我が国は、ネパールが、南西アジアで最も所得水準の低い国でLLDCであること、内陸国としての厳しい条件の下で社会・経済開発に努めており開発ニーズが大きいこと、及び90年の民主化以降、民主主義の定着と経済の自由化等による経済開発に取り組んでいること、また近年のマオイスト問題を原因とする厳しい経済情勢等を踏まえ、積極的な協力を行っている。援助に当たっては、ネパールにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及びJICAにおける「ネパール国別援助研究会」の成果を基に、92年11月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等によるネパール側との政策対話を踏まえ、次の分野を対ネパール援助の重点分野としている。
自立的発展、効率的な資源管理・活用のためには人材育成は必要不可欠であり、プロジェクトの実施・運営、技術の移転等を通じた協力を実施していく。
(ロ) 社会分野
ネパールにおいては不衛生な水の摂取による下痢症疾患が極めて多く、高い乳幼児死亡率の原因ともなっている。我が国としては、従来より、安全な水供給、保健・医療等の協力を実施してきており、今後は家族計画の推進、特に母子保健をはじめとする基礎保健・医療の拡充に努めていく。
(ハ) 農業開発
農業はネパールの基幹産業であり、農業開発は雇用機会の創出、低所得農民の所得向上に繋がるとの点を踏まえ、農業生産基盤の整備と農産物生産技術の開発・普及等への協力を行っていく。
(ニ) 経済基盤整備
上記三分野の経済協力をより効果的にするため、特に、電力、道路、橋梁、水供給、通信等の基礎的な経済インフラの整備が重要である。また、これら施設を維持するためには、土砂崩れ防止等防災対策が不可欠であり、これを含めた維持管理についての協力も併せ進めていく。
(ホ) 環境保全
ネパールでは、人口増加、貧困等を背景として、環境劣化が進んでおり、特に森林減少は深刻な問題となっている。我が国としては、天然資源の適切な利用と環境改善のための協力を重視していく。
対ネパール援助を実施する上での留意点としては、内貨費用負担能力等ネパール側の援助吸収能力が極めて限られていることから、案件採択の際には人的・資金的負担能力について慎重に見極める必要がある。また、一方でネパール側においても援助に関する手続を迅速に進める等、実施体制の一層の強化が重要である。
また、2003年8月、政府とマオイストの停戦合意が破棄されたことにもかんがみ、援助関係者の安全確保にも留意する必要がある。
2001年度のネパールに対する援助実績は99.57億円。うち、無償資金協力は81.17億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は18.40億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は638.89億円、無償資金協力は1,494.52億円(以上、交換公文ベース)、技術協力464.39億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 有償資金協力
対ネパール有償資金協力は、75年度から開始しており、これまで、電力分野(水力発電)を中心に協力の実績がある。2001年度は、新規供与を行っていない。
(ハ) 無償資金協力
無償資金協力については、同国がLLDCであることを踏まえ、保健・医療、小学校、上水道等の基礎生活分野に加え、運輸・交通、電力等の基礎インフラ整備及び防災分野に対して協力を実施している。2001年度は、運輸・交通の基礎インフラ整備、上水道の基礎生活分野への支援を重点的に実施した。
(ニ) 技術協力
技術協力については、治安状況に留意しつつ、青年招聘を含む研修員受入れ、専門家派遣、青年海外協力隊派遣、シニア海外ボランティア派遣、技術協力プロジェクト等各種形態による協力を実施している。これまでの技術協力実績累計は、南西アジア7カ国中第1位。2001年度は、保健医療、農林畜産業、運輸交通、社会基盤、行政等を重点分野として協力を実施した。また、開発調査においては水資源開発、農業、運輸分野を中心に協力実績がある。
3. 政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施開発調査案件
(参考3)2001年度実施草の根無償資金協力案件
