[6]ブータン
1. 概 説
72年に即位したジグメ・シンゲ・ワンチュク現国王は、前国王が敷いた近代化・民主化路線を継承し、国家開発計画に意欲的に取り組んでいる。国王に対する国民の信望は厚く、政情は基本的には安定している。98年6月には国王主導による国政改革が行われ、国民議会により選出された閣僚が国王に代わり内閣の運営を行うなど、民主化に向けた取り組みが進んでおり、憲法の制定に向けた作業や、地方分権に向けた取組も進行中である。
一方、80年代末より、ブータン政府が押し進める、いわゆるブータン化政策(民族衣装着用の義務化等)に反発した同国南部のネパール系住民が難民としてネパールに流入し、ブータン・ネパール間の懸案となっており、現在、両国間で問題の解決に向けた対話が行われている。また、ブータン南部地域では、インド・アッサム州においてインドからの分離独立運動を行っている過激派組織(アッサム統一解放戦線等)が、ブータン領内にキャンプを設営するなど侵入してきており、治安状況が悪化していた。ブータン政府は右過激派組織と交渉による問題の解決に努めてきたが、交渉は決裂し、2003年12月、ブータン政府は過激派組織掃討のための軍事行動を開始した。
外交面では、非同盟中立政策と善隣友好外交を基本方針としているが、インド・ブータン条約によりインドとの間に特殊な関係(インドによる対外関係への助言)を有している。
経済面では、畜産部門も含めた農業がGDPの約40%、就業人口の約80%を占め最大産業であり、小規模な地域自給型の労働集約的産業が中心となっている。対外経済は、貿易をはじめ、インドとの関係が圧倒的に高い割合を占めている。2002年7月からは第9次5カ年計画が開始されたが、貧困層の所得・生活水準の向上、地方分権、雇用創出等が主要課題となっている。
我が国との経済関係は比較的稀薄であるが、86年の外交関係樹立以来、浩宮殿下(現皇太子殿下(87年))、秋篠宮・同妃両殿下(97年)のブータン御訪問、ワンチュク国王(89年、90年)の来日といった要人往来もあり、我が国からブータンに対する開発援助の供与を背景として、両国は極めて良好な関係を有している。
2. 我が国の政府開発援助の実績とあり方
(1) ブータンに対する政府開発援助の基本的考え方
我が国は、ブータンとの友好関係を踏まえ、また同国が急峻なヒマラヤ山中にある内陸国という不利な条件の中で経済開発に努めている姿勢を評価し、伝統文化の保護、環境保護と自然資源の持続的活用等、国民が幸福感を持って暮らせる社会を最終目標とする「Gross National Happiness(GNH)」を開発の基本理念として掲げているブータンに対し、次の分野を重点として無償資金協力と技術協力を中心とする支援を行ってきている。
(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標
(イ) 基幹産業である農業分野
(ロ) 道路・通信等の社会インフラ整備
(ハ) 基礎生活分野(BHN分野)
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
2001年度のブータンに対する援助実績は14.48億円。うち、無償資金協力は9.58億円(交換公文ベース)、技術協力は4.90億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、無償資金協力は193.49億円(交換公文ベース)、技術協力67.57億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 無償資金協力
無償資金協力については、81年度より農業分野及び同国がLLDCであることを考慮し、基礎的インフラ整備を中心に協力を行ってきており、2001年度は、農業機材の供与の他、2000年度から継続している同国の安全な交通路確保のための橋梁架け替え計画及び草の根無償を実施した。
(ハ) 技術協力
技術協力については、小規模ながら、青年招聘を含む研修員受入れ、専門家派遣、青年海外協力隊派遣を中心に実施している。2001年度は、行政、社会基盤、人的資源、保健医療、農業等を重点分野として協力を実施し、また、新規にシニア海外ボランティア派遣も開始した。開発調査については、引き続き農業分野、基礎生活分野(BHN分野)を中心に協力を行う方針である。
3. 政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考)2001年度実施草の根無償資金協力案件
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