積極的中立」と呼ぶ外交方針を掲げ、1995年12月の国連総会では、「永世中立国」としての地位が認められた。他方、1999年に独立国家共同体(CIS:Commonwealth of Independent States)諸国のビザ免除協定から脱退するなど、中央アジア地域では独自路線色の強い国である。
 産業の中心は、天然ガスや石油などの燃料及び鉱物資源の生産である。天然ガスは世界第3位(トルクメニスタン政府発表)の埋蔵量を有すると言われており、同国を支える原動力となっている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.トルクメニスタンに対するODAの考え方

(1) トルクメニスタンに対するODAの意義
 トルクメニスタンはアフガニスタン、中東地域に隣接し、地政学的に重要な位置を占めており、ソ連崩壊後の新たな国際情勢において同国の政治的・経済的安定は重要である。
 加えて、2004年8月に川口外務大臣(当時)の中央アジア諸国訪問の際に「中央アジア+日本」対話が立ち上げられたが(於カザフスタン)、今後同対話を通じ、同国を含めた中央アジア諸国の地域内協力の促進が期待されている。
(2) トルクメニスタンに対するODAの基本方針
 我が国の対トルクメニスタン援助は、同国が1993年1月に開発援助委員会(DAC:Development Assistance Committee)リストパートIに掲載されODA対象国となる以前の1991年から、研修員受入れや専門家派遣などを開始し、また、NIS諸国に対する総額2億ドルの緊急人道支援の一部として、医薬品、ワクチンなどを中心に、1993年以降337万ドルの人道支援物資を供与しており、1995年10月には、ODAに関する政策協議を実施した。我が国は、ODA大綱を踏まえつつ、同国の民主化、市場経済化を促すため、人材不足や経済インフラの老朽化の問題などに効率的に対処し、経済的困難の克服に協力すべく支援を行っている。

3.トルクメニスタンに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のトルクメニスタンに対する技術協力は0.10億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款45.05億円、無償資金協力6.00億円(以上、交換公文ベース)、技術協力3.86億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 円借款
 1997年9月、初の円借款供与となる「鉄道輸送近代化計画」が実施された。
(3) 無償資金協力
 1997年5月に初の一般プロジェクト無償である「医療機材整備計画」が実施された。
(4) 技術協力
 市場経済、環境、各種行政分野の研修員受入れを中心に実施している。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対トルクメニスタン経済協力実績

表-6 諸外国の対トルクメニスタン経済協力実績

表-7 国際機関の対トルクメニスタン経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細


プロジェクト所在図


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