インドでは、99年10月に行われた前回の総選挙で勝利を収めた「インド人民党」を中心とする「国民民主連合」が、アタル・ビハリ・バジパイ首相の指導の下で国政の運営にあたっている。「国民民主連合」は、下院(全545議席)第一党で、180議席を有する「インド人民党」を中心に、合計16の政党が構成する連立政権である。また、「国民民主連合」所属下院議員と、これを閣外から支持する政党に属する下院議員の数を加えれば、全体で311議席に達しており、下院の過半数を優に超えている。
2003年12月、下院野党第一党のコングレス党が政権を担うラージャスタン州、マッディヤ・プラデッシュ州、チャティスガル州及びデリー準州の4州で州議会選挙が実施されたが、デリーを除いた3州でインド人民党が勝利を収めた。右4州での勝利、好調な経済成長等を背景とし、バジパイ政権は任期満了(2004年10月)を待たず、早期に総選挙を予定している。
91年以降、インドは経済改革への取り組みを本格化させ、その結果、90年代中盤に3年連続で7%を超えるGDP成長率を達成した。「国民民主連合」は、経済改革の核心部分にまで踏み込むことを「第2世代の経済改革」と表し、経済安定化、財政再建(税制改革、歳出削減)、構造調整(産業政策改革、貿易・為替政策改革、金融改革等)を中心とする改革と自由化の促進に取り組んでいる。2003年度予算案に関し、シン蔵相は、税制改革を含む経済改革を今後の経済上の最優先課題とする旨述べている。
インドの経済成長率は農業部門に左右される度合いが強く、2002年度は鉱工業生産成長率が前年を上回った一方で、モンスーン期の小雨によって農業生産が落ち込んだため、GDP実質成長率は4.3%と91年以来最低を記録した。他方、2003年度は、良好なモンスーン、企業活動の活性化等を受け、7%超の経済成長が期待される。インド経済が抱える問題点としては、歳入の不足に由来する財政赤字、世界経済の低迷による輸出の鈍化、恒常的な輸入超過が招く貿易赤字といったものが挙げられる。ただし、インドの外貨準備高は約1,000億ドルを越えて(2003年12月現在)おり、安定的に増加している。
インドは、旧ソ連の崩壊後、西側諸国との外交関係の強化にも積極的に取り組み、成果を上げてきたが、近年ではアジア諸国との外交関係強化にも強い関心を示している。特に、米国との間で、政治的、軍事的関係が急速に拡大している。また、アジア諸国との関係では、中国との関係に一層の改善が見られ、また、2002年11月には、初めてのインド・ASEAN首脳会議が開催された。インドは、今後10年以内にアセアン諸国との間で自由貿易協定を締結することを提案している。
2001年12月に発生した武装グループによるインド国会襲撃事件、2002年5月に発生した武装グループによるカシミールのインド軍駐屯地襲撃事件により、インドとパキスタンとの緊張が極めて高まったが、2002年10月以降、インドとパキスタンは両国国境付近に展開させていた軍部隊を撤退させた。2003年4月以降、両国は、大使の交換や交通の再開等を発表し、関係改善に向けた前向きな動きが見られる。