2. 我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) インドに対する政府開発援助の基本的考え方
  我が国は、南西アジア地域においてインドが政治・経済上の重要国であること、我が国と伝統的に友好関係にあること、人口の約3分の1が貧困状態に置かれ、援助需要が高いこと、経済自由化に積極的に取り組み、市場指向型経済の推進を図っていること等を踏まえ、従来から、インドに対し有償資金協力を中心とする積極的な援助を行ってきた。
  ODA大綱との関連では、我が国はインドによる核開発の可能性に関する内外の懸念を踏まえ、様々な機会をとらえ、インド側の自制を働きかけてきた。
  98年5月、インドは地下核実験を実施したため、我が国はインドに対し、新規無償資金協力の停止(緊急・人道的性格の援助及び草の根無償を除く。)、新規有償資金協力の停止、国際開発金融機関による対インド融資への慎重な対応等の措置を決定した。
  2001年10月、我が国は、核実験モラトリアムの継続や、核・ミサイル関連の物質・技術の輸出管理の厳格な実施を表明するなど、インドの核不拡散上の取り組みを評価し、また、今後のテロへの取り組み及び南西アジア地域の安定化に大きな役割を果たすインドに積極的な関与が必要との立場から、上述の措置を停止することを発表した。
  今後、対インド経済協力の具体的な実施については、ODA大綱等を踏まえ、インド側の核不拡散分野におけるさらなる前向きな対応及び二国間関係を勘案しつつ、総合的に検討していくこととなる。なお、2003年度に、包括的な協力の指針となる対インド国別援助計画を策定する予定である。
  我が国がこれまでインドにおいて行ってきた経済協力は、開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及びJICAにおける「インド国別援助研究会」の成果を基に、95年3月に派遣した政府ベースの経済協力総合調査団及びその後の政策協議等によるインド側との政策対話を踏まえ、次の分野を重点分野としてきた(近年では、2002年3月に「経済協力政策対話ミッション」を派遣。)。
(イ) 経済インフラ整備
  5カ年開発計画の優先目標である電力、運輸を中心としたインフラ整備支援を進める。公共投資とともに民間企業のイニシアティブを重視するインド政府の方針を尊重し、民間のみでは対応が困難な経済インフラ整備への支援を重視する。
(ロ) 貧困対策
  インドは人口の3分の1に及ぶ巨大な貧困層を抱えており、同国の社会セクターへの直接的支援は重要である。具体的には、保健・医療(基礎保健・医療の改善とともに人材育成、安全な飲料水の供給等)、農業・農村開発(人口増に対応した食糧自給維持を図るための農業生産性向上、農業インフラ整備等)、人口・エイズ対策、中小企業支援(輸出振興及び雇用創出の促進)に対する協力を重視する。
(ハ) 環境保全
  人口増加等による環境悪化への対応を強化していく。特に公害防止対策、水質改善、水供給、植林、都市環境改善等への協力を推進する。環境分野の協力を積極的に進めていくため、93年1月に環境ミッションをインドに派遣し政策対話を行い、これまでに、公害防止、水質改善、水供給、植林に関する協力を実施し成果を上げている。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
  2001年度のインドに対する援助実績は681.08億円。うち、有償資金協力は656.59億円、無償資金協力は14.34億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は10.15億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は21,061.06億円、無償資金協力は782.75億円(以上、交換公文ベース)、技術協力199.71億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 有償資金協力
  有償資金協力は、58年に我が国初の有償資金協力をインドに供与して以来、我が国のインドに対する援助の中心となっている。近年、電力、運輸分野等、供与対象事業の多様化を図っており、貧困対策、環境案件も多く実施している。2001年度は核実験による経済措置を停止し、電力の供給を目的として、ヴィシャカパトナム市近郊に国産炭を扱う大規模火力発電所の建設を行う「シマドリ石炭火力発電所建設計画(III)(供与限度額:274.73億円)」やデリー市の都市機能の向上を目的として、地下鉄と高架・地上鉄道の建設を行う「デリー高速輸送システム建設計画(III)(供与限度額:286.59億円)」等に対する円借款を供与した。
(ハ) 無償資金協力
  無償資金協力は、近年は医療等の基礎生活分野に対する協力のほか、債務救済、食糧増産援助、文化無償、草の根無償等を行っている。2001年度は、「ポリオ撲滅計画」の他、債務救済無償、草の根無償を実施した。
(ニ) 技術協力
  技術協力は、近隣諸国へインド自らが技術協力を行うなど、インドが技術的に相当進んでいる分野もあるため、これまでの我が国技術協力の実績は多くない。青年招へいを含む多分野における研修員受入れを中心に、専門家派遣、技術協力プロジェクト等を実施している。2001年度は、保健医療、農業、行政、人的資源、運輸交通等を重点分野として協力を行った。
  開発調査については、環境保全対策として、ガンジス河の汚染対策に協力するため、各種調査を実施中である。

3. 政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施開発調査案件
(参考3)2001年度実施草の根無償資金協力案件




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